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2025年5月9日

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「稼ぐ力」を高める新指針、TOPIX500企業向けに5原則と実践ガイドを公表

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「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」、「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を策定しました(経産省)

経済産業省は2025年4月30日、日本企業の「稼ぐ力」の強化に向けた取り組みの一環として、「稼ぐ力」を強化するためのコーポレートガバナンスの新たな方向性を明示した2つの文書、「『稼ぐ力』を強化する取締役会5原則」と「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス(通称『稼ぐ力』のCGガイダンス)」を公表しました。これらは、特にTOPIX500構成企業の取締役会やCEOといった経営層に向けた実践的な指針であり、企業が中長期的な価値創造を実現し、持続的な成長戦略を遂行するための実効性あるコーポレートガバナンスのあり方を提示するものです。

背景には、日本企業のコーポレートガバナンス改革がこの10年間で一定の前進を遂げてきた一方で、その多くが形式的な「コードの遵守(コンプライ)」にとどまり、実際の経営判断や成長投資に結びついていないという課題認識があります。たとえば、社外取締役の選任や委員会設置の制度整備が進んだものの、それらが企業の競争力強化や新規事業への資源投入といった実質的な成果を上げる体制になっていないとの声も多く聞かれています。経済産業省は、こうした状況に歯止めをかけ、企業が真に「稼ぐ力」を持つ体制へと転換することを目指し、今回の新ガイドライン策定に至りました。

「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則では、第一に「価値創造ストーリーの構築」が掲げられています。これは、自社の存在意義や社会課題への貢献を明確にしたうえで、どのようなビジネスモデルを通じて将来にわたり企業価値を創出していくかを明文化し、社内外に共有することを求めるものです。第二に「経営陣による適切なリスクテイクの後押し」、第三に「中長期的な視野に立った経営の支援」、第四に「意思決定プロセスと体制の整備」、そして第五に「指名・報酬の実効性の確保」と、いずれも経営陣の戦略的な意思決定を支える取締役会の役割を強調した構成となっています。

特に、原則2のリスクテイクの支援においては、成長を牽引するための事業ポートフォリオの大胆な見直しや、社債・株式などを活用した大型投資への決断が求められており、経営陣に対する信頼と責任の明確化が不可欠です。これを後押しする仕組みとして、経営者(業務執行取締役や執行役)が責任限定契約を締結可能とする制度改正の検討も進められています。これにより、経営判断における法的リスクへの過度な恐れを軽減し、より大胆な経営行動を可能にする環境が整備されることになります。

さらに、「稼ぐ力」のCGガイダンスでは、上記5原則に基づき、企業が具体的にどのようにして自社に適したガバナンス体制を構築すべきか、その考え方と実践例を体系的に示しています。ガイダンスは、CEOや社外取締役をはじめとする取締役会メンバーが、自社の状況に応じたコーポレートガバナンスの構築に向けた議論を行うための手引きとして機能します。たとえば、報酬委員会や指名委員会の権限・構成の在り方、執行役員体制の設計、後継者計画の策定、取締役会のアジェンダや評価方法など、具体的な検討ポイントと取組事例が詳細に記されています。

ガイダンスはまた、株主とのエンゲージメントの強化も重視しており、企業が中長期的な視点に立った「価値創造ストーリー」を構築・発信し、その信頼性や将来性について投資家と積極的に対話することの重要性を説いています。これにより、企業の成長戦略に対する市場の理解と信任を得やすくなり、結果として持続可能な資本調達や株価評価にも好影響を与えると期待されています。

制度面では、経済産業省は会社法の改正も視野に入れた施策を並行して進めています。たとえば、実質株主の情報開示制度の創設、株主総会のバーチャルオンリー開催の法制化、社債権者集会のオンライン化、従業員への無償株式交付の容易化など、企業の経営効率と情報発信力を強化するための法制度改正案が検討されています。特に、海外企業のM&Aを加速させるための株式交付制度の見直しや、TOB後のキャッシュアウト手続きを迅速化するための制度設計など、成長投資を後押しする法的インフラの整備は、グローバル競争の中で日本企業が生き残るための重要な要素です。

これら一連の取組は、単なるガイドラインや制度変更にとどまらず、日本企業が形式主義から脱却し、真に戦略的で自律的なコーポレートガバナンスを実践するための大きな転換点といえるでしょう。企業の経営陣はもちろんのこと、採用担当者や人事責任者にとっても、こうした流れは無関係ではありません。なぜなら、これからの企業には、ガバナンスと成長戦略を両立させられる高度なマネジメント人材が不可欠となるからです。将来のCEO候補や取締役クラスの人材を見据えた人材育成・登用戦略が、今まさに求められているのです。

⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ

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