2024年9月23日
労務・人事ニュース
2023年の日本経済、名目GDP30兆円増加も後半は消費鈍化
令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応- 第1章 一般経済の動向(厚労省)
2023年の我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで経済活動が再び活発化しました。特に、年前半は外需や個人消費が高い伸びを示し、GDPも成長を見せました。外需とは、輸出が主にアジア向けに増加し、観光業の回復やサービス消費の拡大も後押ししました。この経済の正常化により、名目GDPは第1四半期と比較して約30兆円の増加を見せました。さらに、実質GDPも成長を続け、インバウンド需要の回復や外食産業、宿泊業などのサービス部門が大きく貢献しました。
一方で、2023年後半になると消費の伸びが鈍化しました。賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、個人消費に弱さが見られたためです。それでも設備投資は持ち直し、企業活動が徐々に改善されていきました。企業の業況判断では製造業・非製造業ともに好調さを維持しており、特に非製造業の回復が顕著でした。製造業では、2022年に半導体不足などの影響で一時的に悪化しましたが、その後、自動車生産の回復により業況が改善しました。非製造業では、観光業や飲食業の回復が続き、2023年の末には非常に良好な状態に戻りました。
企業の設備投資も、2023年を通じて増加を続けました。特に、半導体関連産業や自動車工場の新設により大規模な投資が実行され、経済の成長を支えました。設備投資は全産業で増加し続け、2023年の末には高水準を維持しました。
さらに、2023年は企業倒産件数が増加しました。感染拡大期に支援されていた「無利子・無担保融資」の返済が始まったことや、原材料価格の高騰が企業に影響を与え、倒産件数が2019年以来初めて8,000件を超えました。特に、人手不足関連の倒産が過去最高を記録しました。後継者不足や人件費の高騰が要因であり、企業が賃金を上げる余裕がない場合、賃上げのための原資確保やサービスの価格転嫁がますます重要になると予想されます。
物価の動向に目を向けると、2023年の消費者物価指数は依然として高い上昇率を維持しました。円安や原材料価格の上昇が主な要因で、特に食品やエネルギー価格が大きな影響を与えました。また、輸入物価指数も高水準で推移しましたが、エネルギー価格の低下により、やや落ち着きを見せました。一方、国内企業物価指数は輸入価格の影響を受け続け、物価上昇圧力が続きました。
消費者の行動としては、2023年に消費者態度指数が改善に向かいました。消費者の購買意欲は2021年から2022年にかけて低迷していましたが、経済の回復とともに消費マインドも改善してきました。ただし、2023年末時点でも2019年以前の水準には達しておらず、完全な回復には至っていません。
さらに、2023年の消費支出は特にサービス消費が堅調でしたが、日用品や食品などの財消費は伸び悩み、全体としては横ばいの状態でした。一方、総雇用者所得は物価の上昇に伴い、減少傾向が続きました。このように、賃金の増加が物価上昇に追いついていないため、消費者の購買力は依然として弱い状態が続いています。
平均消費性向も2023年には改善傾向を示しました。全年齢層において、消費支出が増加し、特に65歳以上の高齢層では顕著に上昇しました。これにより、消費活動が持ち直す兆しが見られますが、引き続き賃金の上昇や物価動向が鍵となります。
こうした2023年の経済状況を踏まえると、今後も企業の設備投資やインバウンド需要の回復が日本経済にとって重要な成長エンジンとなり得るでしょう。賃金上昇がどの程度物価上昇に追いつくか、企業がどのように人手不足を克服していくかが、今後の経済成長に影響を与える重要な要因となります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ