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2024年9月26日

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2024年、労働移民政策に関するOECDレビューが示す、日本の雇用市場の新たな課題と機会

外国人雇用対策の在り方に関する検討会(第11回)会議資料 【資料8】日本の移住労働者–OECD労働移民政策レビュー(厚労省)

2024年のOECD移民政策レビューは、日本の労働移民政策に焦点を当て、国際的な労働移民政策の動向と日本の社会的文脈を踏まえた包括的な評価を提供しています。報告書の中で、日本は労働市場の構造的課題に直面していることが明確に示されています。特に、日本は高い完全雇用率と深刻な人手不足に直面しており、これを解決するために労働移民の受け入れが重要な政策オプションとして位置付けられています。

日本の労働移民制度は、主に技能労働者や留学生をターゲットとしていますが、その背景には1950年代からの労働移民政策の変遷があります。日本の移民人口は他のOECD加盟国に比べて非常に少なく、主に国内労働力の供給に依存してきました。しかし、近年の人口減少と高齢化により、労働移民を活用する必要性が増しています。現在、日本の労働移民政策は需要主導型であり、特定の技能を持つ労働者を対象としたプログラムが存在します。特に、高技能移民の受け入れを促進するプログラムや、期限付きの労働移民制度がその代表例です。

高技能移民に関しては、日本は「技術・人文知識・国際業務」(技人国)という単一のプログラムを通じて多くの移民を受け入れており、このプログラムは主に日本型の雇用システムによって制約を受けているとされています。しかし、最近の改革により、雇用慣行を変更し、高い技能を持つ移民にとって日本をより魅力的な労働市場にする取り組みが進んでいます。また、日本は留学生にとっても定着率が高い国であり、留学生の約30%から40%が来日後5年間は日本に留まり続けるというデータも示されています。

一方で、技能実習制度については、低スキル労働者の主要な受け入れ手段となっており、この制度は他国の労働移民プログラムと比較して厳しい管理下にあります。技能実習生は主に送出機関や雇用主に縛られ、雇用主を変更することは難しいとされています。このため、搾取のリスクが指摘されていますが、OECDの報告書では技能実習制度は特定技能制度と連携し、スキルズ・モビリティ・パートナーシップの一部として将来的に有望であると評価されています。

日本政府はまた、技能実習制度を通じて外国人労働者の受け入れを拡大しており、特に中技能労働者の供給ルートとして機能させることを目指しています。この制度は、出身国における訓練機会の提供を促進するために、試験基準や要件の見直しが必要とされています。技能実習制度がスキル形成の場として機能し、特定技能制度への移行を円滑に進めるための取り組みが今後の課題とされています。

また、報告書では、日本の移民政策が労働市場における多様なニーズに対応するために、他国と同様の課題に直面していると指摘されています。特に、移民の受け入れや定着において、言語や文化的な障壁が存在し、高度なスキルを持つ移民にとっても課題となっています。しかし、日本は特定の技能を持つ労働者や留学生に対して魅力的な就業環境を提供するため、雇用マッチングプラットフォームの開発を進めています。これにより、日本への移住を希望する労働者にとって、より適切な雇用機会を提供し、労働市場への統合を促進することが期待されています。

移民政策の中で特に注目されているのは、高技能移民の獲得と定着に向けた取り組みです。報告書では、高技能移民の日本での賃金水準が、平均的な日本人労働者に比べて35%低いことが指摘されていますが、これは主に勤続年数や経験年数の違いに起因しています。また、新卒採用者においては、日本人と移民との間で初任給に差がないことも報告されています。こうしたデータは、日本の労働市場における賃金格差が労働者の属性や職場の条件に左右されることを示しています。

一方で、技能実習制度の改善が求められている背景には、労働者の権利保護や雇用の流動性が限られている現状があります。OECDの報告書では、日本政府がこの制度の透明性と公正性を強化するための取り組みを進めていることが強調されています。特に、技能実習生が搾取のリスクにさらされないよう、雇用主との関係を見直し、制度の運用を改善することが重要視されています。

この報告書は、日本が将来的に移民を受け入れるための政策をどのように発展させるべきかを示唆するものであり、労働市場における移民の役割を再評価する機会を提供しています。特に、日本が高齢化社会において持続的な経済成長を維持するためには、労働移民の受け入れが不可欠であることが強調されています。このため、政府は労働市場のニーズに対応した柔軟な移民政策を導入し、移民労働者が日本社会に円滑に統合されるための取り組みを強化することが求められています。

このように、2024年のOECD移民政策レビューは、日本の労働市場における移民の重要性と、今後の政策課題を明確に示すものであり、移民受け入れに関する議論を深化させる一助となると考えられます。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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