労務・人事ニュース

令和7年5月分　速報 最近の雇用情勢（愛知労働局）

令和7年5月の愛知県における最新の雇用統計が愛知労働局より公表されました。それによると、有効求人倍率（季節調整値）は1.32倍となり、前月から0.01ポイント上昇しました。この数値は全国平均の1.24倍を上回る結果であり、愛知県は全国でも第13位の水準に位置しています。求職者1人に対して1.3件以上の求人があるという状況は、採用市場が依然として「売り手市場」にあることを示しており、企業の採用担当者にとっては厳しい競争環境が続いていると言えるでしょう。

有効求人数は197,123人、有効求職者数は149,792人で、求人数の方が明らかに多い構図です。新規求人倍率は2.35倍で、前月比0.02ポイントの上昇が確認されています。このような高水準の新規求人倍率は、企業側が新たな人材を求めて積極的に採用活動を展開している一方で、求職者がその数に見合っていないことを意味しています。特に中小企業にとっては人材の確保が年々難しくなっており、求人を出しても応募が少ない、あるいは条件に合致する人が見つからないという悩みを抱えるケースが多くなっています。

このような状況では、企業の採用活動は単なる人材確保ではなく、採用そのものが企業のブランディング活動の一環として再定義される必要があります。求職者は給与や勤務時間といった条件面だけでなく、職場の雰囲気、働きがい、企業の将来性、キャリアアップの可能性といった多面的な要素を評価軸として持っているため、企業がそれらをどうアピールできるかが重要です。また、応募から面接、内定までのスピードや対応の丁寧さも、企業選びにおいて大きな影響を与える要因となっているため、採用プロセスの見直しも求められています。

愛知県の産業構造を考慮すれば、自動車産業を中心とした製造業が依然として強い影響力を持っており、それに関連する技術職や生産職の求人が非常に多く見られます。さらに、情報通信業や医療福祉分野など、他の業種でも人手不足が深刻化しているため、多様な業界で採用活動の工夫が求められています。例えば、製造業においては、熟練技術者の確保が急務となる一方で、若年層への技術継承も大きな課題です。そのため、研修制度や資格取得支援などを整備し、未経験者でも安心して働ける環境づくりが採用成功の鍵となります。

また、求職者の中には雇用形態や働き方に対する多様なニーズを持つ人も多く、フルタイム勤務だけでなく、時短勤務やリモートワーク、副業可など柔軟な勤務条件を求める傾向が強まっています。企業がこれに対応するには、制度の整備だけでなく、それを労働市場に効果的に伝えるための広報戦略が重要です。求人票の表現一つとっても、魅力的かつ明確な内容であるかどうかが応募数を大きく左右します。

特筆すべきは、正社員有効求人倍率が前年同月比で上昇傾向にあることです。多くの企業が安定した雇用形態である正社員を求めているものの、その需要に応えるだけの求職者が不足している現実があります。この背景には、長時間労働への懸念や、ワークライフバランスの重視といった社会的な価値観の変化が影響しており、企業としては労働時間の適正化や休日制度の見直し、社内コミュニケーションの活性化といった施策を通じて、働きやすい職場づくりを進めていく必要があります。

愛知県内では、地域によっても求人状況が異なり、名古屋市を中心とした都市部では高い求人倍率が続く一方で、郊外や山間地域では求人があっても人材が集まらないという現象が生じています。このような地域間格差に対応するためには、通勤手当の充実や社宅・寮の提供、地域特有の魅力を活かした採用PRが求められます。また、地域の高校や大学との連携による若年層の採用、さらには定年退職後のシニア人材を活用した再雇用制度の活用も重要な施策として考えられます。

愛知県のような大都市圏では、企業間の採用競争も激しく、優秀な人材を獲得するためには他社との差別化が必須です。これまでのように募集広告を出すだけで応募が集まる時代ではなくなっており、企業が自らの強みを把握し、それを戦略的に伝える能力が問われています。企業の採用担当者にとっては、求人倍率という数値だけでなく、その背景にある人材の流動性や社会動向を読み解きながら、自社に最適な採用チャネルとメッセージを見極める力が必要とされています。

このように、令和7年5月の愛知県における有効求人倍率1.32倍という数値は、単なる統計指標にとどまらず、企業が人材戦略を再構築するための貴重なヒントを多く含んでいます。今後、人口減少や価値観の多様化が進む中で、企業が持続可能な成長を遂げていくためには、人材の確保と定着に向けた長期的視点の採用戦略が必要不可欠であると言えるでしょう。

⇒ 詳しくは愛知労働局のWEBサイトへ