2025年4月13日
労務・人事ニュース
全国851の居住支援法人が連携強化へ、住宅支援と雇用戦略を結ぶ地域共生の可能性
- 看護師/2025年5月1日更新
最終更新: 2025年5月1日 11:34
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住宅確保要配慮者への居住支援に関する調査 -住宅施策と福祉施策の連携を中心として-<結果に基づく通知>(総務省)
令和6年3月に国土交通省と厚生労働省が発表した「住宅確保要配慮者への居住支援に関する調査結果(概要)」は、住宅と福祉の連携を軸に据えた新たな社会的課題への対応策を示しており、地方自治体や福祉機関のみならず、企業の人材戦略にも少なからず影響を与える重要な内容となっています。この調査は、令和6年に改正された住宅セーフティネット法の施行を前に、市区町村における居住支援体制の実態や課題を把握するために実施されたもので、特に住宅部局と福祉部局の連携状況、居住支援協議会の設立状況、居住支援法人の情報共有体制など、多角的な視点から現状の課題が明らかにされています。
今回の調査において対象となった48の市区町村のうち、居住支援協議会を既に設立している市はわずか9市にとどまり、設立を検討中の市が7市、勉強会等を実施している市が2市、いずれの取り組みも行っていない市が30市と、過半数の市区町村が体制整備に消極的または準備段階にあることが判明しました。住宅セーフティネット法の改正により、協議会の設立は努力義務化されたにもかかわらず、現場ではその設立手順や必要性について十分に理解が進んでいないことが示唆されており、国からの更なる支援と情報提供が求められています。
住宅部局と福祉部局の間の連携不足についても深刻な課題が浮き彫りとなっています。調査によると、住宅部局が「公営住宅で対応可能」とする一方で、福祉部局は「公営住宅に加え、民間賃貸住宅の確保も必要」とするなど、両部局の間で支援対象に対する認識に差異が見られる事例が複数確認されました。さらに、公営住宅の空き住戸を福祉目的で活用しようとした際に、住宅部局が「目的外使用」として使用を拒否したケースや、認知機能の低下が疑われる単身高齢者に対して住宅部局が迅速に福祉部局へ繋げなかった事例など、制度の谷間で支援が遅れる事態も発生しています。
こうした現状に対応するため、国土交通省と厚生労働省は、住宅と福祉の連携を強化するためのガイドラインや具体的な情報共有の方法について整理を進めており、両部局が共有可能な情報の具体例を市区町村に提示すること、またそれらの情報を活用して実施が期待される取組例や留意点を明示することが今後の対応策として提案されています。この流れは、地方自治体における業務効率の向上だけでなく、企業が地域貢献や雇用政策に取り組む際のパートナーシップのあり方にも大きく影響を与えるものとなるでしょう。
また、居住支援法人に関する情報の共有不足も課題として浮上しています。現在、全国で851法人が居住支援法人として都道府県の指定を受けていますが、調査対象の45法人のうち9法人は、市区町村との関係構築に苦慮していると回答しており、情報の非共有や理解不足が障壁となっていることが分かります。一方で、35法人は、都道府県が指定時に受け取った情報を市区町村へ提供することに肯定的であり、18市のうち11市が業務内容や活動実績の情報提供を希望しているという結果も明らかとなりました。
このような情報の可視化と共有は、福祉分野に限らず、企業が地域で展開する各種事業、特に高齢者や障がい者の雇用促進策、福利厚生施策などにおいても有益な示唆を与えます。例えば、居住支援法人の得意分野や活動実績を把握することで、企業と地域支援機関との協働体制を構築しやすくなり、結果として職場の多様性確保や地域共生社会の実現に貢献することが可能になります。
さらに今回の調査結果では、「協議会の設立に係る負担を過大に捉えている」「法令で求められる以上の構成員の参画が必要であると誤認している」といった誤解が市区町村側に存在していることも指摘されています。こうした誤解が居住支援体制整備の遅れにつながっている現状を受け、国土交通省では調査結果を反映した「居住支援協議会設立・運営の手引き」を令和7年3月19日に改訂し、設立手順や都道府県と市区町村の役割分担を明記しました。今後はこの手引きの活用を通じて、地域全体でのスムーズな連携体制の構築が期待されます。
このように、住宅支援と福祉支援の連携強化は、単に行政サービスの改善にとどまらず、地域に根差した企業活動や人材確保戦略にも密接に関わってきます。特に、就職後の生活安定を重視する若年層や、住宅確保に不安を抱える人々の雇用促進に向けた取り組みとして、居住支援と雇用支援の連動を図ることは、人材獲得競争において企業の強みとなり得る分野です。
今後、地方自治体と企業、福祉法人や居住支援法人が情報を共有し、連携体制を強化することは、採用活動における社会的信頼性の確保、職場定着率の向上、さらには地域貢献型CSRの実現といった面でも大きな効果を発揮すると期待されています。調査結果はあくまで現状を示すものですが、企業にとってはこの「現状」をいかにチャンスに変えるかが問われる局面となるでしょう。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ