2025年1月20日
労務・人事ニュース
2022年生活調査の全貌 全国1.5万世帯が示す日本社会の課題と希望
社会保障研究 第9巻第3号(国立社会保障・人口問題研究所)
近年、社会保障制度に関連した研究が多岐にわたり展開されており、特にライフコースにおける社会的リスクの分析が注目されています。2022年に実施された「生活と支え合いに関する調査」は、これらの課題を明らかにする重要なデータを提供しています。この調査は、家計の収入や支出、健康状態、社会的つながりに関する情報を網羅的に収集し、特に新型コロナウイルス感染症の流行下での生活変化を捉えています。約15,000世帯を対象とした大規模な横断面調査であり、オンライン回答方式の導入が新たな試みとして注目されました。回答率は世帯票で50.7%、個人票で58.5%と、オンライン回答の普及に課題が残る結果となりましたが、デジタル化が進む中での調査手法の革新に寄与しています。
調査結果は多岐にわたりますが、例えば「子ども食堂」に関する分析では、その認知度や利用状況が家庭の属性や社会的サポートの有無に大きく影響されることが示されました。ひとり親世帯や低所得層の家庭では、子ども食堂が重要な支援の場として機能している一方で、社会的孤立が利用の障壁となる場合もあることが分かりました。さらに、地域間の格差や、保護者の教育水準、職業形態なども利用率に影響を与えており、政策設計における課題として浮き彫りになっています。
男性の介護者に関する研究では、支援を受ける機会が少なく、孤立感を抱えやすい傾向が確認されました。男性介護者が必要とする具体的なサポートのニーズが明らかになることで、より包括的な介護支援制度の構築が求められています。また、非典型時間帯労働者の増加に伴い、深夜・夜間労働がもたらす社会保障ニーズへの対応も重要な課題です。これらの労働者は、健康や家庭生活において独自のリスクを抱えるため、調査結果は新たな政策提案への手がかりを提供しています。
さらに、高齢化社会における多世代同居のあり方や、公的年金制度の運営に関する分析も、今後の制度設計に資する示唆を多く含んでいます。多世代同居は高齢者のウェルビーイングに貢献する一方で、介護負担や経済的負担が同居家族に集中するリスクもあります。このような課題に対し、世帯ごとの特性に応じた政策が必要です。
これらの研究を踏まえると、社会的弱者や高齢者、そして労働者全般に対する多面的な支援が、持続可能な社会保障制度を支えるカギであることが明らかです。調査結果をもとにした政策提言や実践的な施策の展開が、個々の生活の質を向上させ、社会全体の安定性を高める一助となるでしょう。
⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ