2024年10月30日
労務・人事ニュース
飲食業の違反率が6.1%、山口県の最低賃金監督結果を発表
最低賃金の履行確保に係る監督指導結果を発表します(山口労働局)
令和6年10月1日、厚生労働省山口労働局は、最低賃金の履行確保に関する監督指導結果を発表しました。この監督指導は、山口県内の7つの労働基準監督署で実施され、主に最低賃金に近い賃金で働く労働者が多い業種を対象に行われました。その結果、469の事業場が対象となり、全体の4.5%にあたる21事業場で最低賃金法に違反が見つかりました。特に、飲食業、商業、保健衛生業での違反率が高いことが報告されています。飲食業では6.1%、商業では4.9%、保健衛生業では3.5%の違反率が確認されました。
違反が見つかった事業場の多くが、最低賃金額以上の賃金を支払わなかった理由として、「賃金を時間額に換算して比較していなかった」という理由が最も多く、全体の33.3%にのぼりました。また、「最低賃金の改定を知っていたが賃金の改定を行っていなかった」とする事業場が23.8%、最低賃金額そのものを知らなかった事業場が19.0%であることも明らかになりました。
この調査に基づき、山口労働局は最低賃金の履行確保に向けた更なる監督指導を強化する方針を示しました。特に、非正規労働者や女性の労働者が最低賃金未満で働いている割合が高く、未払い問題が浮き彫りとなっています。最低賃金未満の労働者の中では、非正規雇用者(パート、アルバイト、契約社員など)が71.1%を占め、また、女性労働者が68.9%に達していることが判明しました。このような状況を踏まえ、山口労働局は、今後も最低賃金の改定後の周知活動をさらに強化し、労働者への適切な賃金の支払いが行われるよう監督を継続する考えを示しています。
また、山口労働局では、最低賃金の履行確保を支援するための取り組みとして、各種支援策の案内を行っています。特に、「業務改善助成金」などを活用し、賃金引上げのための設備投資や生産性向上に向けた取り組みを支援するプログラムを推進しています。この助成金制度では、事業場内で最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資を行った場合、最大600万円までの助成が受けられる仕組みです。例えば、POSレジシステムの導入や顧客管理システムの整備など、業務効率を高めるための投資が支援の対象となります。
さらに、令和6年度における最低賃金の改定が行われた結果、山口県内では時間額979円に引き上げられました。この改定により、26.8%の労働者が最低賃金の引き上げの影響を受けることが見込まれています。特に、パート労働者に対しては影響率が54.4%と高くなっており、一般労働者に対しても9.6%の影響があります。これに伴い、山口労働局は賃金引上げを後押しするために、各事業場への周知を強化し、経営者団体や業種別事業者組合などを通じた広報活動を進める方針を打ち出しています。
最低賃金の違反があった場合には、是正勧告書が交付され、違反事業場に対しては是正の期限が設けられます。是正が行われない場合、再度の監督が実施され、最終的には重大または悪質な違反事案については強制捜査が行われ、検察庁に送検されることもあります。これは、最低賃金法を含む労働基準法の厳格な遵守が求められていることを示しており、違反事業場に対しては厳しい対応が取られることが示されています。
さらに、山口労働局は、最低賃金に関する広報活動として、自治体の広報誌やホームページへの情報掲載を進めるとともに、アルバイトを行う学生や金融機関、スーパーなどの店舗にポスターを掲示するなど、県内各所での周知活動を実施しています。また、最低賃金に関する正確な知識を広めるため、県内大学や業界団体への情報提供を積極的に行っていく予定です。
賃金引上げに向けた支援策としての業務改善助成金は、賃金を引き上げるだけでなく、業務の効率化や生産性向上にもつながる設備投資を促進する役割を果たしています。この制度は、特に中小企業や小規模事業者にとって重要な支援策であり、申請期限は令和6年12月27日までとなっています。助成金の申請を希望する事業者は、事業計画を立てた上で労働局に申請を行い、事業完了後に助成金が支給される仕組みです。
最低賃金の履行確保に向けた取り組みは、労働者の生活を守り、地域経済の健全な発展を支えるために不可欠な施策です。山口労働局は、引き続き最低賃金に関する監督指導を強化し、違反の是正を図りながら、県内全体での適正な労働環境の確保を目指していく考えです。企業に対しては、最低賃金の遵守だけでなく、賃金引上げによる生産性向上や業務効率化を通じた競争力の強化も求められています。
⇒ 詳しくは山口労働局のWEBサイトへ