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2025年4月14日

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農山漁村インパクト事例43件を初公開、ESG経営の可視化に役立つ指標付きガイダンス

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「農山漁村」インパクト可視化ガイダンス等の公表(農水省)

令和7年3月28日、農林水産省は企業による農山漁村への関与を促進する新たな施策として、「農山漁村」インパクト可視化ガイダンスおよび「農山漁村」官民共創実践ガイドブックを公開しました。これらの資料は、地域と企業が共に歩む新しいパートナーシップの形成を後押しするものであり、地域創生やESG経営に取り組む企業にとって極めて実践的かつ戦略的な内容を含んでいます。特に、ESGやSDGsといった国際的な視点と、ローカルの課題解決を結び付けた構成となっている点が特徴であり、企業のマテリアリティ(重要課題)と地域貢献をリンクさせる実践ツールとして注目を集めています。

今回公表された「農山漁村」インパクト可視化ガイダンスは、農山漁村で行われる事業活動の成果や変化、すなわち“インパクト”を可視化し、それを企業が自社の価値創造活動に組み込めるようにすることを目的としています。このガイダンスの策定にあたっては、令和7年1月から全5回にわたる検討会が実施され、自治体や地域課題の解決に取り組む企業、また資金や人材を提供する企業など、多様な立場の有識者が参画しました。議論の中では、農山漁村における社会的課題と企業の投資・活動がどう連動し得るかについて、因果関係の整理や活動の定量的評価の手法などが深堀りされました。

本ガイダンスには、企業にとっての理解を助けるため、社会的インパクトの初歩的な概念解説に加え、具体的に農山漁村で展開されている43件の活動事例が紹介されています。これらの事例は、地域課題の解決と経済的持続性を両立する取組が中心となっており、たとえば耕作放棄地の利活用による地域雇用創出、地産地消によるサプライチェーンの強化、高齢者の移動支援や生活インフラ整備など、都市部企業が連携しやすい分野が多数含まれています。企業にとっては、こうしたインパクトを評価し、自社の報告書や統合報告書に反映させることで、ステークホルダーへの説明責任を果たすと同時に、ブランド価値の向上にもつなげることが可能となります。

さらに、ガイダンスではインパクトの測定とマネジメントに関する具体的な手法にも触れています。ロジックモデルの作成や成果の測定、報告方法に至るまで、ESG経営の実装に必要な情報が網羅されており、初めて取り組む企業でも導入しやすい構成となっています。また、「企業版ふるさと納税」など、資金拠出を通じた地域貢献の方法についても紹介されており、企業が関与するための選択肢が多様に用意されている点も特徴的です。

一方で、「農山漁村」官民共創実践ガイドブックは、熊本県で試行されたパイロット事業の成果をもとに作成されたものです。この事業は、自治体が主体となって地域外の企業とマッチングし、地域課題の解決に資する事業化を図るものです。本ガイドブックでは、自治体が企業と連携を図る際の具体的な手順や、地域課題の共通言語化、課題要素の分解方法などが明記されており、他地域でも横展開が可能な内容となっています。さらに、官民のマッチング事例5件が掲載されており、実際に成果を上げているプロジェクトの進め方や工夫点、課題への対応方法など、実務的な示唆も豊富に盛り込まれています。

このようなガイドラインや事例集は、企業の採用活動や人材戦略にも少なからず影響を与える内容です。たとえば、地域社会との関わりを重視する人材の採用において、自社がどのように社会的課題と向き合い、持続可能な社会の構築に貢献しているかを説明できる企業は、若年層を中心とした応募者からの信頼を得やすくなります。また、地方での新規事業やサテライトオフィスの開設を検討する際にも、こうしたガイダンスに基づいて関係人口の拡大や地元との協働体制を築くことで、定着率や地域での評判にも好影響を与えることができます。

今後、農山漁村を取り巻く環境はさらに複雑化・多様化することが予想される中で、企業の関与は単なるCSR活動にとどまらず、持続可能なビジネスモデルの一部として組み込まれていく必要があります。そのためには、企業側も地域と対等なパートナーとして課題を共有し、成果を測定・可視化する力が求められます。本ガイダンスとガイドブックは、そのための実践的なツールとして非常に有効であり、企業活動の新たな価値創出の起点となり得るものです。

⇒ 詳しくは農林水産省のWEBサイトへ

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