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2024年9月23日

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2023年春季労使交渉で賃上げ率30年ぶりの高水準、賃上げ率3.60%が実現

令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応- 第3章 労働時間・賃金等の動向(厚労省)

2023年は、日本の労働市場においてさまざまな重要な変化が見られた年となりました。特に賃金の動向や労働時間、年次有給休暇の取得率に関する報告が注目されています。これらの変化は、政府による働き方改革や経済社会活動の正常化、さらには物価の上昇による影響など、複数の要因が絡み合って発生しています。この記事では、2023年における労働市場の状況を詳しく見ていくとともに、企業や労働者にとっての重要なポイントを整理していきます。

まず、2023年の賃上げ動向についてですが、春季労使交渉の結果、30年ぶりに賃上げ率が高水準となりました。具体的には、厚生労働省の調査によると、賃上げ率は3.60%であり、これは1993年の3.89%に次ぐ高水準となっています。この賃上げは、主に大企業が主導したもので、特に製造業や運輸業、情報通信業などの業種で顕著に見られました。2024年に向けても、この賃上げの流れは続くと予想されており、すでに多くの企業が2024年の春季労使交渉においてさらなる賃上げを検討している状況です。実際、2024年の賃上げ率は5.10%と、過去30年の中で2番目に高い数値が見込まれています。

賃上げの背景には、複数の要因があります。まず第一に、コロナ禍からの経済社会活動の正常化です。これに伴い、企業の経常利益が回復し、特に製造業や運輸業では顕著な収益の増加が見られました。また、働き方改革に基づく法改正や、企業内での賃金制度の見直しが進められたことも影響しています。特に大企業では、ベースアップを実施する企業が全体の7割近くに上るとされ、中小企業でも約50%の企業が賃上げを実施していることが確認されています。このように、企業規模により賃上げの実施状況には差があるものの、全体的には賃上げが進んでいる状況です。

次に、2023年の労働時間の動向について見ていきましょう。2023年の労働時間は、前年とほぼ横ばいで推移しました。全体的な傾向として、働き方改革の進展により長期的には労働時間が減少しているものの、2023年は大きな変化がありませんでした。具体的には、一般労働者の労働時間はわずかに増加し、パートタイム労働者の労働時間は微減という結果になっています。産業別にみると、運輸業や郵便業、宿泊業、飲食サービス業では労働時間が長く、特に運輸業や郵便業に従事する一般労働者の所定外労働時間が長いことが特徴です。これらの業種では、特に経済活動が活発化する中で労働時間が長時間化する傾向が見られます。

一方、年次有給休暇の取得率においては、2023年は過去最高を更新しました。これは、働き方改革の取り組みが進展したことにより、有給休暇の取得が促進された結果です。厚生労働省の調査によれば、年次有給休暇の取得率は1984年の調査開始以降、初めて6割を超えました。特に、医療福祉業や建設業、宿泊業、飲食サービス業といった産業で取得率の大幅な上昇が確認されており、これまで取得が進まなかった業種でも取得率が向上しています。企業規模別に見ても、全ての企業規模で取得率が上昇しており、特に30~99人規模の中小企業においても5割を超える企業が多く見られます。このように、働き方改革が進む中で、有給休暇の取得がより一般的になってきています。

2023年の賃金動向に関しては、現金給与総額が3年連続で増加しています。厚生労働省のデータによると、2023年の一般労働者の所定内給与は前年よりも月額約5,000円増加し、これは1997年以降最大の増加幅となりました。特に春季労使交渉における賃上げが、この増加に大きく寄与していることが分かります。また、特別給与も経済社会活動の活発化に伴い、企業の利益が拡大した結果として堅調に増加しています。一方で、パートタイム労働者の給与も同様に増加しており、2023年には月額約2,500円増加し、2000年以降最大の増加幅を記録しました。この増加の背景には、最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金の取り組みの進展があり、パートタイム労働者の待遇改善が進んでいることが分かります。

ただし、名目賃金の増加にもかかわらず、物価の上昇による実質賃金の減少が問題となっています。2023年は、物価上昇の影響を受けて実質賃金が減少し、労働者の生活への影響が懸念されています。特にエネルギー価格や食品価格の高騰が家計に直結しており、賃金の名目上の増加が物価上昇をカバーしきれていない状況です。このため、今後の政策においては、賃金のさらなる引き上げとともに、物価の安定を図ることが求められています。

さらに、パートタイム労働者の比率が長期的に上昇している点も注目すべきです。2023年のパートタイム労働者比率は、過去最高の32.2%を記録しました。これは、女性や高齢者の労働参加が進んだ結果であり、経済社会活動の正常化に伴い、パートタイム労働者の需要が増加したことが背景にあります。パートタイム労働者の中には、柔軟な働き方を求める人々が増加しており、企業側も多様な働き方を受け入れる動きが広がっています。

2024年に向けても、この傾向は続くと見られており、特に賃金の引き上げが焦点となっています。政府や労働組合、企業が協力して進める「三位一体の労働市場改革」により、リスキリングや成長分野への労働移動が進む中、賃金の底上げがさらに進むことが期待されています。また、同一労働同一賃金の実現や、最低賃金のさらなる引き上げが検討されており、特にパートタイム労働者や非正規労働者の賃金改善が今後の重要な課題となっています。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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