2024年8月26日
労務・人事ニュース
鹿児島県の令和6年度最低賃金、100円アップで1時間953円に改定、2024年10月から適用開始
鹿児島県最低賃金の改正決定について(答申)(鹿児島労働局)
令和6年8月9日、鹿児島労働局長から鹿児島地方最低賃金審議会に諮問されていた「鹿児島県最低賃金の改正」について、審議会は慎重な調査と審議を重ねた結果、新たな最低賃金額を時間額953円とする答申がなされました。この改定により、鹿児島県内で事業を営む全ての使用者およびその使用者に雇用される労働者に対して適用される最低賃金額が新たに定められることとなります。
この答申は、令和4年10月に発効した現行の鹿児島県最低賃金(時間額853円)から、100円引き上げられるもので、最低賃金の改定が地域の生活保護基準を下回らないようにとの方針に基づいています。具体的には、令和4年度の鹿児島県の生活保護費の額と比較した際、改定後の最低賃金がこれを下回らないことが確認されています。
審議会では、改定の背景にある物価高騰や原材料価格の上昇といった厳しい経済状況が、中小企業や小規模事業者に与える影響についても考慮されており、雇用の維持と事業継続のために、国や県、市町村による最大限の支援が必要であるとの要望が強調されました。この支援には、賃金引上げがしやすい環境整備や、生産性向上のための取り組みが含まれています。
さらに、審議会では、政府が掲げる「成長と分配の好循環」および「賃金と物価の好循環」を実現するため、中小企業や小規模事業者が賃上げを行うための原資を確保する取り組みが継続的に実施されるべきであると提言されています。これには、官公需における対応や価格転嫁対策の徹底、生産性向上のための支援の強化が求められています。
特に、業務改善助成金やキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金など、賃上げを支援するための助成金の充実が重要視されています。これらの助成金は、非正規雇用労働者の処遇改善や賃上げのために設けられており、中小企業や小規模事業者がしっかりと活用できるよう、具体的な事例を用いた周知が徹底される必要があるとしています。
また、設備投資の促進や省力化投資の補助金といった支援を強化することで、労働生産性の向上を図ることも強調されています。これにより、成長市場への進出や新製品開発、新市場の開拓、イノベーション創出、さらにはデジタル・グリーンへの取り組みが促進されることが期待されています。行政機関も、これらの施策を一層活用できるように周知と運用改善を行うことが求められています。
また、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を定着させるため、独占禁止法の執行強化や下請法の改正検討が行われるとともに、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の徹底した周知が必要とされています。さらに、BtoC事業における価格転嫁率が相対的に低いといった課題に対しても、消費者の理解を求める取り組みが重要視されています。
最後に、いわゆる「年収の壁」に関して、従業員が意識せずに働ける環境を整えるために、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用促進や被用者保険の適用拡大の見直しが求められています。特に、行政機関が民間企業に業務を委託する場合、年度途中の最低賃金額改定が業務委託先に与える影響に十分な配慮がなされるべきであるとされています。
このように、今回の最低賃金改定は、鹿児島県の労働者にとって重要な生活基盤の確保を図る一方で、地域経済や中小企業への影響を最小限に抑えつつ、賃上げを実現するための多岐にわたる施策の充実が求められています。これにより、地域全体の生産性向上と持続可能な経済成長が期待されます。
⇒ 詳しくは鹿児島労働局のWEBサイトへ