2024年8月10日
労務・人事ニュース
2023年度の企業倒産が8881件に急増、事業存続型倒産率は33.6%と過去10年間での実態調査結果を発表
帝国データバンク「「事業存続型倒産」の実態調査(負債5億円以上)」(2024年7月30日)
2023年度の倒産件数は、8881件と前年度比で大幅な増加を見せました。この背景には、リーマン・ショック以降の金融支援策やコロナ融資といった政府の資金繰り支援が一時的に企業倒産を抑制していたものの、これらの支援が終了する中で、再生が困難な企業が整理され始めたことが挙げられます。また、2024年3月には、政府が「再生支援の総合的対策」を発表し、今後の資金繰り支援の重点が経営改善や再生支援にシフトする方針を示しました。こうした状況下で、法的整理のスキームを活用しながらも、事業や雇用を存続させる動きが強まっていることが伺えます。
帝国データバンクの調査によれば、2014年度から2023年度の10年間において、負債5億円以上の倒産事例のうち、「事業存続型倒産」と分類されたものは1549件ありました。これは、同期間に発生した倒産総件数4611件のうち33.6%に相当します。さらに、2023年度においては157件の事業存続型倒産が確認され、事業存続率は33.1%と、件数および事業存続率が2年連続で上昇傾向にあることが明らかになりました。
「事業存続型倒産」とは、倒産企業が法的整理の過程で事業譲渡や自主再建を行い、法的整理後もその事業が継続されるケースを指します。具体的には、会社更生法や民事再生法に基づく自主再建型や事業譲渡型が該当します。また、破産や特別清算を前提としながらも、法的申請前に事業譲渡が行われた場合も含まれます。
特に注目すべきは、業種別に見た事業存続の傾向です。「老人福祉」や「旅館」など、地域密着型の業種では、7割前後の企業が事業存続型倒産となっており、これらの企業が地域や雇用を支える重要な役割を果たしていることが浮き彫りになっています。これらの業種における高い事業存続率は、地域社会における需要の継続や、雇用の維持が企業再生において大きな影響を与えていることを示唆しています。
今回の調査結果は、初めて実施されたものであり、企業倒産後の事業存続状況を詳細に分析した貴重なデータを提供しています。今後も政府や支援機関による再生支援が強化される中で、事業存続型倒産の増加が予想され、企業再生の成功事例が蓄積されていくことが期待されます。事業再生を目指す企業にとって、これらの情報は重要な指針となるでしょう。
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