2025年4月24日
労務・人事ニュース
過半数代表者の役割に差、36協定署名にとどまる企業は全体の62.5%
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最終更新: 2025年5月1日 22:32
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労働組合のない企業における労働時間などをめぐる労使コミュニケーションと過半数代表者の関与(JILPT)
2025年3月31日に公表された独立行政法人 労働政策研究・研修機構による報告「労働組合のない企業における労働時間などをめぐる労使コミュニケーションと過半数代表者の関与」は、近年労使間の合意形成やコミュニケーションの質が重要視されるなかで、特に労働組合を持たない企業に焦点を当てた興味深い調査となっている。この研究の目的は、労働時間や就業環境などに関する企業内での意思決定や情報共有が、どのような形で行われているのかを明らかにし、過半数代表者の役割の実態を浮き彫りにすることにある。企業の採用や人事戦略においても、透明性ある労使関係の構築は人材確保・定着に直結するため、採用担当者にとっても重要な示唆を含んでいる。
調査の一環として行われた複数の企業へのヒアリングでは、労使コミュニケーションの手段が多岐にわたることが明らかとなった。委員会や会議をはじめ、意見交換会、個別面談、アンケート、社内勉強会、日常的な声かけ、社員会活動といった様々な形式が活用されており、どの企業においても労使の関係を良好に保つための工夫がなされていることがわかる。例えば、ある企業では安全衛生委員会を通じて法令遵守や36協定、就業規則などについての情報共有を行い、また別の企業では「ふるまい飯」や「考流会」などのカジュアルな取り組みを通じて従業員の意見を引き出す工夫がなされていた。
労働組合が存在しない企業においては、過半数代表者の役割が一層重要性を増す。調査では、過半数代表者の役割には大きく二つのタイプが存在することが確認された。ひとつは36協定の内容確認および署名・捺印に限定された「限定的な役割」であり、もうひとつは従業員の意見集約や就業規則に関する協議への参加までを含む「多様な役割」である。調査対象企業8社のうち5社では限定的な役割にとどまり、残りの3社ではより踏み込んだ多様な役割を担っていた。
このような役割の違いは、時間外労働の実態や労使コミュニケーションの体制と密接に関係している。たとえば、時間外労働がほとんど発生していない企業では、そもそも36協定の実務的な影響が少なく、従業員の意見を取りまとめる必要性も低いため、過半数代表者の関与が限定される傾向にある。また、別の企業では一般従業員が参加する委員会にて労働時間や就業規則についての協議が行われており、過半数代表者があらためて意見集約を行う必要がない環境が整備されていた。
一方で、過半数代表者が多様な役割を担う企業では、時間外労働が36協定の上限近くに達するほど多く発生していたり、従業員の声を制度設計に反映させる方針を掲げていた。このような企業では、経営側が「従業員の合意に基づく決定」や「能力が発揮しやすい職場の実現」などを労使の基本姿勢として掲げており、その中で過半数代表者が実質的な橋渡し役として機能している。
政策的な視点からは、今回の調査結果は多くの示唆を含んでいる。第一に、労働組合の有無にかかわらず、恒常的な労使コミュニケーションの体制を整備することの重要性が明らかとなった。特に、委員会やアンケート、面談などを通じた双方向の情報交換は、企業の透明性を高め、従業員のエンゲージメント向上にも貢献する。第二に、全従業員に対して労働時間や経営情報を積極的に公開することは、36協定締結後のモニタリングやチェック機能としても有効に機能する。第三に、過半数代表者への立候補を促す際には、労働時間制度の学びの機会を提供したり、制度改定の当事者意識を持たせるといった取り組みが効果的である。第四に、過半数代表者自身がその役割を十分に理解し、自信をもって対応できるよう、使用者による適切な説明とサポートもまた不可欠である。
現代の人材市場においては、働き方の多様化が進むなかで、企業の組織運営に対する透明性や公正性がより一層求められている。その意味で、過半数代表者の適切な活用と労使の建設的な対話は、単に法令遵守の枠を超えて、企業の魅力づくり、さらには優秀な人材の獲得と定着にもつながる重要な要素である。採用担当者は今回の調査から、過半数代表者のあり方が企業文化や職場環境に与える影響を再認識し、自社の採用戦略や組織設計に活かすことが求められる。