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2025年4月28日

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令和4年度調査 全国の無医地区が33地区減少、依然として12万人以上が医療アクセス困難な現実

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無歯科医地区等調査:令和4年度調査の概況(厚労省)

令和5年7月28日、厚生労働省が公表した「令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査」の結果から、日本各地における地域医療の現状と課題が浮き彫りとなりました。この調査は、全国の市区町村に対して無医地区および無歯科医地区の実態を調べるもので、地域医療の確保に関する政策の基礎資料として活用される重要な取り組みです。特に医師や歯科医師の不足が深刻な地域では、地域住民の生活の質や健康寿命に直結する重大な社会課題と位置付けられています。企業の採用担当者にとっても、こうした医療インフラの現状を正確に把握することは、地方勤務や転勤制度におけるリスクマネジメント、人材配置、福利厚生の整備といった観点で非常に重要な要素となるでしょう。

今回の調査によると、令和4年10月末時点で全国の無医地区数は557地区となり、前回調査(令和元年:590地区)と比較して33地区の減少が確認されました。無医地区に居住する人口も12万2,206人と、前回より4,645人減少しています。無医地区とは、医療機関が存在せず、かつ当該地域から半径4キロメートル以内に50人以上の住民が居住していても、医療機関へのアクセスが容易ではない地域を指します。つまり、定期的な通院や緊急時の医療対応が極めて困難な環境に置かれている住民が、依然として全国に12万人以上存在している現実が明らかになったのです。

一方、無歯科医地区に関しては、令和4年調査で784地区が確認され、前回の777地区から7地区増加しました。無歯科医地区に居住する人口も18万8,647人となり、1万人以上の増加が報告されています。これにより、歯科医療へのアクセスが不十分な地域の拡大傾向が見られるという懸念も示唆されています。特に岩手県では、無歯科医地区が17地区増加し、人口も3,674人増と大きな伸びを見せています。また、岐阜県では、無歯科医地区に住む人が3,579人増加し、人口規模で全国最多の伸び率(240.6%)を記録しました。こうした地域では、口腔の健康管理が難しくなり、全身の健康リスクも高まるとされており、生活や就労への影響も無視できません。

都道府県別で見ると、無医地区の減少が進む一方で、一部地域ではむしろ増加している傾向も確認されています。たとえば、熊本県では無医地区数が20地区から26地区に増加し、人口も1,364人増の5,708人に達しました。岩手県や島根県、広島県、鹿児島県なども無医地区人口が増加しており、地域偏在が深刻化していることが読み取れます。また、歯科医療についても、山口県では無歯科医地区の人口が2倍以上に増加し、令和元年の1,495人から令和4年には3,206人となっています。こうした地域医療の格差は、都市部における医療資源の過集中と、地方における医療提供体制の脆弱性の表れともいえます。

なお、今回の調査では、すべての対象市区町村から100%の回答が得られており、データの正確性と網羅性が高く評価されています。対象は、市区町村が「医療機関が無い」または「医療機関があるもののアクセス困難」と判断した地域であり、実態に即した現場の声が反映されています。このような高い回答率は、地方自治体が地域医療の課題に対して強い関心を持ち、積極的に取り組んでいる姿勢の表れでもあります。

地域医療の状況は、人材採用や定着にも大きく影響を与える要素です。たとえば、無医地区に該当する地域に勤務する社員が健康上の不安を抱えるリスクは高く、企業としても対応策を講じる必要があります。遠隔地への赴任者には定期的な健康診断の機会を確保することや、オンライン診療の導入、提携医療機関との連携といった施策が求められます。また、歯科医療アクセスが困難な地域においては、社員の口腔ケア支援として定期検診の実施補助や、通院時の交通費支援など、企業独自のサポート制度の整備が有効です。

さらに、地方創生やテレワークの普及に伴い、地方への移住希望者が増加する一方で、移住先の医療環境が選定基準に大きな影響を与えているという実態もあります。企業が地域採用やリモートワーカーを対象とした雇用施策を進める際には、候補地の医療体制を十分に調査・理解し、必要なサポート体制を整えることが求められます。医療機関の立地情報を社員に提供することや、地方勤務者向けの医療保険の充実、家族帯同の場合の医療サポート体制の確認なども重要な施策となるでしょう。

今後の展望としては、地域医療を支える人材の確保と定着が喫緊の課題です。無医地区や無歯科医地区を減少させるには、医師・歯科医師の地域定着を促す制度設計が不可欠です。すでに、奨学金制度や地域枠入学制度、地域医療に従事した場合の返還免除制度など、国や自治体が講じている施策はありますが、より実効性を持たせるためには、現地で働く医療従事者のキャリア支援や生活環境の整備が不可欠です。これに関連し、企業の採用担当者にとっては、医療職に限らず、地方勤務を伴うすべての職種で「地域定着支援」の視点を採用戦略に取り入れることが、優秀な人材を惹きつける要素となるでしょう。

このように、令和4年度の調査結果は、単なる統計にとどまらず、地域格差・医療アクセスの現状・企業の人材戦略に直結する多面的な意味を持つものです。企業としても、地域医療の実態を理解し、それに基づいた柔軟な対応をとることで、社員の安心と健康を守り、持続的な雇用環境の整備につなげることができます。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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