2024年10月2日
労務・人事ニュース
2023年の脳死ドナー数と移植実施施設の実績報告 移植辞退の理由は体格差と医学的問題が主因
令和5年 移植実施施設における移植実施の辞退数等に関する集計結果を公表します(厚労省)
臓器移植に関する2023年(令和5年)のデータによると、脳死ドナーからの臓器提供において移植が成立しなかったケースがいくつか見られました。このようなケースにおいて、移植実施施設が移植を辞退する主な理由は、「ドナーの医学的理由」が最も多く、次いで「体格差」や「年齢差」が挙げられました。例えば、心臓移植においては115件の移植が成立した一方で6件が辞退され、肺移植では119件が成立し、25件が辞退されています。この辞退理由の多くはドナーの体格や年齢、医学的な問題に関連しており、レシピエントとドナーの体格や年齢が適合しないことが原因となっています。
2023年の脳死ドナー数は131人で、その中で様々な臓器が移植されました。具体的な移植の内訳としては、心臓が115件、肺が119件(そのうち片肺の移植が8件)、肝臓が118件、膵臓が36件、腎臓が248件、小腸が3件となっています。特に小腸移植に関しては、99件が辞退されており、他の臓器と比較してもかなり高い辞退率を示しています。
さらに、移植が成立しなかった理由についても詳細が報告されています。例えば、心臓移植では6件が成立しなかった理由の多くが「ドナーの医学的理由」に関連しており、肺移植では「体格差」や「年齢差」が大きな要因となっています。肝臓移植においても同様の傾向が見られ、肝臓移植で9件が辞退された一方で、医学的な問題や適合性の欠如が原因となっていることが分かります。特に膵臓移植では、移植が成立しなかった件数が45件と、移植成立件数の36件を上回っており、膵臓移植の難しさを物語っています。
また、移植を希望する患者(レシピエント)の数も増加傾向にあり、2023年末時点での移植希望登録者数は心臓が859人、肺が607人、肝臓が391人、膵臓が161人、腎臓が14,519人、小腸が9人という状況です。特に腎臓移植を希望する患者数が非常に多く、臓器移植の供給不足が顕著になっています。
移植実施施設の数も限られており、全国に11施設しか存在しないことから、移植を待つ患者の多さと移植の実施能力の限界が浮き彫りになっています。これらの統計データからも、臓器提供におけるさまざまな課題が明らかになり、特に体格や年齢の適合性、ドナーの医学的な状態が移植の成功に大きく影響していることが示されています。
臓器移植が成立しないケースでは、移植実施施設の院内体制が整っていなかったり、ドナーからの臓器提供が適切に行われなかった場合もあります。また、虚血時間(臓器が供給されるまでの時間)が長すぎると、臓器が移植不適格となるケースもありました。2023年のデータによると、虚血時間が原因で移植が成立しなかった事例も確認されており、特に肺移植においては24件がこの理由で辞退されました。
移植実施施設の辞退理由には他にもさまざまな要因が含まれており、2023年には「体格差や年齢差」による辞退が14件、「虚血時間」による辞退が1件、そして「院内体制」やその他の要因による辞退も報告されています。これらのデータは、移植の成功率を高めるためには、ドナーとレシピエントの適合性を向上させるだけでなく、移植実施施設の体制やドナー管理の改善が必要であることを示しています。
今後の臓器移植の促進に向けては、これらの課題を解決するための取り組みが求められています。ドナーの医学的状態をより詳細に分析し、適切なドナーを選定すること、また、レシピエントとの体格や年齢の適合性を高めるためのマッチング精度の向上が不可欠です。また、移植実施施設の増加や、現存する施設の院内体制の強化も重要な課題です。特に腎臓移植においては、待機患者数が非常に多く、移植の供給と需要のバランスを取るための新しい施策が求められています。
また、移植希望登録者数が年々増加している現状を鑑みると、移植に必要な臓器の供給不足が深刻化していることが浮き彫りとなります。移植を待つ患者が適切な臓器を迅速に受け取れるよう、臓器提供のプロセス全体を見直し、改善することが求められています。
臓器移植は、命を救うための重要な医療行為であり、そのプロセスが円滑に進むためには、ドナーの確保から移植の実施までの一連の流れがスムーズであることが必要です。今後、技術的な進歩や制度の改善が進むことで、移植の成功率が高まり、より多くの患者が命を救われることが期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ