労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 全国1125件の公共交通計画がアップデートへ、KPI活用で地域交通の可視化が加速

2025年4月18日

労務・人事ニュース

全国1125件の公共交通計画がアップデートへ、KPI活用で地域交通の可視化が加速

Sponsored by 求人ボックス

「交通空白」解消に向けた地域公共交通計画等のアップデートを後押し ~地域公共交通計画の「アップデートガイダンスVer1.0」を公表~(国交省)

令和7年3月31日、国土交通省は「交通空白」の解消を目的とし、地方自治体が地域公共交通計画をより実効性あるものへと見直すための手引きとして「アップデートガイダンスVer1.0」を新たに公表しました。このガイダンスは、令和6年7月に設置された「交通空白」解消本部の取り組みの一環であり、地域における移動手段の確保を目指して、自治体の担当職員や関係機関が計画の立案・改訂を進めるうえで、モビリティデータの活用を中心とした体系的なアプローチを支援することを目的としています。

日本各地における公共交通の現状は、都市部と地方部で大きな格差が存在しています。とりわけ人口減少と高齢化が進む地方においては、交通手段の縮小や撤退により移動困難な「交通空白」地域が増加しており、住民の生活や地域経済に大きな影響を与えています。そうした課題を背景に、国は地域ごとの交通ニーズを的確に捉えた柔軟かつ実効性のある公共交通計画の策定を促しており、その中でアップデートガイダンスVer1.0が果たす役割は極めて重要です。

このガイダンスは主に三つの構成から成り立っています。一つ目は「概要版」で、現状診断やKPI(重要業績評価指標)の設定手法に関する抜粋が掲載されています。二つ目は「手順書」で、地域公共交通計画をアップデートするための一連の流れや、計画の構成要素、PDCAサイクルに基づいた見直しの仕組みなどを詳細に解説しています。そして三つ目は「データ活用の手引き」で、モビリティデータの取得方法や算出手法、GIS等を用いた可視化技術など、データを戦略的に活用するための具体的なノウハウが紹介されています。

実際の現場では、自治体によって交通計画に関するノウハウやデータの保有状況に大きな差があることが指摘されてきました。たとえば、広島県内の自治体を対象とした調査では、路線ごとに正確なバス利用者数を把握していない自治体が多く存在し、また、地域交通の計画においても基本理念や戦略、施策などが明確に定義されていないケースも散見されました。こうした状況に対して、国はデータに基づいた現状分析と改善策の立案を標準化することで、すべての自治体が共通の土俵で課題に取り組める環境を整備しようとしています。

また、「アップデートガイダンスVer1.0」では、施策の進捗やその効果を客観的に把握するためのKPI設定にも重点を置いています。これには、公共交通の利用者数や行政の財政負担額、住民の満足度、免許返納者の数、観光客の誘致効果、地域の賑わい創出といった多様な指標が含まれ、それぞれの指標について算出方法や目標値の設定方法が示されています。これにより、交通施策が地域にもたらす多面的な価値を「見える化」し、関係者間での共有と合意形成を容易にすることが期待されます。

計画の立案や見直しにおいては、多様な分野との連携が不可欠です。しかし、実態としては商業、医療、教育、観光といった関係者の参画が不十分であるとの指摘もあります。ガイダンスでは、こうした関係者を巻き込みながら、地域全体で交通のあり方を議論し、持続可能な仕組みを構築していくための方策も提案されています。さらに、ガイダンスの実施を補完する形で、令和7年6月には地域公共交通研修が開催される予定で、計画を実務として担う人材の育成にも力を入れています。

また、計画の実効性を担保するためには、計画の評価と見直しが定期的に行われることが不可欠です。しかしながら、令和4年時点の調査によれば、年に1回以上評価を実施している自治体は多く存在する一方で、その評価が計画の見直しや施策改善に十分に活かされていない例も見られます。今後は、PDCAサイクルを適切に運用することが求められており、ガイダンスではそのフレームワークについても丁寧に説明されています。

こうした一連の取り組みは、今後の地域交通のあり方を大きく左右するものであり、特に人口10万人未満の過疎地域においては、モビリティの確保が地域の存続にも直結します。現在までに全国で1,125件の地域公共交通計画が策定されており、令和7年度中にはこれらの計画が次のフェーズへとアップデートされていく予定です。計画の構成内容も年々充実しており、基本理念から戦略、施策、役割分担、KPI、マネジメント体制まで網羅する構成が主流となりつつあります。

今後は、「MOBILITY UPDATE PORTAL」と呼ばれる支援ポータルサイトが公開予定となっており、計画作成に必要なコンテンツや他自治体の事例、データの活用法などが掲載されることで、さらなる業務効率化と実行力の向上が期待されます。5月には一部コンテンツが先行公開される予定であり、自治体職員のスキル向上と実務支援がより一層進むことになるでしょう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ