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2024年8月11日

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2022年度の社会保障費用が142兆円に減少、新型コロナ対策支出の影響が明確に

「令和4年度社会保障費用統計」を公表しました。(社人研)

2022年度の社会保障費用統計の集計結果が発表され、社会保障費用が前年度に比べて減少したことが明らかになりました。国立社会保障・人口問題研究所によると、2022年度の社会支出総額は142兆3,215億円であり、これは前年度と比べて6,683億円、率にして0.5%の減少となっています。この統計は、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など、社会保障制度全体に関連する支出を集計したもので、国際基準に基づいてまとめられています。

この統計において、特に注目されるのは、コロナ禍の影響が緩和されたことによる新型コロナウイルス対策関連の支出の減少です。2020年度や2021年度には、新型コロナウイルス感染症対策としての支出が大幅に増加していましたが、2022年度にはその支出が減少に転じたことが、社会保障費用の全体的な減少に寄与したと考えられます。

一人当たりの社会支出も減少しており、113万9,100円となりました。前年度比では300円、0.03%の減少となっており、この数字も社会全体の支出減少を反映しています。政策分野別に見ると、最も多くの支出があったのは「保健」分野で、61兆9,775億円が使われました。次いで、「高齢」分野に48兆9,733億円、「家族」分野には11兆2,086億円が支出されています。

政策分野ごとの増減を見てみると、「保健」分野では前年度比で1兆4,565億円、率にして2.4%の増加が見られました。一方で、「積極的労働市場政策」分野では1兆5,437億円、48.0%もの大幅な減少が記録されました。また、「家族」分野も1兆1,808億円、9.5%の減少となっています。これらのデータは、社会保障制度における支出の重点がどのように変化しているかを示しており、今後の政策決定に重要な示唆を与えるものです。

次に、ILO基準に基づく社会保障給付費の集計結果についても発表がありました。社会保障給付費の総額は137兆8,337億円で、前年度と比べて9,189億円、0.7%の減少となりました。一人当たりの社会保障給付費は110万3,100円で、前年度から2,400円、0.2%の減少となっています。部門別に見ると、「医療」分野が48兆7,511億円で最も多く、続いて「年金」分野が55兆7,908億円、「福祉その他」分野が33兆2,918億円となっています。

特に、「医療」分野では1兆3,306億円、2.8%の増加が見られ、コロナ禍における医療需要の高まりが続いていることを示しています。しかしながら、「年金」分野ではわずかに減少し、244億円、0.04%の減少が報告されました。「福祉その他」分野においては、2兆2,251億円、6.3%の大幅な減少が見られました。

社会保障財源についても統計が発表されており、総額は152兆9,922億円で、前年度と比べて10兆3,986億円、6.4%の減少となりました。社会保障財源には、社会保険料や公費が含まれており、これらの財源が社会保障給付、施設整備費、管理費などに充てられています。社会保障財源の減少は、社会保険料の納付額の減少や、国や地方自治体の公費支出の減少が影響していると考えられます。

国際比較においては、日本の社会支出を対GDP比で見ると、2020年度時点でフランスやアメリカ、ドイツに比べて低い水準にあることが示されています。これは、他国に比べて日本の社会保障制度がGDPに占める割合が小さいことを意味しており、今後の課題として考慮すべき点と言えるでしょう。同様に、社会保障財源の対GDP比についても、2021年度時点で日本はフランス、ドイツ、スウェーデンに比べて低い水準にあることが確認されました。

これらの統計データは、日本の社会保障制度が直面している現状を理解する上で重要な情報を提供しています。特に、コロナ禍の影響が薄れた後の社会保障費用の動向や、政策分野ごとの支出の変化は、今後の社会保障制度の持続可能性や財政健全化に向けた議論において重要な役割を果たすでしょう。このような統計は、政策立案者や研究者にとって不可欠なツールであり、社会全体の将来を見据えた戦略的な意思決定を支えるものです。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ

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