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2025年4月15日

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満床率95%以上で入所抑制が顕著に 介護施設の稼働率が与えるサービス提供への影響

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  • 看護師/2025年5月1日更新

    会社名 きららデイサービスセンター 雇用形態 正社員 給与 時給1,200円~1,800円 勤務地 福岡県

    最終更新: 2025年5月1日 11:34

  • 診療放射線技師/2025年5月1日更新

    会社名 医療法人俊英会 有吉クリニック 雇用形態 正社員 給与 時給1,500円~2,000円 勤務地 福岡県

    最終更新: 2025年5月1日 11:33

  • 看護師/2025年5月1日更新

    会社名 ティンカーベル保育園 雇用形態 正社員 給与 時給1,200円~ 勤務地 福岡県

    最終更新: 2025年5月1日 11:34

  • 看護師/2025年5月1日更新

    会社名 特別養護老人ホームひまわり 雇用形態 正社員 給与 時給1,200円~ 勤務地 福岡県

    最終更新: 2025年5月1日 11:34

キャパシティ制約と非効率なサービス提供:介護施設の理論と実証(内閣府)

2025年3月、内閣府経済社会総合研究所は、介護施設におけるベッド収容能力の制約が、患者の受け入れと退所の判断に与える影響についての研究成果を発表しました。この研究は、限られた医療資源の中でどのようにサービス提供を効率化できるかという、日本だけでなく多くの高齢化社会に共通する課題に光を当てたものです。

特に注目されたのは、施設のベッド数が満床に近づくにつれて、新規の入所受け入れが著しく減少する傾向にあるという点です。逆に、ベッドに空きができた場合、施設はすぐに新たな患者を受け入れ、空床を埋めようとする行動が見られました。研究では、こうした施設側の行動が「収容能力の制約」すなわちベッド数に依存する形で強く左右されていることを実証的に示しています。

研究の中心となったのは、日本全国の「介護老人保健施設(老健)」を対象とした詳細なデータ分析です。老健は、要介護認定を受けた高齢者に対して、在宅復帰を目指すリハビリや短期の入所サービスを提供する施設であり、全国に4,200カ所以上設置されています。施設は公益性の高い非営利法人によって運営されており、その経営は主に国が定めた診療報酬によって成り立っています。

老健においては、一日あたりの定額報酬が患者の介護度に応じて支払われる仕組みがとられており、その約90%が固定部分で構成されています。このため、施設にとってはベッドを常に埋めておくことが経営的に重要である反面、満床状態では新たな患者の受け入れが難しくなるというジレンマに直面しています。

研究チームは、患者の死亡という偶発的な出来事を利用して、施設のベッドに急に空きができた場合の行動変化を観察しました。死亡によって空床が発生した直後、施設はすみやかに新たな入所者を受け入れる傾向にあり、この傾向は最長で1カ月以上にわたって継続していました。これは、施設がベッドの空きに対して迅速かつ積極的に対応している証左であり、同時に、通常は入退所の調整に一定の摩擦や遅延が生じていることも示唆しています。

この行動には2つの主な要因が関与していると分析されています。1つは「収入効果」であり、空床によって減少した収益を補うために入所を促進する動きです。もう1つは「コスト効果」で、ベッドの混雑が緩和されることで、追加の入所者を受け入れる際の人的・物的コストが下がり、結果的に受け入れがしやすくなるというものです。

さらに、施設ごとに見られるベッド稼働率のばらつきが、サービス提供の効率を低下させている可能性も指摘されています。具体的には、ある施設が満床に近い状況で入所を拒否している一方で、別の施設では空きがあるにもかかわらず利用者が来ないという事例があるのです。このような状況では、患者を適切に再配置する「稼働率の平準化」政策を行うことで、施設全体としての受け入れ可能人数が増加するという実証結果も示されました。

最も控えめな試算でも、稼働率の高い施設から低い施設へ患者を再配置した場合、4週間あたりの新規入所者数が6.6%増加する可能性があることが分かっています。これは、ベッド数を増やすといった物理的な施設拡張なしに、制度的な工夫でサービス提供量を増やせる有効な政策手段となる可能性を示唆しています。

この研究は、介護施設が抱える構造的な課題と、その改善に向けた具体的な道筋を示した貴重な成果といえるでしょう。医療・介護業界ではこれまで、収益の最大化や患者の選別といった視点からの研究が多く行われてきましたが、本研究では、非営利組織としての使命と現実的な運営上の制約のバランスを踏まえ、実効性のある政策提案に結びつけています。

また、日本のような急速な高齢化が進行する国では、今後ますます介護サービスへの需要が高まることが確実です。既存の資源を最大限に活用し、効率的にサービスを提供するためには、今回のようなエビデンスに基づいた政策立案が必要不可欠です。特に、ベッドの稼働状況をリアルタイムで共有・調整できる仕組みや、施設間の患者移送を柔軟に行える制度整備が求められます。

本研究が示したように、「どの施設がどれだけ混雑しているか」を可視化し、調整することによって、介護サービスの提供量そのものを拡大することが可能です。これは、限られた財政資源の中で高齢者福祉の質を向上させるうえで非常に有望なアプローチです。

今後は、自治体や施設間での連携強化、ITを活用したベッドマネジメントシステムの導入など、実務面での対応が焦点となります。加えて、ケアワーカー不足への対処として、待遇改善や労働環境の整備も並行して進める必要があります。

このように、収容能力の制約がもたらす非効率を可視化し、政策的介入によってその改善可能性を提示した本研究は、介護政策のみならず、教育、医療、保育など、他の公共サービスにも応用可能な普遍的示唆を持っています。

⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ

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