2025年4月22日
労務・人事ニュース
施行2年半で144組合設立、協同組合が示す地域雇用の新しい形
- 「高給与」/准看護師・正看護師/クリニック/夜勤なし
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 「高給与」/准看護師/介護施設/夜勤なし
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 「車通勤OK」/正看護師/訪問看護
最終更新: 2025年4月30日 22:32
- 認可保育園の保育士
最終更新: 2025年5月1日 04:08
労働者協同組合の設立状況(厚労省)
令和7年4月1日をもって、労働者協同組合法が施行から2年6か月を迎えました。この制度は、労働者自らが出資し、運営にも参画し、自らの手で働くという共同の理念に基づく新たな仕組みとして注目されています。施行からの期間において、全国1都1道2府31県において、合計144法人の労働者協同組合が設立されました。これは、地域社会のニーズと働き方の多様化が制度の導入を後押しした結果であり、各地において様々な分野での活動が展開されるに至っています。
労働者協同組合は、従来の企業とは異なり、組合員が出資し、その意見を経営に反映しながら、実際に現場で働くという特性を持っています。この制度の本質は、雇われる働き方ではなく、働く人々が主体となり仕事を生み出し、管理・運営にも深く関与していく点にあります。そのため、組合員同士の協力や意思決定プロセスが重視され、働く環境そのものを自らの手で築いていくことが可能になります。特に、地域に根ざした課題の解決や、特定のニーズに対応する柔軟な事業展開ができる点が、多くの自治体や市民団体からも高く評価されています。
設立された144の法人では、高齢者や障害者の生活支援、子育て支援、さらには地域資源を活用したキャンプ場の運営や葬祭業、成年後見制度の支援、家事代行サービス、給食づくりなど、非常に多岐にわたる事業が実施されています。これらの事例は、いずれも地域社会に必要とされているサービスでありながら、民間企業だけでは十分に手が届かなかった分野に対して、労働者協同組合が新たな選択肢を提示していることを示しています。特に、高齢化が進む地域や人口減少が顕著な地方都市では、このような組織形態が非常に効果的な役割を果たしており、地域の活性化にも貢献しています。
厚生労働省では、こうした協同組合を通じて、従来の枠組みにとらわれない多様な働き方を実現するとともに、地域社会が抱える課題の解決にも資するような取り組みを支援しています。その一環として、令和6年8月より神奈川県、福井県、長野県、三重県、徳島県の5県をモデル地域として選定し、それぞれに協議会を設置。地域の実情に即した労働者協同組合の活用を推進し、モデル事業として全国への展開を図る体制が構築されました。
このモデル事業では、個々の事情に応じた柔軟な働き方の選択が可能になるよう環境整備を行うとともに、働きづらさを感じている方々や女性、中高年齢者といった就労が難しいとされる層にも、多様な雇用の場を提供することを目的としています。実際、子育て中の女性や定年後の再就職が難しい高齢者、身体的制限のある障害者にとって、自らが関わりたい分野で主体的に働ける場が生まれることは、自立した生活を支える上でも非常に大きな意義を持ちます。加えて、組合員同士の相互扶助の精神が根付いていることで、心理的な安心感や人間関係の豊かさも期待され、働くことに対する満足度の向上にもつながっています。
さらに、労働者協同組合は、営利を第一とせず、地域や人の暮らしに密着した活動を展開できるため、ビジネスと福祉の中間に位置するような独自のポジションを持っています。これにより、企業でも行政でもカバーしきれないニーズに応える存在となり、特に福祉関連や生活支援の分野でその強みが発揮されています。また、制度の普及に向けては、令和4年度に開設された特設サイトが周知広報の一端を担い、制度への理解と関心を広げる役割を果たしてきました。
今後は、モデル地域での取り組みの成果を全国に展開し、さらに多くの地域において労働者協同組合の設立と活動が活性化していくことが期待されています。各地で成功事例が増えることで、制度そのものへの信頼も高まり、新たな参加者や支援者を巻き込んでいく好循環が生まれる可能性もあります。
企業の採用担当者にとっても、この制度は非常に注目すべき存在です。なぜなら、従来の雇用関係とは異なる形で人材と関わる可能性が開かれるからです。例えば、地域連携型のプロジェクトを展開する企業にとっては、労働者協同組合と連携することで新たなサービスや雇用創出の道が見える可能性があります。また、多様な人材の活用を掲げる企業では、障害者や高齢者といった就労支援対象者が持つスキルや経験を活かした新規事業の展開にもつなげられるでしょう。
さらに、協同組合に参加する人々の働き方や価値観は、自主性や協調性に富み、コミュニケーション能力も高い傾向が見られます。こうした人材は企業にとっても非常に魅力的であり、パートナーシップを築くことで人的資源の多様化と組織文化の活性化を同時に図ることが可能になります。
このように、労働者協同組合制度は、単なる雇用の代替手段ではなく、持続可能な地域社会の構築や新しい働き方のモデルとして、今後ますますその重要性を増していくと考えられます。企業がこの制度とどう向き合い、連携を深めていくかが、今後の人材確保戦略や地域貢献の在り方を大きく左右する可能性を秘めています。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ