2025年3月11日
労務・人事ニュース
飲食サービス業等の平均月給は140,437円!前年比2.2%増(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報)
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)飲食サービス業等
令和6年の毎月勤労統計調査によると、飲食サービス業等の平均月間現金給与額は140,437円であり、前年比2.2%の増加が確認されている。この増加率は全産業平均の2.8%と比べるとやや低いものの、飲食業界においては比較的安定した給与の上昇傾向が続いていることが分かる。特に、基本給の増加が見られる一方で、ボーナスの増加率が非常に高い点が特徴的である。
給与の内訳を詳しく見ると、基本給に該当する「きまって支給される給与」は129,583円で、前年比1.1%の増加が見られる。この増加率は他業界と比較すると低めであり、飲食業界が依然として低賃金の業種であることを示唆している。特に、飲食業界では非正規雇用が多く、時給制のパート・アルバイトが主な雇用形態となっているため、基本給の大幅な上昇が見られない傾向にある。
また、時間外手当を含む所定外給与は122,210円で、前年比1.1%の増加となった。このデータから、飲食業界では長時間労働が依然として課題であり、繁忙期や人手不足の影響で時間外勤務が発生しやすい状況が続いていることが分かる。特に、観光地や都市部の飲食店では、人材不足が深刻化しており、従業員一人当たりの負担が増大していることが影響していると考えられる。
一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスに該当する部分は10,854円で、前年比18.5%の増加が記録されている。この増加率は他業界と比較しても非常に高く、飲食サービス業等が従業員の待遇改善に向けた取り組みを進めていることを示している。特に、コロナ禍の影響から回復し、業績が上向いている飲食チェーンや観光地の飲食店では、ボーナスの支給を増やすことで従業員のモチベーション向上を図っているケースが増えている。
他業界と比較すると、飲食サービス業等の給与水準は最も低い水準に位置している。例えば、鉱業・採石業(411,892円)、製造業(412,916円)、不動産・物品賃貸業(420,219円)と比較すると、飲食サービス業等の140,437円は約3分の1の水準となっている。このことから、飲食業界は給与面での競争力が低く、人材確保において他業界と比べて厳しい状況が続いていることが分かる。
採用担当者にとって重要なのは、この給与水準が人材確保にどのような影響を与えるかである。飲食業界は慢性的な人手不足が続いており、特にホールスタッフやキッチンスタッフの確保が大きな課題となっている。そのため、企業は給与面での競争力を高めることに加え、福利厚生の充実や労働環境の改善を進めることが求められる。特に、労働時間の短縮や休日の確保、キャリアアップ制度の導入などが、人材確保において重要なポイントとなる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化とワークライフバランスの向上が挙げられる。飲食業は繁忙期や営業時間の長さにより、長時間労働が発生しやすい業界である。しかし、近年では政府の「働き方改革」や労働基準の厳格化により、労働時間の短縮が求められている。企業は、給与の高さだけでなく、労働時間の適正化や職場環境の改善を訴求することで、求職者にとって魅力的な職場づくりを進める必要がある。
今後の展望として、飲食サービス業等はコロナ禍からの回復を背景に成長が続くと予測される。特に、インバウンド需要の回復や外食産業の活性化が進む中で、人材需要も高まっている。一方で、賃金の上昇は緩やかであり、今後も大きく変わりはないため、企業は給与面だけでなく、働きやすい環境づくりを進めることが重要となる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ