2024年8月6日
労務・人事ニュース
2023年、地域の経済正常化で深刻化する人手不足問題:東京圏への若い女性流出が地方に与える影響
地域の経済2023(令和5年12月27日)(内閣府)
2023年、新型コロナウイルス感染症の位置付けが変更され、経済活動が正常化したことで、各地域で人手不足の問題が再び顕在化しています。この報告書では、地域における人手不足問題を労働供給、労働需要、マッチングの3つの視点から分析し、その対策について検討しています。
まず、労働供給サイドでは、「年収の壁」による就業時間調整や正規雇用比率の地域差、若い女性の東京圏への流出が問題として挙げられています。特に女性の労働参加については、地域差が顕著です。例えば、「南関東」や「近畿」では労働力人口が増加傾向にありますが、他の地域では横ばいか減少しています。また、女性の労働力増加余地についても、地域差が存在し、「北陸」や「東海」では比較的小さい一方で、他の地域では大きな余地があることが分かります。
労働需要サイドでは、宿泊・飲食サービス業や医療・福祉分野の就業者数変化が地域によって異なり、これらの産業の労働生産性向上が課題となっています。人流の回復により労働需要が高まった結果、全地域で有効求人倍率が1を上回る水準まで回復しましたが、特に非製造業における人手不足感が強まっています。日銀短観のデータからも、宿泊・飲食サービス業や対個人サービス分野での人手不足が顕著であることが示されています。
マッチングの視点からは、地方のマッチング手法の課題が整理され、新たなマッチングの広がりについて先進事例が紹介されています。物流業の人手不足問題についても、労働供給面での課題と労働生産性の低さが指摘されており、これらの解決に向けた方策が検討されています。
各地域での景況感の改善やGDPギャップのプラス転換など、経済回復の動きが見られる一方で、人手不足が深刻な問題として浮上しています。景気ウォッチャー調査によると、小売・飲食・宿泊サービスなどの家計動向関連DIが大きく改善し、特に夏のイベントや旅行需要の活発化が人流の増加に寄与しています。
地域別にみると、労働力人口の増加は「南関東」や「近畿」に集中しており、特に女性の労働参加が進んでいます。しかし、他の地域では労働力人口が減少しており、若い女性の東京圏への流出がその一因とされています。このような人口移動が、地域の労働供給に大きな影響を与えています。
また、女性の労働参加率や正規雇用比率にも地域差があり、北陸や東北では比較的高い一方で、近畿では低い傾向があります。これには産業・就業構造や世帯構成の違いが影響しており、製造業や医療・福祉分野への女性の就業が多い地域では正規雇用比率が高くなっています。また、三世代同居率が高い地域では、親のサポートが女性のキャリア継続を支えている可能性があります。
一方で、年収の壁が女性の追加就労を制約する要因となっており、特に都市部でその傾向が強いことが指摘されています。賃金水準が高い都市部では就業調整を行っている女性が多く、賃金上昇とともに「年収の壁」を超えて働くことを選択する女性が増えています。今後、賃金上昇と社会保険制度の見直しを通じて、女性の労働供給を増やすことが重要です。
最後に、若い女性の東京圏への流出が地方の構造的な人手不足を招いていることが指摘されています。東京圏への転入超過数を性別、年齢階層別、都道府県別に見ると、北・東日本からの若い女性の流出が多く、地方の人口バランスが崩れていることが分かります。特に20~34歳の未婚者の男女人口比率が1.2を上回る地域が多く、若い女性の流出が地方の少子化・人口減少につながる要因となっています。
このように、地域の人手不足問題は多岐にわたる要因が絡んでおり、それぞれの地域の特性に応じた対策が求められます。政府や地方自治体、企業が協力して労働供給を増やし、労働需要に対応できる環境を整備することが、地域経済の持続可能な発展につながると考えられます。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ