2024年11月15日
労務・人事ニュース
電子カルテと電子処方箋の標準化進展、医療情報の共有が加速
第111回社会保障審議会医療部会 資料 資料3-3 「医療機関・薬局間の情報」の共有・標準化等について(厚労省)
この資料は、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する具体的な取り組みや、医療機関と薬局間での情報共有の標準化について詳述されています。令和6年10月に開催された第111回社会保障審議会医療部会の資料を基に、医療・介護における情報共有の重要性とその効率化のためのデジタルシステム導入が強調されています。現在の医療システムは、より質の高い医療サービスを提供しつつ、医療従事者の負担を軽減するため、データ活用によるイノベーション促進が求められています。この方向性に沿って、政府は「医療DX工程表」をもとに計画を推進しています。
特に注目されるのが、電子カルテ情報の標準化です。これにより、医療機関と薬局間での情報のやり取りがスムーズになり、患者情報の記録や共有が迅速かつ正確に行えるようになります。現在、各薬局でレセプトコンピュータや薬歴システムに対応するための標準規格である「HL7 FHIR」の導入が検討されています。また、薬局側から医療機関に提供する服薬情報やアドヒアランス(患者の服薬順守度)などについても、共有内容やその手法の検討が進められており、これらの情報共有が治療の質向上につながるとされています。
医療DXの進展には、オンライン資格確認基盤を活用した「全国医療情報プラットフォーム」の構築も含まれます。このプラットフォームにより、医療・介護・保健に関わる情報が全国規模で一元管理され、必要に応じてリアルタイムでのアクセスやデータの引き出しが可能になるとされています。これに伴い、2024年12月には従来の健康保険証の発行が停止され、「マイナ保険証」が主流となる予定です。これは、マイナ保険証を通じて患者の保険資格が即時確認できるオンラインシステムが普及することを目的としており、医療機関にとっては窓口業務の効率化が期待されています。
また、医療・介護従事者のコミュニケーション向上に向けた取り組みも進められています。これまでは患者情報がFAXや郵送で伝えられることが多く、その際のデータの打ち込み作業が医療機関側の負担となっていました。電子化が進めば、これらの作業が軽減され、よりスムーズなデータ共有が可能になります。さらに、医師や薬剤師など、複数の医療従事者が一貫して患者の情報にアクセスできるため、患者への対応が迅速かつ正確になるでしょう。特に外来がん化学療法を受ける患者や、在宅治療を行っている高齢者など、継続的な服薬指導が必要な患者にとっては、効率的な情報共有が治療効果の向上に直接つながると考えられます。
電子カルテの標準化により、薬局と医療機関間でのデータ共有がさらに円滑化することが期待されています。たとえば、薬局で調剤を行う際、患者が処方された薬剤の情報や服薬指導に関する内容を電子カルテに直接記録し、それがリアルタイムで医師にも共有されることで、患者の服薬状況がより正確に管理できるようになります。電子カルテの標準化は、今後の医療DX推進において不可欠な要素であり、医療従事者が情報を効率的に活用できる環境整備が求められています。
医療・介護情報を含む電子処方箋の普及も、このDXの一環として進められています。電子処方箋は、処方情報をデジタル形式で管理し、患者が薬局でスムーズに処方を受け取れる仕組みです。さらに、電子処方箋にはコメント機能が搭載されており、薬剤師が医師に対して患者の服薬状況についてリアルタイムでフィードバックできる機能もあります。これにより、医療機関と薬局間の双方向の情報共有が促進され、患者にとっても最適な治療が受けられる環境が整えられるでしょう。
一方で、薬局から医療機関への情報共有の方法として、現在はトレーシングレポートなどを用いる方法が一般的です。これは、患者が服用している薬剤の情報や服薬状況、薬剤師からの指導内容を記載した報告書で、医療機関へ郵送やFAXで送付されています。しかし、こうした方法では、手間や時間がかかり、情報の正確性にも限界があるため、電子化が急務とされています。電子的な情報共有システムを導入することで、医療機関と薬局が円滑にデータを共有し、患者に対する適切な処方がより確実に行えるようになると考えられています。
患者情報を一元的に管理するためのシステム整備も進行中です。医療・介護の現場では、診療情報提供書や薬学的管理指導計画など、複数の書類が必要とされ、これが医療従事者にとって業務負担となっています。しかし、電子カルテや電子処方箋の普及によって、こうした情報が一元的に管理され、医療機関や薬局が簡単にアクセスできる仕組みが整備されつつあります。これにより、患者に対するケアの質が向上し、特に副作用リスクを抱える患者や、重篤な疾患を抱える患者にとっては、早期の治療や対策が可能になります。
電子処方箋に関する議論の中で重要視されているのは、情報の受け手である医療機関や薬局の業務負担の軽減です。たとえば、処方箋の管理や、薬剤師からのフィードバックの取り込みといった一連の業務が、電子化によって大幅に簡素化されるとされています。また、医療機関の電子カルテと薬局のシステムが連携することで、調剤情報や服薬指導内容が自動的に同期され、医師や看護師もリアルタイムで情報を確認できるようになります。こうした連携は、医療機関が抱える負担の軽減だけでなく、患者に対する迅速な対応や、薬の過剰投与や重複投薬の防止といった面でも大きな効果が期待されています。
このようなデジタル化の進展により、医療現場では時間や人員コストの削減が可能となり、限られたリソースをより有効に活用できるようになるでしょう。特に地域医療や高齢者医療では、患者が複数の医療機関を利用するケースが多く、情報の一元化が求められます。電子カルテや電子処方箋による情報の標準化は、これらの課題を解決し、地域全体での医療サービスの質向上に貢献するものです。医療機関や薬局が協力して、患者の健康管理を一貫して行える体制が構築されれば、医療現場の効率化が進むとともに、患者も安心して治療を受けられる環境が整えられるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ