2025年4月9日
労務・人事ニュース
約285万の小規模事業者を対象にした第Ⅲ期振興基本計画が始動、4つの目標と15の重点施策
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最終更新: 2025年5月1日 17:37
- 看護師/2025年5月1日更新
最終更新: 2025年5月1日 11:34
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小規模企業振興基本計画(第Ⅲ期)が閣議決定されました(経産省)
令和7年3月25日、政府は「小規模企業振興基本計画(第Ⅲ期)」を閣議決定しました。この基本計画は、小規模企業振興基本法に基づき、小規模事業者の支援をより計画的かつ包括的に進めるための指針として、おおむね5年ごとに見直されてきたもので、今回はその第3期にあたります。中小企業庁は近年の情勢変化や経済動向をふまえ、制度全体の再設計を行いました。
小規模事業者は、日本国内における企業数の大半を占めており、約285万者とされています。特に地方部においては、生活インフラや地域文化の担い手として重要な役割を果たしており、地域経済の持続的発展には欠かせない存在です。しかしながら、近年は新型コロナウイルス感染症の影響、原材料価格やエネルギーコストの高騰、円安、気候変動による自然災害の激甚化、さらには少子高齢化と人口減少による人手不足など、経営環境は急激に変化しています。こうした背景のもと、小規模事業者が持続的に事業を継続していくためには、従来の支援施策にとどまらず、新たな挑戦を後押しする施策が必要とされていました。
今回策定された第Ⅲ期計画では、「需要を見据えた経営力の向上」「経営資源の有効活用と人材の育成・確保」「地域経済と住民生活の活性化」「支援体制の強化と連携推進」という4つの目標が掲げられています。これらの目標を実現するために、合計15の重点施策が設定され、政府・自治体・支援機関が一体となって小規模事業者を支援する体制が明示されました。
まず、経営力の向上を目的とした施策としては、経営者に必要な知識とスキル、いわゆる「リテラシー」の向上が掲げられています。具体的には、経営戦略、会計、知的財産管理、デジタル技術の活用など、経営基盤を強化するための研修やセミナーの充実が進められます。また、経営者が自らのビジョンを明文化し、経営計画として具体化することが促されており、その過程を通じて、経営の「自走化」を実現しようとしています。
さらに、事業拡大や新規分野への挑戦に向けた支援も強化されます。インバウンドや地域資源を活用した観光、食、伝統文化など、体験価値の高い分野に対する需要の高まりを踏まえ、これらに対応できる商品・サービス開発や、販路開拓の支援が重点的に進められます。展示会や即売会、ECサイトを活用した販売支援、官公庁からの受注機会の増加を目指した施策も計画に含まれています。
人材面では、人手不足への対応とともに、多様な人材の育成・確保・活用が図られます。人材はコストではなく「未来への投資」と位置づけられ、賃上げや職場環境の整備などにより、従業員の能力が最大限に発揮される職場づくりが求められます。加えて、外国人材の受け入れ制度の見直しや、女性・高齢者・若者を含む多様な人材の活躍を支援する取り組みも明記されています。
事業承継や廃業の円滑化についても大きなテーマとなっており、「親族内承継」だけでなく、「第三者承継」や「第二創業」といった形で、経営資源の円滑な継承を支援する制度が強化されます。もし事業の継続が難しい場合にも、廃業後の生活安定や再チャレンジへの環境整備が進められます。これは、経営者が将来の選択肢を前向きにとらえられるよう支える施策でもあります。
地域経済の活性化においては、地域ブランドの育成や商店街の機能強化、地域課題解決に貢献する事業者への支援などが進められます。中でも「ローカル・ゼブラ企業」と呼ばれる、収益性と社会的意義の両立を目指す企業の育成に注力しており、地域に根ざした持続可能なビジネスモデルの確立が期待されています。
支援体制については、商工会・商工会議所をはじめとする支援機関の人件費や施設整備費の確保、デジタルツールの導入、ナレッジの共有など、質と効率の両面から支援の底上げを図ります。さらに、国と地方の役割分担を明確にしつつ、緊密な連携によって総合的な支援体制を構築します。これにより、フリーランスや非会員の事業者を含め、支援がより広範囲に、かつスムーズに届くようになります。
自然災害への対応としては、事業継続力の強化が新たな焦点となっています。感染症やサイバー攻撃を含むあらゆるリスクを想定し、平時から経営計画の一部としてBCP(事業継続計画)を策定し運用することが奨励されます。また、災害発生時には、国・都道府県・市町村が連携し、被災した小規模事業者に対して早期復旧・復興を支援する体制も構築されます。
今回の計画は、単なる制度変更ではなく、社会全体が構造的転換期を迎えるなか、小規模事業者が地域経済の未来を支える存在であるという視点から、多方面にわたる支援が設計されています。政府はこの基本計画を通じて、小規模事業者が自らの力で持続可能な経営を行い、さらには地域社会全体の活力向上に寄与することを後押ししていく構えです。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ