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2025年5月16日

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医療費総額が令和6年度12月に3兆9,404億円、前年比3.5%増の負担が企業に与える影響とは

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最近の医療費の動向-MEDIAS- 令和6年度12月 最近の医療費の動向[医療保険医療費](厚労省)

2024年12月における日本の医療保険制度に基づく医療費の動向は、企業の採用戦略や福利厚生政策の見直しを迫る重要な情報源となり得ます。厚生労働省が発表した「MEDIAS(Medical Information Analysis System)」によると、この月の医療費総額は3兆9,404億円に達し、前年同月比で3.5%の増加を記録しました。これは2024年度の累計においても顕著であり、4月から12月までの累計医療費は33兆8,662億円となり、前年同期比では1.6%増となっています。こうした医療費の増加は、少子高齢化や医療技術の高度化といった構造的要因が背景にあると考えられており、企業にとっては医療保険料負担の将来的な増加を見越した人事制度設計が必要です。

特に注目すべきは医科入院分野での医療費の増加です。2024年12月の医科入院にかかる医療費は1兆5,149億円で、前年同月から5.6%の増加となっており、この傾向は直近3か月でも一貫しています。10月は4.8%、11月は4.9%、そして12月にはさらに増加率が上昇しました。このような入院費用の伸びは、入院件数の増加および1件あたりの医療費の上昇の両方が影響しています。12月の入院1人当たり医療費は1万2,371円で、前年同月比で6.2%の増加という結果が出ており、企業が医療費補助や健康診断制度にかけるコストにも波及してくることが予想されます。

また、入院1日あたりの医療費も着実に増加しており、2024年12月には4万4,732円となり、前年同月比で4.4%増加しました。これは、入院に伴う医療サービスの単価そのものが上昇していることを意味し、慢性疾患管理や高額治療の比率が高まっている実情を反映しているといえるでしょう。一方で、1件あたりの平均在院日数は横ばい、あるいは若干の減少傾向が続いており、2024年12月は全体平均で14.7日と前年よりも0.1日短縮されました。つまり、医療機関側では入院期間の短縮による効率化が進められているものの、それを上回る形で単価上昇が医療費全体の増加を牽引している構造が浮かび上がります。

このような医療費動向は、企業の人材戦略にも直接的な影響を与える可能性があります。たとえば、医療費の高騰は企業が負担する健康保険料率の上昇を招き、従業員の手取り額の減少につながる場合があります。また、社員の健康リスクが高まれば、病欠や労災による生産性の低下も懸念されるため、採用活動においては「健康経営」の観点を重視したアピールが求められるようになるでしょう。すでに多くの企業が健康診断の範囲を拡大したり、ストレスチェック制度を積極的に導入するなど、予防的な取り組みに力を入れ始めていますが、今後はより精緻なデータに基づく施策が必要とされます。

さらに、年齢別や制度別のデータに目を向けると、高齢者医療にかかる費用が依然として大きな比率を占めています。75歳以上の後期高齢者にかかる医療費は、2024年12月単月で1兆6,702億円に達しており、医療費全体の42.4%を占める規模となっています。65歳から74歳の層も含めると、その比率はさらに拡大し、労働人口における高齢者の比重が増す中で、企業もこうした年齢層の健康維持支援に積極的に取り組む必要があります。定年延長やシニア人材の活用が進むなか、高齢従業員に対する医療支援や健康管理制度の整備が求められます。

一方で、被用者保険(企業に勤務する従業員とその家族を対象とする保険制度)の医療費も増加傾向にあります。2024年12月の被用者本人に係る医療費は6,501億円で、前年同月比で5.0%の増加でした。これに加え、被扶養者(主に配偶者や子ども)にかかる医療費も4,406億円と、7.5%の上昇となっており、企業が負担する保険料の原資となる医療費全体の増加が進んでいます。このように、単に従業員の医療費だけでなく、家族を含めたトータルコストとしての視点を持つことが、今後の人事制度運用には不可欠となっていきます。

このような実態を踏まえると、企業の採用担当者にとっては、医療費に関する知識は「制度を知る」以上の意味を持ちます。たとえば、福利厚生制度において「実費補助」ではなく「定額補助」への転換を検討したり、選択制の医療保険プランを導入することによって、従業員一人ひとりの健康ニーズに応じた柔軟な対応が可能となるでしょう。また、企業独自の健康管理プログラムを設けることで、医療費抑制と従業員満足度の両立が期待できます。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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