2025年4月9日
労務・人事ニュース
外為令の改正でセラミック技術も対象に、先端素材企業に求められる対策
- 看護師/2025年5月1日更新
最終更新: 2025年5月1日 11:34
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最終更新: 2025年5月1日 09:34
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「外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令」が閣議決定されました(経産省)
令和7年3月25日、政府は「外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令」を閣議決定しました。今回の政令改正は、国際社会との協調のもとで日本の安全保障貿易管理を強化することを目的としたものです。経済産業省は従来より、大量破壊兵器の拡散防止や通常兵器の過剰蓄積を防止する観点から、「外国為替及び外国貿易法」に基づき、輸出や技術移転に対する厳格な規制を行っていますが、今回の改正では、国際的な輸出管理レジームでの合意内容を反映し、具体的な貨物や技術の規制対象を見直すこととなりました。
今回の改正では、「外国為替令」と「輸出貿易管理令」の双方にわたる内容が含まれており、それぞれの政令に掲げられた別表において、特定の品目や技術に対する規定が新たに追加されたり、既存の規定が修正される形となっています。まず、外国為替令の改正においては、電磁波を吸収する機能を持つ素材、いわゆる「電波等の吸収材」に関連する規定が見直されました。これは、軍事用途に転用されるリスクが高いとされる先端素材であり、これに関連する技術の国外流出を未然に防ぐための措置といえます。
また、セラミックの表面を特殊な手法でコーティングする技術も新たに規制対象に加えられました。セラミックの加工技術は、軍事・航空宇宙分野などで幅広く利用されており、その輸出管理の強化は、安全保障上の重要な対応と位置付けられています。
一方、輸出貿易管理令においても複数の項目が追加・改正されています。特に注目すべきは、重水の製造に用いられる触媒に関する規定の改正です。重水は核関連技術において重要な役割を果たすため、関連技術の流通管理は国際的にも極めて厳格です。さらに、化学物質のひとつである「五ふっ化よう素」も新たに規制対象とされました。この物質はフッ素化反応に用いられ、特定の化学兵器の製造に転用される恐れがあるため、輸出時の管理が求められます。
加えて、金属の積層造形装置、いわゆる3Dプリンターに関連する装置も規制リストに加えられました。金属積層造形技術は、航空機の部品や高精度兵器の製造にも応用可能であるため、国際的にも注目されています。極低温冷却装置も新たに規制対象となり、これらは量子コンピュータや先端物理研究など、最先端の技術分野と関連性が高いとされています。
また、シリコンやゲルマニウムに関連する化合物、たとえばふっ化物、水素化物、塩化物といった高純度物質についても規制が追加されました。これらの化学物質は半導体や光電子デバイスの製造に不可欠であり、戦略物資としての重要性が年々高まっています。さらに、シリコンやゲルマニウム自体、あるいはその酸化物を利用した基板等についても新たに対象となりました。これらは次世代半導体材料や高性能センサーの基盤となる技術であり、軍事転用を防ぐ意味でも適切な輸出管理が求められています。
このように、今回の政令改正は、国際社会における輸出管理レジームとの整合性を保ちながら、日本国内においても法令の実効性を確保しようとするものです。日本は、ワッセナー・アレンジメント(WA)や核供給国グループ(NSG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)といった国際枠組みに参加しており、これらの枠組みに基づく義務や合意を確実に履行する責任を負っています。今般の改正は、まさにその国際的責務を果たす一環といえるでしょう。
さらに、この政令改正は、民間企業の輸出入業務にも直接的な影響を及ぼすため、該当する企業にとっては、早急に輸出管理体制を見直す必要があります。具体的には、自社が取り扱う製品や技術が今回の改正により新たに規制対象となっていないかどうかを確認し、必要であれば当局との事前相談や許可申請の準備を進めることが求められます。また、社内の輸出管理部門や法務・知財部門、技術部門との連携を強化し、適切な社内規程の整備や社員教育の徹底も重要となります。
近年では、輸出管理違反による企業への行政処分や刑事罰も厳格化されており、企業としての社会的信頼を守るためにも、輸出管理の遵守体制は経営課題の一つと認識すべき状況です。今回のような法令改正は、その意義や背景を正確に理解した上で、実務への落とし込みを図ることが極めて重要です。特に、国際展開を目指すスタートアップや技術系ベンチャー企業にとっては、自社の製品が軍事転用されるリスクを想定し、適切な出口管理を行うことが今後のビジネス展開に不可欠となります。
経済産業省は、今回の政令改正を通じて、日本が安全保障上の責務を確実に果たすと同時に、先端技術を持つ企業が安心して国際取引を行える環境づくりを進めています。企業の皆様におかれては、今回の政令改正の内容を正確に把握し、必要に応じた対応を早急に進めることが強く求められています。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ