労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • メタノールバンカリング拠点整備が本格化、国際競争力維持へ官民連携

2025年3月29日

労務・人事ニュース

メタノールバンカリング拠点整備が本格化、国際競争力維持へ官民連携

Sponsored by 求人ボックス

「メタノールバンカリング拠点のあり方検討会とりまとめ」を公表します ~世界の港湾・海運の脱炭素化の流れに対応~(国交省)

国土交通省港湾局は、日本の港湾競争力を強化し、脱炭素社会の実現を目指すため、「メタノールバンカリング拠点のあり方検討会」を設置し、その検討結果をとりまとめて公表した。近年、世界の港湾・海運業界では脱炭素化が進み、各国が次世代燃料の供給拠点の整備を急ぐ中、日本も国際競争力を維持するために迅速な対応が求められている。特に、次世代燃料の一つであるメタノールは、その扱いやすさと既存インフラを活用できる利点から注目を集めており、日本でもバンカリング拠点の形成が必要とされている。

国際海事機関(IMO)では、2025年に温室効果ガス(GHG)排出削減に関する新たなルールが合意され、2027年に発効が見込まれている。これに伴い、世界の海運業界では、従来の重油燃料から低炭素・無炭素燃料への移行が進んでいる。EUでは、2025年1月から「FuelEU Maritime」に基づく船舶燃料のGHG排出規制が導入されることが決定しており、国際市場において脱炭素化対応が求められる状況となっている。こうした流れの中で、日本が対応を遅らせると、国際的な競争力を失う恐れがある。

日本の内航海運においても、2030年までに2013年度比で約17%、2040年までに約36%のCO2排出削減を目標とする計画が進められている。そのため、代替燃料の導入は避けられない課題となっており、メタノール燃料の活用が注目されている。メタノールは常温常圧で液体の状態を保つため、液化天然ガス(LNG)や水素、アンモニアに比べて取り扱いやすいという利点がある。ただし、港則法において危険物に分類されるため、安全対策の強化が必要となる。

メタノール燃料船の建造も進んでおり、2024年12月時点で22隻が稼働し、216隻が建造予定となっている。国際的な予測では、2050年にはメタノール燃料船が全体の4割近くを占める可能性が指摘されており、その燃料供給拠点の整備は急務となっている。世界各国ではメタノールバンカリングの実証実験が進められ、中国やシンガポールでは専用バンカリング船の運航が開始されている。日本もこの動きに迅速に対応する必要があり、官民連携による取り組みが求められている。

国土交通省港湾局は、2023年9月に「メタノールバンカリング拠点のあり方検討会」を設置し、港長許可手続きの基準や安全対策、メタノール燃料船やバンカリング船の設備要件、拠点形成の課題と対応策などを検討してきた。今回のとりまとめでは、東京湾をモデルケースとして拠点形成のシナリオを検討し、横浜港においてメタノールバンカリングシミュレーションを実施した。このシミュレーションでは、大型コンテナ船へのメタノールバンカリングが問題なく実施できることが確認され、実運用に向けた細かな課題や改善点が明らかになった。

バンカリングの安全対策については、港長許可手続きの基準が明示され、既存の内航ケミカルタンカーを活用したバンカリングについては、港長の知見に基づく許可審査が可能であり、事業者が追加で個別の安全検討を行う必要はないとされた。ただし、大型バンカリング船を活用する場合は、船型やタンク容量に応じた個別の安全検討が必要となる。また、メタノール燃料船およびバンカリング船の設備要件については、IMOの規定や危険物船舶運送及び貯蔵規則(危規則)に基づいた基準が適用される。

短期的な取り組みとしては、既存設備を活用したバンカリングの経験を蓄積し、対外発信を強化することで認知度を向上させることが挙げられている。一方で、中長期的な視点では、需要の拡大に合わせたバンカリング専用船の確保や、グリーンメタノールの供給体制の強化が重要な課題となる。現在、日本のメタノールはほぼ全量を輸入に頼っており、2022年の輸入量は174万トンに達している。今後、メタノールバンカリングの需要が拡大した場合、新たなタンクの建設や既存の製油所タンクの転用が検討されることになる。

政府のGX推進戦略では、ゼロエミッション船を含むモビリティ分野の脱炭素化を進めるため、10年で3兆円規模の官民投資が計画されている。経済産業省は、合成燃料(eメタノール)の2025年製造開始、2030年代前半までの商用化を目指し、設備投資やビジネスモデル確立に向けた実証支援を実施する予定だ。

今回のとりまとめにより、日本国内でのメタノールバンカリングの開始に向けた環境整備が完了し、官民連携による取り組みの加速が期待される。メタノール燃料の活用は、海運業界の脱炭素化を促進し、日本の港湾の国際競争力を維持するための重要な施策となる。今後は、実際のバンカリング拠点形成に向けたさらなる具体的な計画の策定と実施が求められる。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ