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2025年7月15日

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月収50万円から62万円へ基準引き上げ!年金支給停止の条件が緩和

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在職老齢年金制度の見直しについて(厚労省)

令和7年6月13日、国会で可決された年金制度の改正により、高齢者の就労と年金受給のバランスを見直す「在職老齢年金制度」の改正が正式に決定されました。この制度は、年金を受け取りながら働く高齢者に対して、一定の報酬を得ている場合に年金の一部を支給停止とする仕組みです。現行制度では、賃金と年金の合計が月額50万円を超えた場合、その超過分の半額が年金から差し引かれていました。これは社会保険の仕組みとしては異例で、年金保険料を支払った分に対する給付の原則にそぐわない一面がありました。

今回の見直しの背景には、健康寿命の延伸と、それに伴う高齢者の就業希望の増加があります。たとえば、65歳から69歳の高齢者のうち、約60%が66歳以降も仕事を続けたいと答えており、実際に高齢者の働き方に関して「年金が減らないように勤務時間を調整している」という声も3割以上に上ります。こうした現状は、制度が高齢者の労働意欲を妨げている可能性を示しており、働き続けたいと考える人々の足かせになっていると指摘されてきました。

改正の要点は、年金の支給停止となる基準額を現行の月額50万円から62万円へと引き上げることです。これにより、たとえば賃金が月45万円、厚生年金が月10万円の方の場合、現行制度では5万円の超過が発生し、その半額である2万5千円が支給停止となっていました。しかし、見直し後は合計55万円であっても62万円の基準内に収まるため、この2万5千円も全額支給されるようになります。この変更によって、高齢者が安心して就労を継続できる環境が整い、結果として経験や技能を持つ人材の社会参加が促進されることが期待されています。

なお、今回の制度改正は一部から「将来世代の年金水準を下げるのではないか」との懸念も寄せられています。しかし政府は、これは保険料負担に見合った本来の年金額を受け取りやすくするための調整であると説明しています。加えて、今回の見直しを含めた制度全体の改正により、結果として将来の年金給付水準はむしろ上昇すると見込まれています。

高齢者の就労意欲を維持することは、深刻化する人手不足の解消や経済の持続的成長にも寄与する要素となります。特に中小企業や地方の企業にとっては、高齢者の持つ技術やノウハウを活用できる貴重な機会となるでしょう。今回の見直しによって、企業側が高齢者を雇用しやすくなり、本人も年金支給への不安を抱えることなく、積極的に就労を選択できる社会へと一歩近づくことになります。

この制度改正は、令和7年5月16日に国会に提出された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」の一環として実施されたものです。高齢者の活躍を促すための社会的土台を築くとともに、公平で持続可能な年金制度の構築を目指した取り組みとして、今後の動向にも注目が集まります。企業の人事担当者や採用担当者にとっても、シニア人材の活用戦略を見直す好機と言えるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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