2024年9月17日
労務・人事ニュース
2023年漁業センサス結果発表:全国の漁業経営体数が17%減少、企業化の進展と漁業構造の変化を検証
「2023年漁業センサス結果の概要(概数値)」の公表について(農水省)
農林水産省は令和6年8月30日、「2023年漁業センサス結果の概要(概数値)」を発表しました。この調査は、我が国の漁業生産構造や就業状況、漁村の実態、さらに水産物流通や加工業の現状など、漁業を取り巻く幅広い分野を詳細に把握することを目的としています。また、この調査結果は今後の水産行政の基礎資料として活用されることが期待されており、日本の水産業全体の現状と課題を理解する上で欠かせない重要なデータとなります。
漁業センサスは1949年(昭和24年)に初めて実施され、その後1963年(昭和38年)からは5年ごとに定期的に行われています。今回の調査はその15回目にあたり、過去のデータと比較することで、日本の漁業がどのように変化しているのかを明らかにするものです。長期的な傾向や地域ごとの違い、さらには漁業経営体の変遷など、さまざまな側面から日本の漁業の現状を浮き彫りにすることができます。
調査結果の中でも特に注目すべき点は、全国の海面漁業に従事する漁業経営体数が65,652経営体であり、前回の調査から17.0%も減少しているという事実です。これは、漁業に従事する人々や企業が年々減少していることを示しており、日本の漁業が直面している厳しい現状を物語っています。特に、主として養殖業を営む経営体の数は12.8%減少しており、全体の減少幅よりは小さいものの、依然として減少傾向にあることが明らかになりました。
また、団体経営体においても6.1%の減少が見られましたが、その中で会社形態の経営体は逆に3.8%増加していることがわかりました。このことから、企業化が進む一方で、伝統的な形態の経営体が縮小している現状が浮き彫りになっています。この企業化の進展は、漁業経営の効率化や規模の拡大を目指す動きの一環と考えられますが、一方で小規模経営体の減少は、地域社会や漁村の活力にとって大きな課題となる可能性があります。
さらに、今回の調査では新たに、海外向け出荷(輸出)金額の割合や水産エコラベル認証の取得状況、漁業共済への加入状況についてもデータが収集されました。これらのデータは、日本の水産物がどの程度国際市場で評価されているかを示す重要な指標となります。特に水産エコラベルの取得は、持続可能な漁業を実践していることを国際的に認証するものであり、消費者の信頼を得る上で重要です。また、漁業共済への加入状況は、漁業経営体がリスク管理をどのように行っているかを示すものであり、経営の安定性を測る指標として注目されています。
このように、2023年漁業センサスは、日本の漁業が抱える現状と課題を多角的に捉えるための貴重な情報を提供しています。漁業経営体の減少や企業化の進展、さらには持続可能性の追求といった要素は、今後の水産政策の方向性を考える上で非常に重要です。また、輸出拡大の可能性やエコラベル取得の進展など、日本の水産業が国際市場で競争力を維持するための課題も明らかになりました。
これらの結果を基に、今後の水産政策や支援策がどのように展開されるかが注目されます。政府や地方自治体、漁業関係者が連携し、漁業の持続可能性を確保しつつ、地域経済や社会の活性化を図るための具体的な取り組みが求められます。詳細な調査結果については、農林水産省の公式ウェブサイトにて公開されていますので、関心のある方はぜひ確認してみてください。
⇒ 詳しくは農林水産省のWEBサイトへ