2025年4月25日
労務・人事ニュース
近畿 求人は出しても応募は少ない、賃上げ定着で転職控えの動きが広がる(令和7年3月調査)
- 看護師/2025年5月1日更新
最終更新: 2025年5月1日 11:34
- 「夜勤なし」/准看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年5月1日 22:32
- 「夜勤なし」/正看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年5月1日 22:32
- 機械オペレーション/梱包/ライン作業 格安食堂完備 半導体の製造·検査 年休137日 社宅費全額補助
最終更新: 2025年5月1日 09:34
景気ウォッチャー調査(令和7年3月調査)― 近畿(現状)―(内閣府)
令和7年3月に実施された景気ウォッチャー調査における近畿地方の動向を総括すると、物価上昇とインバウンド需要の影響が多方面に渡って現れており、消費行動の選別傾向や雇用におけるミスマッチの深刻化といった、景気回復の難しさを浮き彫りにする結果となっています。企業活動全体としては、業種によって受注や販売にばらつきが見られ、一部の業界では売上増を記録している一方、個人消費に依存する業種では購買意欲の低下が深刻化しています。こうした状況下で、企業の採用担当者が注目すべきは、求職者数の減少や賃上げを背景にした転職控え、採用難易度の上昇といった人的資源面の変化です。
百貨店に関しては、インバウンド客による売上増が報告された一方、国内消費者の購買意欲には依然として厳しさが見られます。特に婦人服や紳士服といったファッション関連の売上は低迷し、店舗によっては来客数が前年比で4.6%減少、特に生鮮食品は前年比で12.6%も売上が落ち込むという深刻な報告もありました。これは、継続的な物価の上昇によって、消費者が不要不急の買い物を控えていることに起因します。また、百貨店の免税売上は前年の駆け込み需要の反動や円高傾向もあって、3月に入り大きく鈍化しています。特選ブランドやラグジュアリー商材の販売も冴えず、訪日外国人の売上は前年を下回る日が続いているなど、インバウンド頼みの経営にも不安が見られます。
一方で、観光業界には明るい兆しも報告されています。観光型ホテルや旅館では、3月の売上が過去最高を記録した事例もあり、特に卒業旅行シーズンによる若年層の来訪が増加傾向にあるとのことです。都市型ホテルでも稼働率が80%を超える施設が複数見られ、単価の上昇と連泊率の向上によって収益が改善しているという声が上がっています。しかしながら、施設によっては客数が伸び悩んでいるところもあり、特にレストラン部門では来店数が50人から65人と安定してはいるものの、予約が取りにくいとの声もあるなど、地域間や施設間でのばらつきが顕著です。
飲食業では、欧米からのインバウンド客による高単価の注文が見られた一方で、一般消費者の外食頻度は減少傾向にあり、歓送迎会シーズンにもかかわらず中規模宴会の需要は前年を下回っているという報告がありました。生活費の高騰により、外食を厳選して利用するという消費者の心理が色濃く反映されており、客単価は横ばいでも、来店頻度が落ち込むことで全体の売上が減少している現状があります。
家電量販店では、春の新生活需要による販売増が期待される一方、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジといった新生活向けの家電販売が前年を割り込んでおり、販売価格の上昇と物価高が購買意欲を抑制している状況です。中には契約を決めた後に価格を理由に契約を取り下げる事例も見られ、価格への敏感さが消費に大きく影響していることが分かります。また、住宅販売市場でも、都心部では価格上昇にかかわらず順調な契約が進む一方で、郊外物件ではわずかな値上げでも販売が鈍化するなど、価格に対する購買行動の違いが明確に表れています。
乗用車販売では、新車販売の受注が減少しており、受注残も厳しい状況が続いています。中古車やサービス部門は健闘しているものの、新車は価格上昇の影響が大きく、ターゲット層である富裕層でさえも慎重な姿勢を見せています。輸送業でも経費削減や荷物量の減少により、専属車両の削減や運賃の値下げが余儀なくされるなど、コスト構造の見直しを迫られている企業が多いことが分かります。
製造業では、輸送用機械器具製造業においては年度末の需要期に受注が増加しているものの、金属製品や化学製品などでは人手不足や資材価格の上昇の影響により、荷動きが非常に悪くなっているという報告がありました。その他の製造業でも、取引先からの受注があるものの、価格交渉に時間がかかるため売上がなかなか伸びない状況が続いています。
そして雇用環境では、有効求人倍率が下がり続けている一方で、求人数自体は横ばいからやや増加という動きが報告されています。大阪・関西万博関連の求人は一段落したものの、観光やサービス関連の求人は依然として活発です。ただし、企業が求人を出しても応募者数が伸び悩んでおり、登録者の減少もあってマッチングの難しさが増しています。実際に、2026年卒の新卒採用活動が本格化したこともあり、採用意欲が高まっている企業は多いものの、充足率が低いという課題に直面しており、採用戦略の再考が必要とされています。さらに、賃上げを実感した労働者が転職を控える動きも出始めており、人材の流動性は一部で鈍化しています。
このように、近畿地方では物価の上昇と円高、国際情勢の変動といった外部環境の影響が大きく、消費・雇用・投資の各分野で不安定さが続いています。企業の採用担当者にとっては、人材確保が一層難しくなる中、柔軟な働き方の導入や処遇改善、定着支援などの多面的な施策を講じることが求められる局面です。現状を乗り越えるには、単なる採用数の確保ではなく、質の高いマッチングを実現する体制づくりが鍵となります。
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