2024年2月25日
労務・人事ニュース
2023年の労働市場分析 正規雇用の増加と非正規雇用の現状

労働力調査(詳細集計) 2023年(令和5年)平均結果(総務省)
2023年の日本における労働市場の動向は、正規雇用と非正規雇用の変化が目立つ一年でした。正規雇用者の数は男女合わせて3606万人に達し、これは前年比で18万人増加し、9年連続の増加を示しています。特に女性の正規雇用者数は前年より18万人増えた一方、男性はわずかに1万人減少しました。非正規雇用者の方も2124万人と、前年から23万人増加しており、2年連続の増加傾向にあります。非正規雇用者の増加は、男性が14万人、女性が9万人と、性別による差も見られます。
労働者が非正規雇用を選ぶ理由は様々で、最も多いのは「自分の都合のよい時間に働きたい」という理由で、これは712万人に上ります。また、女性の場合は「家計の補助や学費などを得たい」という理由も多く、502万人がこの理由を挙げています。一方で、正規雇用が見つからないという理由で非正規雇用を選ぶ人もいますが、その数は減少傾向にあります。
失業者数は前年と変わらず198万人で、失業期間が3ヶ月未満の人の数は7万人増加しました。転職を希望する人の数は、男女合わせて328万人に上り、これは前年より25万人増加しています。転職希望者全体では1007万人と、7年連続で増加しており、労働市場の活発な動きを示しています。
非労働力人口の中で、潜在的に働く意欲があると見られる人の数もわずかに増えており、36万人になりました。未活用労働力の指標を示すLU4は、男女を問わず6.1%と前年比で0.1ポイントの低下を見せていますが、女性の未活用労働力の比率は依然として高い水準にあります。
このような労働市場の動向は、日本経済全体の健全な発展や個々の労働者の働き方の多様性を促進する一方で、正規雇用と非正規雇用の間の格差や、性別による就労の差異など、解決すべき課題も浮かび上がっています。非正規雇用者の増加や、女性労働者の正規雇用への進出など、今後の日本の労働市場は、より柔軟な働き方の選択肢を提供しながらも、全ての労働者が安定した就労を得られる環境の整備が求められています。
正規雇用増加の波紋 日本労働市場におけるチャンスと課題
上記の労働市場の動向が日本の労働市場に与える影響は多岐にわたります。まず、正規雇用者数の増加は、安定した雇用機会の提供と経済の健全な成長を促進する一方で、性別や年代、業種による格差の問題も引き続き存在します。特に、女性の正規雇用者数の増加は、女性の職場進出やキャリア形成の支援強化を反映しているものの、依然として女性の活躍の場は限定されており、男女間の雇用機会の平等を実現するためのさらなる取り組みが必要です。
非正規雇用者数の増加は、働き方の柔軟性や選択肢の拡大を示していますが、非正規雇用が持つ不安定さや低い労働条件の問題も同時に浮かび上がっています。特に、自分の都合の良い時間に働きたいという理由で非正規雇用を選ぶ人が多いことは、ワークライフバランスへの意識の高まりを示していますが、これらの働き方が十分な収入や社会保障を提供できるかどうかは、政策や企業の取り組みに依存する部分が大きいです。
また、転職者数や転職希望者数の増加は、労働市場の流動性が高まっていることを示し、個人のキャリアアップや職業選択の自由度が向上していると言えます。しかし、これには適切なスキルマッチングやキャリア支援サービスの充実が求められます。失業者数の停滞や未活用労働力の存在は、労働市場における人材の有効活用の課題を浮き彫りにしており、教育や再教育の機会の拡大、労働市場への円滑な復帰支援など、包括的な対策が必要です。
これらの動向は、日本の労働市場が直面する構造的な課題と機会を示しており、政策立案者、企業、労働者個々に対して、より良い労働環境の整備、働き方の多様性への対応、スキルアップの機会提供など、様々なレベルでの取り組みが求められています。労働市場の健全な発展を促進し、すべての労働者がその能力を最大限に発揮できる社会の実現に向けて、包括的かつ継続的な改善策が必要です。
⇒ 詳しくは総務省のWEBサイトへ