2024年12月30日
労務・人事ニュース
高齢者雇用99.9%の実績、70歳就業確保はわずか31.9%にとどまる現状
令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(厚労省)
令和6年12月20日、厚生労働省は全国の企業から収集した「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表しました。この報告は、雇用の安定と高齢者が70歳まで活躍できる社会の実現を目指し、各企業の取り組み状況を明らかにするものです。今回の集計は、従業員21人以上の全国237,052社を対象として実施されました。この中には、従業員300人以下の中小企業が約22万社、大企業が17,060社含まれています。
まず、65歳までの雇用確保措置について報告されたデータによれば、全体の99.9%の企業が何らかの形で対応を進めており、これは前年と変わらない水準です。具体的には、67.4%の企業が継続雇用制度を導入しており、この方式が最も多く採用されています。一方、28.7%の企業は定年年齢を引き上げ、3.9%の企業が定年制度を廃止しています。また、中小企業と比較して、大企業では継続雇用制度の導入がやや進んでいない状況が見受けられます。
一方、70歳までの就業確保措置の導入状況に関しては、全体の31.9%の企業が何らかの措置を講じています。これは前年より2.2ポイントの増加となり、特に大企業での導入率が25.5%と2.7ポイント上昇しています。この中で最も多いのは、従来の継続雇用制度を70歳まで拡大した企業で、全体の25.6%を占めています。ただし、70歳以上の就業機会を確保するための新たな施策である「業務委託契約の導入」や「社会貢献事業への従事制度の導入」は、それぞれ0.1%と非常に限られた導入率に留まっています。
さらに、企業における定年制の状況を分析すると、全体の64.4%が60歳定年制度を採用しており、これは前年より2.0ポイント減少しています。一方、65歳定年とする企業は25.2%で1.7ポイント増加、70歳以上の定年を設ける企業はわずか2.4%と0.1ポイントの増加にとどまりました。定年制を完全に廃止した企業も依然として少数派で、全体の3.9%となっています。
厚生労働省は、この報告結果を受けて、70歳までの就業確保措置の導入をさらに促進するため、未対応の企業に対する指導や助言を強化する方針を明らかにしました。同時に、都道府県労働局やハローワークを通じて、企業が円滑に対応できるような支援体制を整備していく予定です。これらの取り組みは、生涯現役社会の実現を目指す政策の一環として位置づけられており、高齢者の就業意欲を支える制度設計がますます重要視されています。
このデータからは、高齢者雇用に対する企業の意識と実施状況が年々改善している一方で、70歳以上の就業機会の確保には依然として課題が残されていることが浮き彫りになっています。特に、中小企業での対応が進んでいる一方、大企業における取り組みの遅れが相対的に目立つ点は今後の課題と言えるでしょう。
これからの社会において、高齢者が安心して働ける環境を整えることは、企業の社会的責任であると同時に、長期的な経済成長を支える鍵となります。政府や企業が一体となって、より柔軟で多様な働き方を可能にする取り組みが求められています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ