2025年4月13日
労務・人事ニュース
台風で93万戸が停電した過去事例を教訓に、全国23自治体の実態調査から学ぶ停電対策の今
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最終更新: 2025年5月1日 09:34
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最終更新: 2025年5月1日 11:34
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倒木による停電予防のための樹木の事前伐採に関する調査<結果に基づく通知>(総務省)
2024年3月に取りまとめられた「倒木による停電予防のための樹木の事前伐採に関する調査結果(概要)」は、台風や豪雪などの自然災害によって生じる電力供給の寸断を未然に防ぐための取組として、今後ますます注目されるであろう分野に関する実態を明らかにした重要な報告です。停電は企業活動や地域社会の機能に甚大な影響を及ぼすだけでなく、雇用の継続性や従業員の安全確保という観点からも極めて深刻なリスクであり、本報告は企業の人材マネジメントにも波及効果をもたらす内容を含んでいます。
調査対象となったのは全国23の市町村、9つの府県、そして4つの電力事業者であり、そこから得られた結果から浮かび上がったのは、事前伐採の必要性に対する理解と実施体制が地域によって大きく異なっている現状です。事前伐採とは、荒天時に送配電線に倒れかかる恐れのある樹木を災害発生前に伐採することで、送電の途絶を防ぐという予防的措置であり、電気事業法令に基づく伐採とは異なり、あくまで自主的な連携と判断に基づく実施が求められる分野です。そのため、自治体と電力事業者の間での情報共有と合意形成が前提条件となっており、スムーズな意思決定がなされなければ対策が先送りされるという課題が顕在化しています。
実際の事例では、府県が市町村と事業者との情報共有の場を設けたことにより、事前伐採の実施につながったケースも確認されました。一方で、情報提供が不十分であったために市町村側で検討が進まなかった例もあり、事前伐採の必要性の検討を促すためには、倒木による想定停電戸数や影響施設の情報など、具体的な数値データを伴う情報の開示が不可欠であると指摘されています。こうした具体的なリスク評価が可能になれば、市町村が財政当局や議会に対して事前伐採の必要性を説明する際の根拠にもなり、予算措置や人員配置の検討がしやすくなるとの意見も寄せられました。
また、事前伐採に関する事務分担および費用負担のあり方についても、自治体による負担が過重になっている実態が浮き彫りになりました。調査では、多くの市町村が伐採箇所の選定以外の業務の大部分や費用の全額を負担していることが確認されましたが、一部の事業者が費用を折半したり、所有者の特定に必要な情報を提供したりするなど、主体的に関与している事例も存在しました。事前伐採は、送電線の保全によって事業者にも直接的な利益があるにもかかわらず、「地方公共団体が主導すべき取り組みである」との誤解が一部事業者に残っており、今後はその意識改革と負担の公平性を前提とした仕組みの構築が求められます。
法的には、現在この事前伐採に関する明確な規定は存在せず、自治体と事業者の個別協議によって業務と費用の役割分担が決定されています。現行の「災害時連携計画」には、地方自治体が主導して計画伐採を進める旨が記載されており、これが事業者側の受動的な姿勢の一因となっているとの分析もなされています。今後はこの記載内容自体の見直しも検討されるべきであり、事業者が災害時の対応能力を高めるために、平時から予防策に積極的に関与する姿勢が求められます。
具体的な取り組みとしては、三重県大台町において実施された事前伐採の事例が紹介されています。ここでは、風雪による倒木で停電の危険が高い区域を特定し、伐採対象の樹木について事前に所有者と交渉を行い、必要な届け出や施工までを一貫して行いました。伐採木はまきとして地域住民に配布され、伐採跡地は人工造林として管理されるなど、単なる停電予防にとどまらず、地域資源としての再利用や環境保全にも配慮された取り組みがなされていました。
こうした実例は、他の自治体が同様の施策に取り組む際の参考となり、企業にとっても災害リスクに強い地域との連携や防災・減災の社会貢献活動として注目すべきポイントとなります。とりわけ、自然災害が事業継続計画(BCP)に与える影響は計り知れず、停電が長期化することによる業務停止や従業員の安全確保への対応が問われる中で、事前伐採によるリスク軽減は、結果として安定した雇用継続にも寄与するものと考えられます。
今後、経済産業省をはじめとする関係省庁では、全国の地方公共団体および事業者に対し、事前伐採の有効性と負担の分担に関する事例を収集・整理し、広く周知する方針を掲げています。すでに倒木による停電被害を経験した地域のみならず、将来的に同様のリスクを抱える全国のあらゆる地域において、予防的措置の必要性が共有され、制度的に定着していくことが強く期待されます。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ