2025年2月26日
労務・人事ニュース
中国地方 飲食業界の人手不足が深刻化!2025年の採用戦略に必要な視点とは?(令和7年1月調査 先行き)
景気ウォッチャー調査(令和7年1月調査)― 中国(先行き)―(内閣府)
令和7年1月に実施された中国地方の景気ウォッチャー調査によると、春に向けて観光やインバウンド需要が増加することへの期待が高まる一方で、物価上昇や消費者の節約志向が依然として強く、景気の先行きに対する見方は分かれている。地域の各業界の動向を詳しく見ると、業種ごとに異なる課題と展望が浮かび上がっている。
観光関連産業では、ホテル業界やテーマパークが春の行楽シーズンに向けた予約増を見込んでおり、桜のシーズンに合わせたインバウンド需要の増加が期待されている。特に中国地方では、大型イベントである瀬戸内国際芸術祭や大阪・関西万博の開催が控えており、それに伴う観光需要の高まりがホテルや飲食業界にプラスの影響を与えると見られている。加えて、中国の日本へのビザ免除再開により、春節期間中の訪日観光客の増加も期待される。タクシー業界では、万博関連の人流が広がることに期待し、新たな観光プランの提供や車両の入れ替えを進めている。
小売業界では、百貨店やスーパーが賃上げや初任給引き上げによる消費マインドの改善を期待する声がある一方で、物価上昇の影響により消費者の購買行動に慎重さが増していることも指摘されている。特に生活必需品の値上げが続く中で、低価格志向が顕著になり、メーカー品からプライベートブランド商品への移行が見られる。都市部の百貨店では引き続きインバウンド消費が堅調に推移しているが、地方ではその影響は限定的である。高級ブランド商品の需要も一部で減少しており、消費の二極化が進んでいる可能性がある。
自動車業界では、ガソリン価格の高騰により、ハイブリッド車への乗り換え相談が増加しているものの、全体的な市場の動きは依然として鈍い。年末商戦から決算セールへと続く流れの中で、一部の販売店では客足が活発になっているが、他社の車検やネット保険への切り替えが進んでいる点が懸念されている。新車市場に関しては、円安の影響や新モデルの投入不足により、大きな変化は見られないとする意見もある。
飲食業界では、来店客数の動向にばらつきがあり、春に向けてインバウンド需要が回復することへの期待があるものの、食材費の高騰が依然として経営を圧迫している。特に肉や野菜、米、卵といった主要食材の価格上昇が続く中、消費者の節約志向が強まり、外食頻度の低下が懸念されている。一般レストランの中には、ディナータイムの回復が進まず、売上が伸び悩んでいる店舗も多い。
建設業では、建築コストの上昇が依然として課題となっており、新型コロナウイルス感染症以前と比較して契約成立までの期間が長引く傾向にある。住宅販売業界では、賃上げの波及が地方に及ぶまでに時間を要すると見られ、春先までは景気の回復が期待できないとの意見も多い。一方で、政策金利の上昇による住宅ローン金利の引き上げが懸念されており、新設住宅着工戸数の減少が続く可能性が指摘されている。
製造業では、輸送用機械器具製造業においては今後の受注増が期待されるものの、一般機械器具製造業では米国市場の関税動向による影響が懸念されている。また、電気機械器具製造業では、電子機器部品の受注は引き続きあるものの、液晶関連や車載関連の製品については生産調整が進み、受注量が減少傾向にある。金属製品製造業では、ガソリン価格や交通費の上昇、電気料金の値上がりが経営を圧迫し、今後の収益確保に苦戦する可能性がある。
金融業界では、個人消費においては賃上げ効果による消費意欲の回復が期待されるが、企業側では物価上昇分を販売価格に転嫁するタイミングが難しく、景気回復の動きが鈍いと見られている。不動産業では、賃貸住宅の需要は例年通りの推移が見込まれているが、大幅な回復を見込む要素は乏しい。
雇用関連では、新年度に向けた求人数の増加が見られるものの、依然として人手不足の状況が続いている。特に中小企業では賃上げが難しい状況が続いており、給与と物価の格差が拡大しているため、景気回復の実感を持ちにくいとする意見が多い。人材派遣業界では、大企業だけでなく中小企業においても賃上げの動きが広がっており、4月以降の契約では例年以上の賃上げが見込まれる。しかし、求職者と求人のミスマッチが課題として残っており、労働市場の改善には時間を要すると見られている。
全体として、中国地方の景気は春の行楽シーズンやイベント開催を追い風に回復基調にある一方で、物価上昇や節約志向の強まりが依然として大きな課題となっている。企業の採用活動においても、賃上げの動きが進む一方で、地域による賃金格差や人手不足の問題が浮き彫りになっており、今後の雇用市場の動向に注目が集まる。
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