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2025年4月7日

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令和7年4月から高年齢雇用継続給付の支給率が最大15%から10%に引き下げ、企業の人事制度に影響

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厚生労働省関係の主な制度変更(令和7年4月)について 高年齢雇用継続給付の給付率引下げ(厚労省)

令和7年4月1日以降、高年齢者の雇用継続を支援するために設けられてきた「高年齢雇用継続給付」に関して、その支給率の見直しが実施されます。この制度は、60歳から65歳未満の雇用保険の一般被保険者を対象とし、60歳に到達した時点に比べて賃金が75%未満に低下した場合に、働き続けることを支援する目的で賃金の一部を補填する仕組みとして長年運用されてきました。今般の見直しでは、最大支給率が従来の15%から10%へと引き下げられることとなり、令和7年4月1日以降に60歳に達した人、またはその時点で被保険者期間が5年を満たした人が新たに対象となります。

高年齢雇用継続給付は、高齢期における就業継続を経済的に支えるものであり、定年後の再雇用制度と連動しながら、企業と労働者の双方にとって重要な役割を担ってきました。60歳到達時点に比べて75%未満に賃金が低下した場合にのみ給付対象となり、支給額は「賃金の低下率」に応じて段階的に決定されます。令和7年3月31日以前に60歳に達した人については現行の15%上限が適用されますが、これ以降に60歳を迎える人は、最大でも10%までの給付となるため、受給額に直接的な影響が出ることになります。

新たな支給率は、賃金低下率が64%以下の場合には一律で10%が支給され、64%超から75%未満の範囲では、賃金の低下度合いに応じて0%から10%の範囲で変動します。75%以上の賃金低下が認められない場合には、給付対象外となります。支給率の詳細は、たとえば賃金が60歳時点の70%にまで低下した場合には、支給率は4.16%となり、月額賃金と給付金を合算した金額が60歳到達時の75%を超えないよう調整される仕組みとなっています。このように、支給額は賃金水準とのバランスを保ちながら、制度全体の公平性を確保するために設計されています。

支給申請にあたっては、公共職業安定所(ハローワーク)での手続きが必要となり、企業側からの証明書類提出も求められます。対象者が60歳に達した時点で雇用保険に5年以上加入していることが条件であり、この5年間の加入歴が満たされていない場合は、満たした時点から給付の対象になります。注意すべきは、令和7年4月1日以降に60歳になる方から新たな支給率が適用される点であり、それ以前に60歳に到達した方については従来の15%を上限とした給付率が継続されるため、受給者間での給付内容に差が生じることになります。

企業にとって、この制度変更は高年齢労働者の処遇や人事制度の見直しを促す契機となり得ます。これまで高年齢者の雇用継続に向けて、賃金調整と高年齢雇用継続給付を組み合わせた再雇用制度を構築してきた企業にとっては、今回の支給率引き下げによって、実質的な賃金水準に影響が及ぶことになり、高齢社員に対する賃金再設定や、モチベーション維持のための新たな仕組みの構築が求められることになるでしょう。とりわけ、定年再雇用においては、60歳以降の雇用継続に向けた条件整備が課題とされており、今回の見直しによって制度設計の再検討が急務となる可能性があります。

さらに、高年齢者雇用の推進は、少子高齢化が進展する日本社会において、労働力人口の確保という観点からも重要な政策課題となっています。厚生労働省は企業に対して65歳までの雇用確保措置を義務化しており、今後は70歳までの就業機会確保も努力義務として求められる方向にあります。こうした状況下において、高年齢雇用継続給付の支給率引き下げは、単に財政的な観点からの制度縮小という意味合いにとどまらず、企業が自律的に高年齢者の処遇設計を行う時代への転換を象徴する施策とも受け取れます。

企業が今後取り組むべき課題としては、高年齢社員に対する再雇用制度の柔軟化、処遇の透明性確保、ジョブ型人事制度との統合などが挙げられます。特に、キャリア後期の社員に対しては、単なる継続雇用ではなく、経験やスキルを活かせる専門的・支援的ポジションの創設や、勤務日数・時間の選択肢を設けた働き方の多様化が求められるでしょう。また、高年齢者自身のスキルアップ支援や、健康管理を重視した就業支援体制の構築も重要となってきます。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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