2025年7月25日
労務・人事ニュース
就職氷河期世代の住宅困窮と住宅政策の縦割り構造が企業の採用活動に与える深刻な影響とは
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認定こども園の保育士
最終更新: 2025年7月25日 06:34
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「駅チカ」/正看護師/整形外科/リハビリテーション科/外科/クリニック
最終更新: 2025年7月25日 22:37
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注目の在宅医療未経験者も歓迎しております/車通勤可/残業なし/即日勤務可
最終更新: 2025年7月25日 07:04
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「有資格」栄養士/保育園/千代県庁口駅/住宅手当・寮
最終更新: 2025年7月25日 00:03
『社会保障研究』第10巻第1号「特集:地域共生社会の構築に向けた「住まい支援」の最先端」(社人研)
戦後直後の日本社会は、住まいという最も基本的な生活の基盤を欠いたまま再出発を余儀なくされた。1945年の終戦直後、推計で約420万戸もの住宅が不足しているとされ、日本全国の世帯数が当時約1600万世帯であったことを踏まえると、実に4世帯に1世帯が「住む家がない」状態に置かれていたことになる。これは単なる統計の話ではなく、多くの人々が公園や地下街、壕舎、焼け跡の廃材で区切られた建物の一角など、住宅とは呼べないような場所で生活していたという現実を物語っている。
このような背景のもと、日本政府は早急に住宅の供給に取り組み、公営住宅法や住宅金融公庫法を立ち上げ、持ち家政策と賃貸住宅政策を両輪とする戦後住宅政策をスタートさせた。しかし、この住宅政策は当初から福祉的な視点を欠いており、厚生省が提案していた厚生住宅法案は成立に至らず、建設省主導の「建設政策」的性格が強い政策体系が確立されることとなった。この結果、日本の住宅政策は公共事業や経済政策の一環として進められることになり、住宅は経済成長の手段として位置づけられていったのである。
1970年代に入り住宅戸数が世帯数を上回ったことで、日本の住宅政策は「量から質」へと舵を切ることになった。その中心的な概念となったのが「最低居住面積」や「誘導居住水準」であり、一人ひとりが個室を持つようなライフスタイルの実現が目指された。しかし、これらは主に中流層以上の持ち家取得を想定したものであり、低所得者層や非正規雇用者、ひとり親家庭などの「住宅確保要配慮者」に対する支援は、相対的に後回しにされる傾向が続いてきた。
日本社会が大きく様変わりする中で、2006年に制定された住生活基本法は、「住生活の安定の確保及び向上の促進」を基本理念とし、高齢者や子育て家庭、低所得者、被災者など、住まいの確保に困難を抱える層への支援の必要性を法的に明記した。また、2007年に制定された住宅セーフティネット法では、「住宅確保要配慮者」を明確に定義し、こうした人々への賃貸住宅の提供促進を国と地方公共団体の責務とした。
住宅セーフティネット法の改正は2017年に実施され、ここで新たに創設されたのが「居住支援法人」と「登録セーフティネット住宅」である。これにより、住宅を提供するだけでなく、入居後の継続的な見守りや福祉サービスへの接続といった包括的支援の仕組みが試みられるようになった。全国で多数の居住支援法人が立ち上がったが、補助金の総額が固定されていたため、法人数の増加により1法人あたりの補助額は200万円から300万円程度にまで減少してしまい、制度の持続可能性にも課題が残されている。
近年では、リーマンショックや東日本大震災、さらには新型コロナウイルス感染症の流行によって、住宅の喪失リスクが従来の枠組みを超える形で顕在化している。コロナ禍では、ネットカフェの閉鎖やDVによる家庭内の居場所喪失、非正規労働者の急な住居喪失など、多岐にわたる住宅問題が浮かび上がった。こうした背景のもと、居住支援法人や自治体が柔軟に対応しようとする動きがあったものの、既存の法律や制度だけでは対応が不十分であったことは否めない。
こうした社会の変容を受け、2024年には住宅セーフティネット法が再び改正され、2025年10月から新たな仕組みとして「居住サポート住宅」が制度化される予定となっている。この居住サポート住宅は、賃貸住宅の大家が居住支援法人などとあらかじめ連携し、入居者に対して見守りや福祉的な支援を提供する仕組みである。登録により住宅改修などの補助が受けられるなどのインセンティブが設定されているものの、見守り体制の構築費用や実効性のある支援の持続性といった課題は残っている。
さらに、今回の法改正では市町村レベルでの「居住支援協議会」の設置が努力義務化され、地域における賃貸住宅のアセットマネジメントの視点から、民間・公営を問わず多様な住宅ストックを社会資源として捉えるべきという認識が強まっている。これまで、住宅政策と福祉政策は別々の行政領域とされていたが、両者の連携が求められる時代に入ったといえる。
現代の住宅問題は、もはや画一的な家族モデルや生活スタイルに基づくものではなく、個人の多様なニーズと状況に即した柔軟な支援が求められている。高齢者、障害者、ひとり親家庭、外国人、LGBTQ+など、多様な属性を持つ人々が「住まい」を通じて地域とつながり、安心して生活できるような仕組みの整備が急務となっている。住宅は単なる「箱」ではなく、人が生きることそのものを支える環境である。企業の採用担当者にとっても、従業員の住環境の安定がパフォーマンスの維持や離職防止に直結する点を認識することは、今後の人材戦略を考えるうえで欠かせない視点となるだろう。
⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ