2024年10月8日
労務・人事ニュース
食品産業の景況が10ポイント下落、2024年下半期にはマイナス予測
食品産業の上半期景況DIはプラス値が縮小 ~令和6年下半期はマイナス値に転じる見込み~ <食品産業動向調査(令和6年7月調査)>(日本公庫)
日本政策金融公庫による「食品産業動向調査(令和6年7月)」に基づくレポートでは、食品産業の景況、課題、そして今後の海外展開に向けた取り組みについて詳しく分析されています。この調査結果は、2024年上半期の食品産業の現状と、今後の見通しについての洞察を提供しており、特に企業の採用担当者や経営層にとって重要な情報が詰まっています。
2024年上半期における食品産業全体の景況DI(景況感を示す指標)は、前回調査(2023年下半期)に比べて10ポイント低下し、わずかにプラスの3.2となりました。これは食品産業全体で景況感が改善傾向にあったものの、成長が鈍化し始めていることを示しています。特に販売数量DI(売上高や出荷量の増減を示す指標)は、マイナス9.1と大幅に落ち込んでおり、2021年下半期以来のマイナス値に転じました。さらに、仕入価格DIもわずかに低下し、依然として高い水準を保ちながらも、コスト上昇が続いている状況が伺えます。加えて、2024年下半期の見通しでは、景況DIがマイナス3.6にまで低下する予測がされており、これにより食品業界の先行き不安が増しています。
業種別にみると、製造業、卸売業、小売業、飲食業のすべてで景況感は低下しており、特に卸売業では12.5ポイントもの大幅な下落が見られました。飲食業も前回から11.2ポイント低下し、2024年下半期の見通しではさらに落ち込む予測がされています。このように、全業種での不安定な状況が浮き彫りになっています。
また、設備投資DI(設備投資に対する意欲を示す指標)に関しては、2024年上半期もプラス値を維持していますが、前年よりもわずかに低下しており、過去10年間の調査結果と比較すると依然として高い水準を保っています。投資内容としては「更新」(40.2%)が最も多く、次いで「合理化」(13.2%)や「増産・出店・取扱能力の拡充」(10.7%)が挙げられています。これは、企業が老朽化した設備の更新や、業務効率化に向けた投資を重視していることを示しています。
今後の経営課題に関しては、すべての業種で「人材確保」、「人材育成」、「商品・生産物の見直しや開発」が最も多く挙げられており、特に人材に関する課題が深刻化しています。具体的には、「業務の効率化・省人化」(57.7%)や「賃金の引き上げ」(55.0%)が人材確保の対応策として挙げられており、企業は効率的な業務運営と人件費の見直しを進めながら、労働力不足に対処しています。加えて、製造業では「外国人材の活用」が重要な対応策として挙げられており、卸売業では「定年延長や再雇用制度の充実」が次に続いています。
海外展開については、輸出に取り組んでいる企業は全体の26.1%で、「今後取り組みたい」と考える企業が16.8%に達しています。これに対し、輸出以外の海外展開(現地生産や現地店舗展開)を行っている企業は4.6%と少数で、「今後取り組みたい」と考える企業も7.9%に留まっています。輸出先としては「台湾」(56.8%)、「シンガポール」(48.9%)、「北米」(47.7%)が上位を占めており、アジア地域への輸出が活発です。
一方、海外展開の課題としては、「現地の法律や商習慣情報の不足」(32.7%)や「販路の確保」(32.7%)が最も多く挙げられており、特に製造業と卸売業でこの傾向が顕著です。卸売業では「海外展開を任せられる人材の育成・確保」(40.9%)も大きな課題となっており、企業は人材育成や販路拡大に向けた戦略を強化する必要があります。
この調査結果は、企業が直面するさまざまな課題を浮き彫りにしており、特に人材確保やコスト上昇への対応が喫緊の課題となっています。加えて、海外展開においても、法規制の理解や販路拡大に向けた体制整備が求められています。これらの課題に対処するためには、経営者や採用担当者は、効率的な人材戦略とともに、積極的な設備投資や海外市場開拓に向けた長期的なビジョンが必要です。
⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ