2025年7月3日
労務・人事ニュース
避難支援計画の未作成自治体はわずか2.9%に、企業の地域連携が注目される背景とは
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医療業界の薬剤・調剤業務/即日勤務可
最終更新: 2025年7月3日 07:04
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介護職員/福岡県/福岡市早良区
最終更新: 2025年7月3日 06:32
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介護職員/福岡県JR筑肥線/九大学研都市駅/福岡市西区
最終更新: 2025年7月3日 02:01
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介護職員/福岡市営地下鉄七隈線/茶山駅からバス:天神方面より12番乗車「田島」より徒歩約15分/福岡市城南区/福岡県
最終更新: 2025年7月3日 06:32
避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果(総務省)
令和7年6月20日、内閣府と消防庁は、全国1,741の市町村を対象に実施した「避難行動要支援者名簿および個別避難計画の作成状況」に関する最新の調査結果を公表しました。この取り組みは、自然災害時に自力での避難が困難な高齢者や障害者といった人々の安全を確保するため、自治体が避難支援体制を整備し、必要な計画を具体化することを目的としています。
今回の調査によると、個別避難計画の作成に取り組んでいる市町村は1,691団体で、全体の97.1%に達しています。前回調査では、計画未作成の自治体は141団体で全体の8.2%でしたが、今回は50団体、2.9%にまで減少しており、大きな進展が見られます。なお、避難行動要支援者名簿については、全市町村がすでに作成を完了しています。
個別避難計画の作成率に関しても詳細なデータが示されています。計画作成率が80%を超えている自治体は253団体で全体の14.5%、60%から80%の間にある自治体は102団体(5.9%)、40%から60%の間にあるのは153団体(8.8%)、20%から40%が263団体(15.1%)、そして20%以下の自治体が最も多く、920団体で全体の52.8%を占めています。計画作成率が20%を超えた自治体の割合は前回の40.5%から44.3%に上昇しており、確実に進捗していることがうかがえます。
令和6年度に新たに作成された個別避難計画の件数は181,635人分にのぼり、これまでに計画が作成された累計人数は1,451,097人に達しました。これは支援を必要とする人々の安全確保に向けた確実な一歩であり、実効性のある防災体制の構築を進める上で重要な成果と言えるでしょう。
名簿情報の提供についても注目すべき点があります。避難支援に関わる関係者に対して名簿情報を平時から提供している自治体は1,653団体で、全体の94.9%を占めます。名簿掲載者全体に占める情報提供対象者の割合は40.1%で、昨年度と比べて改善が進んでいます。自治体ごとの対応に差はあるものの、地域防災の重要性が改めて認識されていることがうかがえます。
作成された名簿の更新頻度にも注目が集まっています。全1,741団体のうち、更新頻度が「半年に1回を上回る」自治体は366団体(21.0%)、「半年から1年に1回」は152団体(8.7%)、「概ね1年に1回」は1,099団体(63.1%)、「1年から2年に1回」は87団体(5.0%)、「2年に1回を下回る」は37団体(2.1%)となっており、更新を適切な頻度で実施するための体制強化が引き続き求められます。
避難支援の実施においては、避難行動要支援者本人の同意を得て計画を作成し、消防や警察、民生委員、社会福祉協議会などの支援者へ情報提供を行うことが基本となっています。特に、地域のケアマネジャーや福祉専門職など、本人の状況をよく理解している関係者と連携して計画を作成する取り組みが重視されており、1,069団体がこのアプローチを採用していると回答しています。
また、計画の実効性を高めるために、段階的に内容を改善する工夫や、避難訓練の実施も進められており、実際に279団体が避難訓練を実施していると答えています。避難先の確保や地域との調整も重要なポイントとして挙げられ、避難支援者の確保や保険の加入、さらには計画作成支援のためのシステム導入といった多面的な取り組みも行われています。
都道府県別のデータを見ると、特に香川県は計画作成率が63.5%と高く、個別避難計画の推進において先進的な地域であることがわかります。一方、神奈川県は作成率が2.2%と低水準にとどまっており、支援体制の整備が急務とされています。大都市圏における制度整備の遅れは、人口規模や地域特性に起因する課題が背景にあると考えられ、今後の対策が注目されます。
今回の調査結果は、災害時の安全確保に向けた日本全体の取組が一層進展していることを示すものであり、特に市町村レベルでの連携体制の構築と地域資源の活用が鍵を握っています。企業においても、自社の従業員や取引先に高齢者や障害者がいる場合には、地域との協力体制を見直す契機となるかもしれません。従業員の安全と地域の安心を両立させるために、企業の防災対策の強化が求められる場面も増えてくるでしょう。
今後も内閣府と消防庁は、地方自治体の取り組みを支援しながら、災害に強い地域社会の実現を目指す方針です。調査結果から見えてきた課題と進展の両面を踏まえ、より実効性のある避難支援体制の整備に向けて、さらなる努力が求められています。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ