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2024年6月18日

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障害者権利条約の理念と実践 社会モデルに基づく精神障害者の人権保障

⑧精神障害者の人権(厚労省)

精神障害者の人権についての講義が行われ、全国精神障害者団体の桐原氏が担当しました。この講義の趣旨と全体の流れについて説明します。まず、一般的な人権について、その後、障害者の人権、そして障害者に焦点を当てた人権、最後に入院者訪問支援における人権という構成で進めます。

人権についての理解を深めるためには、まず憲法や障害者権利条約について知ることが重要です。人権や憲法を学ぶ人々の中には、自分の人権が脅かされていると感じている人たちが多く、必死に学び抵抗しようとしています。一方で、人権が守られている人々は、憲法や人権について学ぶ必要性を感じていないため、あまり関心を持ちません。しかし、私たちは人権が脅かされている人々に対して想像力を持ち、共に行動するために、人権について学ぶ必要があります。

20世紀には二度の世界大戦がありました。特に第二次世界大戦では、特定の人々や障害者、女性に対する迫害や大量虐殺が行われ、人権侵害が広がりました。この経験から、人権問題は国全体に関わる重要な問題であり、人権の保障が世界平和の基礎であるという考え方が広まりました。

1948年に採択された世界人権宣言は、自由権や社会権を含む基本的人権を定めました。自由権とは、国家や権力からの不当な介入を受けずに自由を享受する権利であり、社会権とは、国が保障することで平等を実現する権利です。これらの考え方は、障害者の権利にも大きな影響を与えました。

障害者権利条約は、2006年12月の国連総会で採択されました。日本は2014年にこの条約を批准し、国内法として正式に認めました。この条約の目的は、全ての障害者があらゆる人権と基本的自由を完全かつ平等に享受できるようにすることです。つまり、障害者に新たな権利を追加するのではなく、他の人々が享受できている権利を障害者にも平等に提供することを目指しています。

障害者権利条約の基本理念は社会モデルに基づいています。社会モデルとは、障害は個人の問題ではなく、社会が作り出す障壁によるものだという考え方です。したがって、社会の障壁を取り除くことで、障害者が平等に権利を享受できるようにすることが重要です。

具体的には、地域社会で精神障害者が孤立しないようにするための取り組みが必要です。精神障害者が地域に戻っても、様々なバリアに直面することがあります。例えば、賃貸物件が借りにくい、所得が少ない、家族との音信不通などです。これらのバリアを克服するためには、地域社会全体が支援する体制を整えることが求められます。

また、精神障害者が病院に長期入院することなく、地域で生活できる権利を保障するためには、適切な支援が必要です。地域で生活するための支援を受けられなければ、再び病院に戻ることになる可能性があります。地域で生活すること自体が権利であり、それを実現するための支援が重要です。

入院者訪問支援の制度化は、精神障害者の人権を守るために重要な役割を果たします。この取り組みは、長期入院者の地域移行を促進し、病院外部とのつながりを持つことで、入院患者の権利を守ることを目指しています。入院者訪問支援は、入院者の権利を擁護するための重要な制度であり、入院者が外部とつながりを持ち、適切な治療を受ける権利を保障するための手段です。

精神障害者の人権についての基本的な考え方と具体的な取り組みについて説明しました。精神障害者が地域で平等に生活できる社会を目指して、私たちは共に行動していくことが重要です。

⇒ 詳しくは厚生労働省のYoutubeチャンネルへ

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