労務・人事ニュース

雇用情勢（令和７年２月分）について（福岡労働局）

2025年4月1日、福岡労働局が発表した令和7年2月分の雇用情勢は、改善の兆しを見せつつも、一部には求人の動きに鈍さが残るなど、依然として慎重な動向が続いていることが明らかになりました。特に物価上昇などの経済的外部要因が企業や個人の雇用行動に与える影響が無視できない状況となっており、今後の政策対応にも注目が集まっています。

まず、有効求人倍率（受理地別・季節調整値）は1.18倍となり、前月から0.01ポイント減少しました。この数値は求人側がやや減少している一方で、求職者数も微減していることを示しています。有効求人数（季節調整値）は前月比で1.2％の減少、有効求職者数も0.9％減少しており、全体として求職と求人の動きが共に落ち着きを見せつつある構図が浮かび上がります。

一方で、新規求人倍率（季節調整値）は2.51倍と、前月比で0.13ポイント上昇しており、直近での求人意欲の回復傾向がうかがえます。実際に新規求人数は前月比2.0％の増加、前年同月比でも同様に2.0％増と、2か月連続で前年を上回る結果となっています。これは、製造業や情報通信業、不動産業といった一部業種で求人が活発化していることが要因と見られます。特に製造業においては、16か月ぶりの増加が確認されており、地域経済における生産活動の回復が裏付けられました。

産業別に見ると、卸売業や小売業では7か月連続で求人増、生活関連サービス業や娯楽業では5か月連続の増加となっています。一方で、宿泊業・飲食サービス業は7か月連続の減少、医療・福祉も4か月連続で減少しており、業界間での明暗が分かれています。また、運輸業・郵便業、建設業、学術研究・専門技術サービス業などでも求人の減少が見られ、労働力需要に業界ごとの偏りが顕著となっています。

地域別に見ると、福岡県内では地域ごとに有効求人倍率のばらつきが見られました。福岡地域では1.33倍で前年同月より0.01ポイント上昇、北九州地域は1.13倍で0.08ポイント減少、筑豊地域は1.16倍で0.15ポイント減少、筑後地域では1.38倍と0.06ポイントの上昇となりました。このように、県内でも地域によって雇用の需給バランスに差があることが示されています。特に筑後地域の高い求人倍率は、地域産業の活性化や企業の採用意欲の高さを反映した結果と言えるでしょう。

正社員に限定した有効求人倍率は1.02倍で、前年同月より0.06ポイント上昇しています。この指標は正社員を希望する常用労働者に対して、正社員求人がどの程度あるかを示すものであり、求人の質的側面に注目する企業にとって重要な参考値となります。正社員志向の高まりを背景に、安定雇用を提供する企業の魅力が増していることもこのデータからうかがえます。

新規求職者数（原数値）は16,246人で、前年同月比7.9％減少しました。特に若年層（29歳以下）では16.0％の減少が見られ、その他の年齢層も軒並み減少傾向にあります。30～44歳で9.8％、45～54歳で9.1％、55歳以上で1.7％と、それぞれ前年同月を下回る結果となりました。求職活動の控えや、他の就業形態への移行など、多様化する就労意識が反映されていると考えられます。

事業所規模別に見た場合、4人以下の小規模事業所では新規求人が7.6％増加、5～29人規模では15.1％増加と、特に中小企業での採用意欲が高まっている傾向が明らかになっています。逆に、30～99人規模では6.2％減、300～499人規模でも8.3％減少と、中堅規模の事業所においては採用に慎重な動きが見られました。この点は、経済の先行き不透明感が一部企業の人員計画に影響を与えている可能性を示唆しています。

このような動向は、企業の採用戦略にとっても重要なシグナルを提供します。特に正社員求人倍率の改善、新規求人倍率の上昇、業種別・地域別のばらつきといった要素を把握することは、的確な人材確保や職場環境改善への道筋を描く上で欠かせません。求職者の動向としては、求人数に対して応募がやや鈍化している兆しがあるため、企業側が自社の魅力をいかに打ち出し、的確な情報発信を行うかがカギを握るといえます。

この状況下で注目すべきは、求職者の減少と求人の持ち直し傾向が同時に起きていることです。つまり、労働市場では「人材確保競争」が再び活発化しており、特に地方圏の中小企業においては採用活動の巧拙が企業の成長に直結する局面を迎えつつあります。

⇒ 詳しくは福岡労働局のWEBサイトへ