2025年4月10日
労務・人事ニュース
全産業売上1,930兆円を突破 経済構造実態調査で判明した成長産業の実態(2024年経済構造実態調査 一次集計結果)
- 「高給与」/正看護師/訪問看護/車で通えます
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 「高給与」/准看護師・正看護師/クリニック/夜勤なし
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 介護職員/実務者研修/特別養護老人ホーム/日勤のみ
最終更新: 2025年5月1日 03:01
- 初任者研修/介護職員・ヘルパー/有料老人ホーム/日勤・夜勤
最終更新: 2025年4月30日 23:35
「2024年経済構造実態調査」一次集計結果 産業横断調査(企業等に関する集計)(総務省)
2023年における日本経済の構造を浮き彫りにした「2024年経済構造実態調査」の一次集計結果が、2025年3月26日に総務省と経済産業省から公表されました。この調査は、全産業を対象として付加価値の構造を明らかにし、国民経済計算の精度向上を目的としたもので、毎年実施されています。今回発表されたデータは、2023年の1年間における法人企業の売上高を中心にまとめられています。
全産業における2023年の売上高は、1,930兆6,951億円に達し、前年の1,812兆9,543億円から6.5%の増加となりました。この大幅な伸びは、コロナ禍を経た社会経済活動の正常化に加え、産業界全体における再投資や消費の回復傾向を示すものであり、日本経済の底堅さを裏付ける結果といえるでしょう。とりわけ企業活動が活発化している産業については、採用ニーズの高まりが見込まれるため、企業の人事戦略にも大きく影響する情報です。
業種別に見ると、「卸売業・小売業」が売上高520兆2,855億円で全体の26.9%を占め、最も大きな割合を示しました。次いで「製造業」が463兆3,844億円(24.0%)、「医療・福祉」が184兆9,115億円(9.6%)と続いています。これら3つの産業で全体の6割近くを占めており、これらの分野における経済活動のスケールの大きさが改めて浮き彫りになりました。
また、注目すべきは成長率の高い分野です。なかでも「医療・福祉」分野は、前年比34.7%という著しい伸びを記録しました。これは社会保障関連支出の増加や、介護・福祉サービスへのニーズ拡大が影響していると見られ、今後の少子高齢化社会に対応する人材ニーズが一層高まることを示唆しています。この業界では、専門資格を有する人材の確保が不可欠であり、採用担当者にとっては早期からの人材育成や育成型採用が求められる分野といえるでしょう。
「金融業・保険業」も前年比19.4%の成長を見せ、売上高は165兆3,803億円に到達しました。金利変動や資産運用の多様化などにより金融商品の取引が活性化したことが要因とされ、金融ITやフィンテック分野における人材需要の高まりが今後も継続することが予想されます。IT系スキルを持つ人材やリスク管理に長けた人材など、従来の金融機関にはいなかった新しいタイプの人材像が求められる傾向にあります。
さらに、「宿泊業・飲食サービス業」も大きく回復し、前年比15.2%増の24兆8,746億円を記録しました。訪日観光客の戻りや国内観光の回復が大きく寄与しており、人手不足が深刻化している分野の一つです。特に地方圏では、外国語対応ができるスタッフや、マネジメント経験を有する中堅人材の需要が増しており、業界未経験者の教育研修制度も今後一層重視されることとなるでしょう。
一方で、売上高が減少した産業も存在します。「電気・ガス・熱供給・水道業」は前年比12.5%減の49兆9,212億円と大きく落ち込みました。エネルギー価格の安定化に伴う収益の圧縮や、再生可能エネルギー投資に伴う初期費用の増加が影響していると考えられます。ここではコスト削減やデジタル技術を活用したオペレーション効率化が今後の課題となり、再編・構造転換の波に伴う人材の流動化も予想されます。
また、「鉱業、採石業、砂利採取業」や「複合サービス事業」でも売上が減少傾向にあり、産業構造の変化によって中長期的な縮小が進行している可能性があります。これらの産業から他分野への人材転換が進む可能性があり、転職市場の動向にも注目が必要です。
「情報通信業」は前年比7.6%増の85兆6,434億円となり、ICT分野の安定した成長が見られました。AI、IoT、クラウド、データセンター関連業務の拡充により、新技術に対応できるエンジニアやデータ分析人材の採用が急務とされています。情報通信分野では即戦力だけでなく、ポテンシャル採用に力を入れる企業も増えており、育成型人事制度やジョブ型雇用への移行が進む背景も見逃せません。
さらに、「生活関連サービス業・娯楽業」も前年比8.6%の成長で、35兆3,430億円の売上高を記録しました。この分野には、美容、理容、フィットネス、エンタメ、レジャー産業が含まれており、生活スタイルの多様化に応じたサービスの充実が反映されています。個人消費の戻りが追い風となり、販売接客スキルだけでなく、商品企画やマーケティングスキルを有する人材が重宝される傾向にあります。
このように、各産業の成長率や売上規模は、企業の事業戦略だけでなく、採用方針にも大きな影響を与えます。売上高が増加している産業では、当然ながら人材需要が増加するため、優秀な人材の確保をめぐる競争が激化することは避けられません。一方で、成長が鈍化したり、縮小傾向にある産業では、人材の流出が起きやすくなり、これまでにない雇用構造の再編成が進むと考えられます。
採用担当者にとって、こうした産業構造の変化は、単なる統計情報にとどまらず、今後の人材配置や教育、待遇改善策を講じるための極めて重要な指標です。今回の調査結果は、売上という定量的な裏付けにより、日本経済における分野別の成長ポテンシャルを客観的に把握できる貴重な資料であり、企業の持続的な成長のために必須の情報といえます。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ