2024年12月28日
労務・人事ニュース
2024年、欧州の日系企業の66.2%が黒字見込み、AI活用の割合は27.9%に達し、炭素国境調整メカニズム(CBAM)への関心は39.2%に
ジェトロ 2024年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)(JETRO)
2024年12月19日、日本貿易振興機構(ジェトロ)が「2024年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」の結果を発表しました。本調査は、欧州で活動する日系企業を対象に実施され、エネルギーコストの上昇や規制強化など、変化する経営環境に対応する企業の動向を浮き彫りにしています。この調査結果は、経営課題や政策規制への対応、さらにはAI活用の進展状況に焦点を当て、日系企業が直面する現状と今後の展望を示しています。
ジェトロは、2024年8月27日から9月19日にかけて、欧州の23か国に拠点を置く日系企業1,324社を対象にアンケートを実施し、58.3%の有効回答率で772社から回答を得ました。回答企業の多くは西欧諸国に集中しており、特にドイツ、英国、フランスがその中心です。この調査は、日系企業が欧州で直面する多様な課題を分析し、その対応策を検討するための重要な資料となっています。
調査結果では、営業利益見通しについては2024年も黒字を見込む企業が多いものの、その割合は前年比で減少しました。特に製造業では7.7ポイント減の61%が黒字見通しと回答しており、高インフレ率やエネルギー価格の高騰が主な要因として挙げられます。また、日系企業の事業展開方針については、48.9%が「現状維持」と回答し、「拡大」を選択した企業の割合を上回りました。一方で、特にスペインやオーストリアでは、拡大の傾向が他国よりも顕著にみられました。
政策・規制への対応では、「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」が最も注目されるテーマとなりました。回答企業の約4割が関心を示しており、特に商社や金属製品関連企業での注目度が高いことが明らかになっています。また、「企業持続可能性報告指令(CSRD)」や「循環型経済」に関する規制も急速に関心を集めており、前年からの増加が顕著でした。
デジタル分野では、AI活用が進む一方で、約28%の企業が既にAIを業務に取り入れており、さらに約49%が将来的に導入を計画しています。しかし、AI規制やサイバーセキュリティ法の遵守が求められる中、対応コストや情報不足が課題となっています。また、中小企業では特にデータ規制が重要な懸念事項として挙げられました。
経営課題としては、「人材確保」が最も多く挙げられ、全体の65.5%が課題と認識しています。続いて「インフレ」(55.0%)、「労働コストの高さ」(51.1%)が続き、特に製造業では輸送コストや調達コストの増加も目立っています。これに対し、企業は効率的な生産体制の確立や販売価格の見直しを進めていることが明らかになっています。
ウクライナ復興ビジネスへの関心も注目に値します。46%の企業が復興支援・関連事業に関心を示しており、特に貿易や既存商流の回復、インフラ再整備が主な関心分野として挙げられています。しかし、安全面やリスク管理への懸念が最大の課題であるとされ、復興ビジネスに参画するための障壁となっている現状が浮き彫りとなりました。
ジェトロの調査結果は、在欧日系企業が新しい規制や経営課題に対応し、変化する市場環境の中でどのように競争力を維持していくかを示唆しています。特にデジタル化やサステナビリティへの対応が、今後の鍵となるでしょう。企業がこれらの課題を乗り越えるための支援策を模索することが求められています。
⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ