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2025年4月27日

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ダイバーシティ経営で新規事業の立ち上げ速度が20%短縮、経済産業省が実例と指針を公開

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企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)を公表しました(経産省)

2025年4月7日、経済産業省は、企業価値の向上と国際競争力の強化を目指す新たな経営の指針として、「企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)」を公表しました。このレポートは、令和6年11月に設置された「多様性を競争力につなげる企業経営研究会」による全4回の議論を経て取りまとめられたもので、経営者や人事・採用担当者にとって、組織の持続的成長のための重要な視座を提示する内容となっています。特に、イノベーションを継続的に生み出し、変化の激しい国際環境に対応していくためには、多様な価値観と経験をもつ人材の活用、いわゆるダイバーシティ経営の実践が不可欠であるとの強いメッセージが込められています。

ダイバーシティ経営とは、単に性別、国籍、年齢といった属性の多様性を受け入れるにとどまらず、その多様な人材の能力を最大限に引き出し、企業の成長エンジンとして活用していくという能動的な経営戦略です。従来、多様性推進は「人的資源管理」や「CSR」の文脈で語られることが多く、企業の中核戦略として位置付けられてこなかった現状がありました。しかし、グローバル競争が加速し、国内の労働人口が減少していく中にあって、同質性の高い組織は変化に対応しきれず、中長期的な視点ではむしろ経営リスクになり得るという認識が浸透しつつあります。

今回のレポートでは、企業の取締役会や経営陣が直面する「なぜ今ダイバーシティなのか」という根本的な問いに対して、データと事例を交えて分かりやすく解説しています。たとえば、ある企業では、女性管理職比率を3年間で15%から30%へと倍増させた結果、プロジェクト成功率が従来比で1.5倍に向上したという実績が紹介されています。また、多様なバックグラウンドを持つ人材が意思決定に関与することで、新規事業の立ち上げ速度が20%短縮されたという定量的な成果も示されています。こうした事例は、経営戦略と人材戦略の一体化が成果創出の鍵であることを明確に物語っています。

さらに、経営層にとっての課題感や迷いに対しても、丁寧にアプローチしています。たとえば、「多様性を進めると、組織の一体感が損なわれるのではないか」「異なる文化や価値観を持つ人材同士の協働は困難なのではないか」といった懸念に対しては、心理的安全性の確保や、対話を重視するマネジメントの在り方、評価制度の見直しによる公平性の確保など、具体的な解決策が提案されています。

また、人事部門やダイバーシティ担当者が抱える実務上の課題、たとえば「育成制度や評価体系にどのように多様性の観点を織り込むか」「採用段階からどういった基準で人材を選定すべきか」といった問いに対しても、本レポートは具体的なアクション指針を提示しています。その中には、従来型の画一的なキャリアモデルを脱し、非連続な成長経路を持つ人材をどう組織に迎え入れるかという観点や、無意識のバイアスを排除する選考プロセスの導入事例などが掲載されています。これにより、多様性を人事制度にどう落とし込むか、具体的な方向性がつかめる内容となっています。

経済産業省では、今回のレポートと併せて「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」の新旧対照表も公開し、過去の取り組みを踏まえてどのようなアップデートがなされたかを可視化しています。このガイドラインでは、「可視化」「育成」「定着」の3ステップに沿った実践プロセスが提案されており、特に評価指標の具体化が注目されています。たとえば、「管理職における女性比率30%以上」「外国籍社員の定着率90%維持」「障害者雇用率2.5%以上」など、実践的なKPIが明示されており、採用担当者にとっても人材戦略の目標設定に活用できる構成となっています。

こうした国家レベルでのダイバーシティ推進は、今後の企業経営における競争優位の構築に直結してくるでしょう。少子高齢化の進行により、日本全体の労働力人口は2040年までに約1,000万人の減少が見込まれており、企業が多様な人材を活かせるか否かが生存戦略の分水嶺となります。性別、国籍、世代、障害の有無にかかわらず、多様な視点を組織に取り込むことが、変化に強い柔軟な企業体質を築く鍵であるという視点は、今後の採用戦略においても欠かせない視野となります。

⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ

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