2024年10月30日
労務・人事ニュース
青森県特定産業別最低賃金が大幅引き上げ、鉄鋼業で時給1,045円に改定決定
青森県特定(産業別)最低賃金の改正決定に関する答申について(青森労働局)
青森労働局は、令和6年10月16日に青森県特定産業別最低賃金の改正決定に関する答申を発表しました。この答申は、青森地方最低賃金審議会が青森労働局長からの諮問を受けて各産業別の専門部会で調査・審議を行った結果、全会一致で取りまとめられたものです。この答申内容に基づいて、青森県における4つの主要産業における最低賃金額が改正される予定であり、具体的には11月15日に官報で公示され、12月21日から改正決定が発効する見込みです。
青森県で改正が予定されている産業別最低賃金には、鉄鋼業、電子部品・デバイス製造業、各種商品小売業、自動車小売業の4業種が含まれます。これらの産業は地域経済において重要な役割を果たしており、それぞれの業種に適用される最低賃金が地域経済や雇用環境に直接的な影響を与えます。特に、青森県のような地方経済においては、賃金水準の変動が労働者の生活水準だけでなく、企業の経営戦略や地域の経済成長にも密接に関わるため、最低賃金の改定は非常に注目されています。
まず、青森県鉄鋼業の最低賃金は、今回の改定により53円引き上げられ、1,045円となります。この引き上げ幅は5.34%で、約1,476人の労働者が対象となります。これに先立つ令和6年1月19日の改正では、34円(3.55%)の引き上げが行われており、今回の改定はそれをさらに上回る形となります。鉄鋼業は基幹産業であり、賃金水準の改善は労働者の生活安定に寄与するだけでなく、業界全体の競争力強化にもつながると期待されています。
次に、電子部品・デバイス・電子回路や電気機械器具、情報通信機械器具製造業においては、41円引き上げられ、最低賃金が968円に設定されました。この業種では、約7,967人の労働者が対象となっており、引き上げ率は4.42%です。前回の改正(令和6年1月19日)では39円(4.39%)の引き上げが行われており、安定的な賃金向上が続いています。製造業は地域の雇用創出において重要な役割を担っており、最低賃金の引き上げは労働者の定着率を高める効果が期待されます。
さらに、各種商品小売業の最低賃金は35円引き上げられ、956円となります。この業種には約2,124人の労働者が従事しており、引き上げ率は3.80%です。前回の改正(令和5年12月21日)では39円(4.42%)の引き上げが行われており、小売業界における賃金改善の流れが続いています。小売業はサービス業の中でも労働者数が多い業種であり、特に非正規雇用者が多いため、最低賃金の改定は労働者の生活向上に直結します。
最後に、自動車小売業の最低賃金は40円引き上げられ、963円に設定されました。約4,908人の労働者が対象となり、引き上げ率は4.33%です。前回(令和5年12月21日)の改定では4円(0.44%)という小幅な引き上げが行われていましたが、今回はより大きな引き上げ幅となっています。自動車業界は地域経済における重要な産業であり、賃金の改善が雇用の安定化や地域の消費活動の活性化に寄与することが期待されます。
青森労働局は、10月5日に改正発効した青森県全体の最低賃金(時間額953円)と併せて、特定産業別最低賃金についても改正内容の周知を徹底し、履行確保に努めていく方針を示しています。最低賃金制度は、労働者が最低限の生活水準を維持できるよう、国が定める基準です。企業がこの基準を満たさない場合、差額の支払いが求められ、違反があれば罰則も適用されます。このような制度の存在は、労働者の生活を守るだけでなく、健全な労働市場の形成にも寄与しています。
地域別最低賃金は、産業や職種に関係なく、都道府県内のすべての労働者とその使用者に適用される最低賃金です。これに対して特定(産業別)最低賃金は、特定の産業に従事する労働者を対象に、地域別最低賃金を上回る金額が設定されることが特徴です。現在、全国で224の特定最低賃金が設定されており、青森県においても4つの業種で適用されています。これらの最低賃金は、労働市場の状況や企業の経済状況を踏まえ、毎年見直されます。
今回の青森県特定産業別最低賃金の改定は、地域経済の活性化や労働者の生活水準向上に寄与することが期待されています。特に、物価上昇やエネルギーコストの増加が家計に与える影響が懸念される中、最低賃金の引き上げは労働者にとって重要な支援策となるでしょう。企業側も、このような賃金改定に対応し、労働環境の改善や生産性向上を図ることが求められます。
採用担当者にとって、賃金改定は労働者のモチベーション向上や離職率の低下につながる要素となります。競争の激しい労働市場においては、適切な賃金水準を提供することが優秀な人材の確保に欠かせません。青森県内の企業は、今回の賃金改定を契機に、労働条件の見直しや雇用管理の改善を進めることで、持続可能な経営を実現していく必要があります。
⇒ 詳しくは青森労働局のWEBサイトへ