2025年5月10日
労務・人事ニュース
令和7年1月1日から3か月間の労災死者142人に増加、第三次産業で前年比53.8%の急増
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最終更新: 2025年5月9日 11:31
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令和7年における労働災害発生状況について(4月速報値)(厚労省)
令和7年の労働災害の発生状況について、最新の速報値が厚生労働省から公表された。対象となったのは令和7年1月1日から3月31日までの3か月間に発生し、同年4月4日までに報告のあった災害であり、新型コロナウイルス感染症に起因する災害は除外されている。この速報値は、年度初頭における労働現場の安全対策の実態を示す指標として非常に重要であり、今後の安全管理や労働環境改善に直結する資料である。
まず死亡災害の状況を見ると、全体の死亡者数は142人であり、前年同期に比べて18人の増加となった。率にして14.5%の増加であり、労働災害による死亡リスクが高止まりしている現実を浮き彫りにしている。業種別では、製造業と建設業における死亡者数はそれぞれ23人および39人で、前年同期よりもいずれも4人減少しており、それぞれ14.8%、9.3%の減少となっている。これは一定の安全対策の成果が現れていると考えられる一方で、依然として数としては多く、継続的な改善が求められる分野である。
一方、林業や陸上貨物運送業、第三次産業においては死亡災害が増加傾向にある。林業では前年同期の5人から9人へと80%の増加、陸上貨物運送業では17人から22人へと29.4%の増加、第三次産業では26人から40人へと実に53.8%もの増加が記録された。特に第三次産業における急増は、サービス業や小売業などにおける労働安全対策の見直しが急務であることを示唆している。
事故の型別に見ると、最も多かったのは墜落・転落による38人で、前年同期比で1人増加、2.7%の上昇となった。これに次いで交通事故(道路)が29人と多く、前年から12人の増加で70.6%という著しい上昇を示している。また、はさまれ・巻き込まれによる死亡も21人で、前年から1人増加しており、構造物や機械設備を扱う現場でのリスク管理の重要性が改めて問われている。
次に休業4日以上を伴う死傷者の状況を見ていくと、全体では22,158人が対象となっており、前年同期比で503人、2.3%の増加となっている。業種別に見ると、製造業では4,513人で、前年より35人減少し0.8%のマイナス、建設業では2,259人で52人の減少、2.3%の減少となった。一方、陸上貨物運送業では2,866人で26人、0.9%の増加、第三次産業では11,081人で523人、5.0%の増加が見られた。
第三次産業の中には医療・福祉、教育、飲食、小売など幅広い業種が含まれており、特に人と接する機会の多い現場では、転倒や持ち運び作業に起因する事故が依然として多い。事故の型別では、転倒による死傷者が7,455人で最も多く、前年から885人増加し、13.5%の顕著な上昇を記録している。高齢者雇用の増加や店舗内での作業環境の複雑化が背景にあるとみられ、床面の安全対策や教育訓練の再強化が必要不可欠である。
墜落・転落による死傷者は3,505人で、前年から22人の増加、0.6%の微増にとどまっているが、引き続き高所作業や足場の安全管理に対する意識を高める必要がある。また、「動作の反動・無理な動作」による死傷者は2,721人で、前年より165人減少し、5.7%の減少となった。これは作業手順や動線の見直し、作業負荷の軽減などが一定の効果を上げている可能性があるが、依然として上位に位置する事故類型であり、対策を継続することが重要である。
このような労働災害の増減傾向を踏まえたうえで、企業の安全衛生担当者が今後注視すべき点は、事故の内容に応じた個別対策と組織全体での予防体制の構築である。特に、死亡災害の増加が目立つ第三次産業では、従来の「工場中心型」の安全対策から、「多様な労働環境への対応型」へと視点を転換する必要がある。サービス業や物流業においては、非定型業務や人の移動を伴う作業が多く、従来の安全教育が現場に即していないケースも散見されるため、現場主導型のリスクアセスメントや、マイクロラーニングなどを活用した教育手法の導入が求められる。
また、陸上貨物運送業における死亡事故および死傷者数の増加は、過重労働や長時間運転、荷役作業時の事故といった複合的な要因によるものと推察される。2024年度からのトラックドライバーの時間外労働規制強化(いわゆる「2024年問題」)への対応も絡み、業界全体として安全と業務効率の両立を図る施策が喫緊の課題となっている。運送事業者にとっては、労働災害防止だけでなく、人材確保の観点からも、働きやすく安全な環境整備が競争力に直結する時代である。
製造業および建設業では、全体としての死傷者数は前年より減少したものの、いずれも依然として高水準で推移している。製造業では、設備の老朽化や自動化の進展に伴う新たなリスクへの対応が求められており、特に中小企業では、安全管理人材の不足や投資余力の差が安全水準に反映されやすい構造となっている。一方、建設業においては、高齢作業員の割合が高まっており、体力や視覚の変化に配慮した足場整備や休憩体制、さらにはデジタル機器を用いた安全監視技術の活用が注目されている。
令和7年の第1四半期の労働災害発生状況は、全体としては小幅な増加傾向にあるものの、業種や事故の型によっては急増が見られる分野もあり、油断を許さない情勢となっている。企業が人材確保と定着を目指す上で、労働安全の確保は重要な基盤であり、従業員が安心して働ける環境づくりこそが持続的な成長を支える柱となる。今回の速報値を踏まえた具体的なアクションが、各職場で今まさに問われている。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ