2025年5月19日
労務・人事ニュース
母親の継続就業率32.4%に上昇、企業の柔軟な働き方改革が子育てを支える(第14回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児))
- 看護師/2025年5月19日更新
最終更新: 2025年5月19日 06:37
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最終更新: 2025年5月19日 11:01
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最終更新: 2025年5月19日 11:01
第14回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況(厚労省)
令和6年5月13日、厚生労働省は「21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」の第14回調査結果を発表しました。この調査は、少子化対策をはじめとした社会政策の基礎資料を得ることを目的に、同一の子どもを対象として年ごとに継続的に実施されているものであり、今回は平成22年(2010年)に生まれた子どもたちが中学2年生となった時点での様子が明らかにされました。過去の結果との比較も行いながら、母親の就業状況、子どもの悩みや不安、家庭内での会話と将来意識といった側面について詳しく分析されています。
まず注目すべきは、母親の就業状況に関する変化です。今回の調査では、母親が有職である割合が84.1%に達しており、これは平成13年に生まれた子どもを対象とした同様の第14回調査での79.3%を4.8ポイント上回る結果となりました。さらに、出産の1年前に常勤で働いていた母親が、その後も継続して常勤勤務を続けている割合は32.4%にのぼり、平成13年出生児の調査結果と比較すると8.3ポイントも高くなっています。このような数値から、母親の就業継続率が着実に高まっている傾向が見て取れます。これは、労働環境や家庭との両立支援の制度整備が進んできたことの一つの成果とも考えられます。企業の育児休業制度の拡充や在宅勤務制度の導入など、柔軟な働き方が広がったことで、出産後も職場に戻りやすい環境が整いつつあることを裏付けるデータでもあります。
次に、子ども自身の精神的な状態や悩みについての調査結果も示されています。平成22年に生まれた子どもたちのうち、「悩みや不安がある」と答えた割合は、第13回調査と比較して高くなっており、その中でも特に「学校や塾の成績」に関する悩みが最も多く見られました。これは近年、教育に対する意識が家庭や社会の中で高まっている一方で、子どもにとってのプレッシャーが強くなっている可能性を示唆しています。さらに、子どもが悩みを相談する相手としては「お母さん」が最も多く、次いで「友人」「お父さん」と続いており、家庭内での母親の存在が精神的な支えとして大きな役割を果たしていることがわかります。特に中学生という多感な時期において、身近な大人との信頼関係が、子どもに安心感を与える上で重要な要素であることが改めて確認されました。
また、家庭内での会話と子どもの将来に対する意識の関係についても明らかにされています。将来について「具体的に考えている」と答えた子どもたちは、母親や父親と進路に関する会話を「している」と答える割合が高い傾向にありました。これは、親子間のコミュニケーションが、子どもの将来設計に積極的な影響を与えていることを示すものであり、家庭内の会話が思春期の子どもにとって進路選択や目標形成に重要な役割を果たしていることを裏付けています。加えて、このような親子の対話は、学業成績の向上や学校生活への満足度にも関連しており、今後の教育支援策の設計にとっても極めて有意義な知見と言えるでしょう。
今回の調査は、子どもの発達や家庭環境の変化を時系列で捉えるという縦断的な性格を持っているため、単年度の変動だけでは見えない中長期的な傾向を把握することが可能です。例えば、母親の就業状況の変化が子どもの生活リズムや精神的安定にどのように影響しているか、また家庭内での会話量が子どもの社会性の発達にどのように作用するかといった点は、調査データの積み重ねによってより深く分析することができます。こうした分析結果は、単に政策立案に活用されるだけでなく、企業が従業員のライフステージに応じた働き方を提供する際の判断材料にもなり得ます。
実際に、育児中の従業員を支援する制度は、単なる福利厚生にとどまらず、企業の持続的成長戦略の一部として位置づけられつつあります。例えば、出産や育児のタイミングにおいてキャリアを中断せず、長期的な視点で働き続けられる環境を整えることで、優秀な人材の流出を防ぐことが可能になります。厚生労働省の調査が示すように、母親の継続就業率が上昇していることは、企業の制度設計と運用が着実に社会全体に好影響を与えていることを証明するものです。
一方で、子どもの悩みが深刻化しているという点には注意が必要です。特に学業成績に関する悩みは、成長期における精神的な負担となり得るため、学校や地域、家庭が連携して支援体制を整えることが求められます。このような背景から、企業においても家庭生活との両立を支援する取り組みを一層強化し、子どもを育てる家庭が安定した生活を送れるようにすることが、今後の社会的責任の一環として重要視されるでしょう。
このように、厚生労働省が行った縦断調査の第14回結果は、子育て支援のあり方や働く親への支援、そして教育現場における課題など、現代日本社会が直面する多くのテーマについて多角的な示唆を提供しています。これらの知見を踏まえた上で、官民の連携による持続可能な支援体制の構築が今後の課題となります。企業としても、従業員が家庭と職場の両立を図れる環境づくりを積極的に進めることで、より安定した労働力の確保と、社会全体への貢献につながる施策を展開していくことが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ