2025年1月15日
労務・人事ニュース
0歳以上5歳未満の医療費が▲10.4%減少、一方で80歳以上85歳未満が+5.4%増加(令和6年度8月)
最近の医科医療費(電算処理分)の動向(令和6年度8月号)(厚労省)
令和6年度8月における医科医療費の動向に関するデータが厚生労働省より公開され、医療費、受診延日数、及び制度ごとの変動について多岐にわたる情報が明らかになりました。この分析結果は、医療政策の見直しや地域別の健康サービスの最適化に向けた重要な指標として注目されています。
令和6年8月の医科医療費全体の伸び率は、前年同月比で+0.1%というわずかな増加を示しましたが、内訳では大きなばらつきが見られました。入院医療費が+3.9%の増加を記録した一方で、入院外医療費は▲4.1%と減少しました。この動向は、1日当たり医療費が前年同月比で+1.5%増加したものの、受診延日数が▲1.3%減少したことと関連しています。特に、入院外の診療が低下した背景には、診療ニーズや患者行動の変化が影響を与えている可能性が指摘されています。
制度別の医科医療費では、後期高齢者医療制度が+3.0%の増加を示し、公費も+1.5%の伸びを記録しました。一方で、被用者保険は▲0.9%、国民健康保険は▲4.4%といずれも減少しています。入院医療費においては後期高齢者医療制度が+5.0%の増加を示し、被用者保険も+5.7%増加したのに対し、入院外医療費はほとんどの制度で減少が見られました。国民健康保険では、入院外医療費が▲8.4%という大幅な減少を記録しており、制度別での医療費支出の配分に大きな変化が起きていることがわかります。
医療機関別のデータでは、大学病院が+5.7%の伸びを示し、医療機関全体でも特に高い成長を見せました。公的病院と法人病院もそれぞれ+1.1%、+1.2%の増加を記録し、病床数200床未満の医療機関は+1.6%、200床以上の施設では+1.8%の増加が見られました。一方で、医科診療所では▲4.2%の減少が記録され、小規模な外来診療施設での需要低下が懸念されています。
都道府県別では、沖縄県が+6.1%と最も高い伸び率を記録し、入院外医療費でも+9.4%という顕著な増加が見られました。これに対し、大分県は▲3.0%で全国最低の伸び率となりました。地域別の医療費の伸びは、医療資源の分布や地域住民の健康ニーズの変化を反映していると考えられます。
また、年齢階級別のデータでは、80歳以上85歳未満が+5.4%と最も高い伸び率を示し、一方で0歳以上5歳未満は▲10.4%の大幅な減少を記録しました。特に、入院外医療費での0歳以上5歳未満の減少幅は▲18.8%に達しており、若年層の医療ニーズに変化が生じている可能性が示唆されています。
疾病分類別では、損傷、中毒及びその他の外因の影響による医療費が+4.9%の増加を記録し、筋骨格系及び結合組織の疾患も+3.0%の増加を見せました。一方で、呼吸器系の疾患は▲1.8%の減少を記録し、これにはパンデミック収束後の需要低下が影響している可能性があります。
診療内容別では、DPC包括部分が+7.8%と大幅な増加を見せる一方で、検査・病理診断は▲6.6%、薬剤料は▲3.3%とそれぞれ減少しました。特に、入院外医療費では再診や処置などの項目が減少傾向を示しており、診療パターンに変化が起きていることが分かります。
これらのデータは、日本の医療制度全体が変化する中で、患者ニーズや医療リソースの配分に新たな課題を浮き彫りにしています。医療費の動向を継続的に監視し、地域や年齢層ごとの特性に応じた適切な施策を講じることが、将来の医療政策における重要な課題となるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ