2025年5月16日
労務・人事ニュース
現金給与総額308,572円で39か月連続増加、採用戦略に反映すべき給与とは(毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果速報)
- クリニックの看護師/常勤・夜勤有り
最終更新: 2025年5月15日 23:00
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最終更新: 2025年5月15日 22:32
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最終更新: 2025年5月15日 22:32
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最終更新: 2025年5月15日 22:32
毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果速報(厚労省)
2025年3月分の毎月勤労統計調査の速報値によれば、日本の労働市場における賃金動向には依然として複雑な側面が見受けられます。名目賃金の増加傾向は続いている一方で、実質賃金は物価上昇の影響を受けて減少が続いており、企業の採用担当者にとっては給与設計や人材確保の戦略に慎重な見直しが求められる時期と言えるでしょう。
まず、全就業形態を対象とした労働者一人あたりの現金給与総額は、308,572円と前年同月比で2.1%の増加となりました。これは39か月連続のプラスとなっており、賃金水準が引き続き上昇傾向にあることがわかります。さらに、規模30人以上の事業所に限って見ると、現金給与総額は347,059円で、こちらも前年同月比2.1%増を記録しており、49か月連続でプラスという長期的な伸びが確認されました。これは、ある程度の規模を持つ企業においては安定した給与改善が進められていることを示しています。
また、基本給や手当などの定期的に支給される給与である「きまって支給する給与」は282,579円と、1.2%の増加で41か月連続のプラスを維持しています。中でも所定内給与、つまり残業などを含まない通常勤務時間に対して支払われる給与は262,896円で、前年同月比1.3%の増加となりました。これは、労働時間の効率化やベースアップの影響が着実に給与に反映されていることを示しています。一方で、賞与や一時金などの特別に支払われた給与は25,993円で、前年同月比13.9%という大幅な伸びを見せており、企業が短期的な成果やインセンティブに重点を置いた報酬政策を展開している可能性が伺えます。
さらに就業形態別の賃金動向を見ると、正規雇用を中心とする一般労働者の現金給与総額は399,394円で、前年同月比2.7%の増加となりました。このうち所定内給与は335,505円で、1.8%の増加が確認されています。これに対し、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,375円で、前年同月比3.8%の上昇という結果になっており、45か月連続で増加が続いています。これは、最低賃金の引き上げや人材不足による非正規労働市場の競争激化が背景にあると考えられます。
一方で、実質賃金に目を向けると、名目賃金の増加にもかかわらず、購買力は依然として下がっている実情が明らかになっています。消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で調整した実質賃金指数は85.7となり、前年同月比で2.1%の減少となりました。これは3か月連続のマイナスであり、賃金上昇が物価上昇に追いついていない状況を示しています。なお、同じく消費者物価指数(総合)で調整した場合の実質賃金指数は87.2で、前年同月比で1.5%の減少となっています。いずれの指標も、企業側が提示する給与が生活コストの上昇を完全にはカバーできていないことを示しており、これは労働者の実感とも合致する結果です。
特に注目すべきは、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比で4.2%も上昇しているという点です。この物価上昇幅と比較すると、名目賃金の伸び率では実質的な生活水準の維持が難しいと考えられ、企業の採用戦略においては待遇改善や福利厚生の充実、インフレ対応型の給与制度の導入が急務となるでしょう。さらに、消費者物価指数(総合)でも3.6%の上昇となっており、賃金の購買力は幅広い分野での物価上昇によって圧迫されていることがわかります。
このような実情において、企業の採用担当者は、単なる名目給与の提示ではなく、実質的な生活水準に配慮した給与設計が求められています。特に若年層や育児世代の労働者にとって、給与の実質価値は生活設計に直結する要素であり、採用競争力を高めるためには、住宅手当や通勤補助、子育て支援金などの非金銭的報酬の充実も重要です。また、パートタイム労働者の待遇改善は、即戦力となる人材を安定して確保するための基本戦略ともいえます。
さらに、人材獲得における企業間競争は一層厳しさを増しており、採用市場では「実質賃金の見せ方」が企業のブランド力に直結する傾向が強まっています。求職者にとって、単なる月収額よりも「実際にどれだけの生活が成り立つのか」が重要な判断基準である以上、給与の総額だけでなく手取り額や税・社会保険料控除後のシミュレーション提示など、情報の透明性と親切設計が求められています。
なお、今回の統計では、2025年1月に調査対象事業所の部分入れ替えが行われており、それにより現金給与総額で2,541円(0.9%)、きまって支給する給与で1,897円(0.7%)の断層が生じていることにも留意が必要です。このため、2025年1月以降の数値とそれ以前の統計を単純に比較する際には一定の慎重さが求められます。
こうした複合的な要因を総合的に踏まえると、採用担当者にとっては、競争力ある報酬制度の構築とともに、物価の動向を的確に捉えた賃金設計がこれまで以上に重要となっています。また、単純な給与水準だけでなく、働きがいを感じられる職場環境や、長期的なキャリア形成が可能な制度設計を組み合わせることで、優秀な人材の定着を図ることが不可欠です。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ