2025年5月10日
労務・人事ニュース
賃上げ率5%超が全国27県に拡大!2025年春の地方労使交渉で見えた好循環の兆し
- 「夜勤なし」/准看護師/介護施設/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年5月9日 22:32
- 「夜勤なし」/准看護師/オンコールなし
最終更新: 2025年5月9日 22:32
- 「夜勤なし」/准看護師・正看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年5月9日 22:32
- 「駅チカ」/正看護師/美容クリニック/夜勤なし
最終更新: 2025年5月9日 22:32
地域課題分析レポート-地域における賃金の持続的な上昇に向けて- 第3章 賃金・所得から消費への好循環に向けて(内閣府)
2024年から2025年にかけての日本経済では、物価上昇や所得環境の変化、消費者の心理、そして実際の消費行動の変化が、地域ごとに異なる形で顕在化しています。こうした状況の中で、賃金と所得の増加が持続的な消費へとつながる「好循環」を構築することは、地方経済の活性化と中長期的な経済成長にとって極めて重要です。本章では、最新の統計データをもとに、賃金・所得から消費への好循環の現状と課題を詳細に分析します。
まず注目されるのが、全国的に広がる物価の上昇です。2024年11月以降、消費者物価指数は再び上昇傾向を強め、特に食料品の価格上昇が全国各地で加速しています。北海道や東北、沖縄では、これまで相対的に高めの上昇率が見られていましたが、現在では全国的に物価上昇率が均一化しており、地域差は縮小しています。この上昇は生鮮食品だけでなく、生鮮食品を除いた食料価格の寄与も大きく、米や野菜など、生活に直結する商品の値上がりが家計に直接的な影響を与えています。
物価の上昇は、消費者の心理にも大きな影響を及ぼしています。内閣府が行った消費者動向調査では、2023年から2024年初頭にかけて改善が見られた消費者マインドが、2024年夏以降には再び悪化に転じ、2024年11月には前年を下回る水準まで低下しました。これは主に「暮らし向き」の評価が悪化したことによるものであり、「収入の増え方」や「雇用環境」よりも、日々の生活の実感が指数に強く反映された結果といえます。
このようなマインドの悪化は、実際の消費行動にも表れています。スーパーやコンビニ、ドラッグストアといった小売業態の実質売上を見ると、物価の上昇によって名目売上が維持されていても、実質的な売上は減少傾向にあります。特に東北や北陸では、スーパーの実質売上が全国平均を下回る水準で推移しており、中国地方でも2024年の後半からは落ち込みが見られます。一方で、関東や沖縄では、全国平均を上回る実質売上を記録しており、地域によって消費活動の強弱がはっきりと分かれています。
こうした地域差は、電子商取引(EC)の浸透度にも関係しています。2024年時点で、関東では二人以上世帯全体のEC支出比率が10%を超え、全国平均の8.3%を上回っています。さらに、EC利用世帯に限った場合、九州・沖縄や北海道でも高い支出比率が見られ、これらの地域ではECの活用が実店舗での消費の代替手段となっていることがうかがえます。ECを通じた家計支出の推移を見ると、2024年後半には東海や関東を除き、全国的に増加傾向が続いており、消費の在り方が変容していることが明確です。
一方、サービス消費、特に外食に関する動向では、地域ごとの実質売上の伸び率に違いが見られます。カード決済によるデータをもとにした実質利用額では、北海道や東北、北陸といったこれまで財消費において弱含んでいた地域でも、2023年後半から2024年前半にかけて高めの伸びを示しています。外食業の売上についても、北陸では2025年1月に震災の影響による反動で大きな伸びが見られた一方で、全国的には横ばい圏内での推移が続いており、消費者のサービス支出には底堅さがあると評価できます。
では、こうした消費を後押しする賃金の動向はどうかというと、2025年の春季労使交渉では、地方部においても顕著な賃上げの動きが見られました。4月17日時点で結果が明らかになっている36都道府県のうち、27都道府県で賃上げ率が5%を超え、3県では6%を超える水準に達しています。従業員300人未満の中小企業でも、賃上げ率が5%を超えた都道府県は12と、過半数に迫っており、賃上げの波が全国的に広がりつつあることが分かります。
中小企業の動向にも注目すべき点があります。ある調査によると、2025年に賃上げを実施した中小企業の割合は、大企業とほぼ同水準となっており、地域別に見ても、大企業・中小企業の差は6~7割程度にとどまっています。さらに、今後5年間で60%以上の確率で毎年賃上げを実施できると回答した中小企業の割合は全国平均で約66%と高く、持続的な賃上げに対する前向きな姿勢がうかがえます。
しかしながら、こうした好循環が長期的に持続するためには、いくつかの課題を克服する必要があります。例えば、物価上昇が消費を抑制するリスクへの対応としては、実質所得を押し上げるための持続的な賃上げが欠かせません。そのためには、適切な価格転嫁の推進、省力化を目的とした設備投資や業務の効率化、そして事業再編やM&Aを含む経営基盤の強化が必要です。特に地方においては、公共部門の雇用比率が高いため、地方公務員の賃金水準が地域経済全体に与える影響も大きくなっています。
公的部門の賃金引き上げによる経済波及効果は、例えば地方公務員の雇用者報酬が1%増加すれば、県内総生産が0.01%から0.06%増加すると見込まれています。このように、公的分野における賃金政策もまた、民間部門の賃上げと同様に、地域経済の好循環に寄与する重要な要素となっています。
今後は、2%の物価安定目標を維持しつつ、それを上回るペースでの賃上げを実現し、消費者マインドの改善を促すことで、消費の拡大と再び賃上げにつながる好循環を定着させることが求められます。そのためには、政策的な後押しだけでなく、企業の主体的な取り組みと、地域の特性に応じた戦略的な人材確保と報酬設計が不可欠です。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ