2024年9月21日
労務・人事ニュース
2024年の賃金上昇率5.10%!若年層の給与引き上げが企業の競争力を左右
令和6年度経済財政白書 第1章 マクロ経済の動向と課題 第2節 デフレに後戻りしない経済構造の構築(内閣府)
近年、日本経済は物価上昇と賃金上昇の動向が大きな注目を集めています。2021年以降、新型コロナウイルスの影響を受けた世界経済の回復や、2022年に発生したロシアによるウクライナ侵攻などの要因で資源価格が急騰し、日本国内でも物価上昇が進みました。特に2023年1月には、消費者物価の前年比上昇率が4.3%に達し、物価高が消費者に大きな影響を与えました。しかしその後、資源価格の落ち着きや政府の政策対応によって、物価の上昇ペースは徐々に緩やかになり、2023年後半には2%台にまで縮小しました。
一方で、日本企業にとっては、長年課題とされていたデフレ脱却が徐々に実現しつつあります。特に賃金上昇の動向は、企業にとって大きな経済的インパクトを与える要因となっています。2023年には、春季労使交渉において、約30年ぶりとなる高水準の賃上げが実現し、企業全体で平均2.12%の賃金上昇率が報告されました。この背景には、慢性的な人手不足や、インフレに対応するための給与引き上げが強く求められていることが挙げられます。特に、若年層に対する賃上げの動きが顕著で、高校卒の20代の労働者に対しては、約5%の賃金上昇が見られ、企業が若年層の労働力確保に力を入れている様子がうかがえます。
さらに、2024年の春季労使交渉においては、33年ぶりの大幅な賃上げが実現しました。定期昇給を含む平均賃上げ率は5.10%、ベースアップは3.56%に達し、企業は労働市場における競争力を強化するための対応を急速に進めています。特に中小企業においては、賃上げによって優秀な人材の確保を目指す動きが広がっており、これに伴い、全産業にわたって人件費の上昇が進むことが予想されています。
また、2024年の物価上昇率は引き続き2%台で推移しており、企業が抱えるコスト負担が増加しています。特に、エネルギー価格や輸入物価の影響が国内の製造業や運輸業に及んでおり、これらの企業は価格転嫁を通じて消費者への負担を増やしています。結果として、国内の物価は円安や賃上げの影響を受け、持続的な上昇傾向が続いています。例えば、食料品や日用品の価格上昇が顕著であり、2024年初頭には食料品価格の上昇率が前年比で3%を超える場面も見られました。
これらの状況を受けて、企業の採用担当者は、労働市場の変化に柔軟に対応する必要性が高まっています。特に賃金引き上げによるコスト増加に対しては、従業員の生産性向上や業務効率化のための取り組みが急務となっており、企業内の人材戦略がますます重要性を帯びています。また、賃金上昇に伴う物価上昇が、従業員の購買力に影響を与えるため、福利厚生や従業員支援の強化が求められています。
一方で、政府はデフレ脱却を目指して引き続き経済政策を展開しており、企業に対しても人材確保や労働環境の改善に向けた支援を提供しています。特に、若年層や女性、シニア層の労働力参入を促進するための政策が進められており、多様な人材が企業の成長を支える重要な役割を果たすことが期待されています。例えば、2024年には、定年引上げや高齢者雇用の促進を目的とした制度改革が行われ、60歳以降の雇用者の賃金引下げ幅が縮小される動きが広がっています。これにより、高齢者も長期間にわたり働き続ける環境が整備され、労働市場全体における流動性が高まることが見込まれています。
企業はこれからの時代において、持続可能な成長を実現するために、長期的な視点で人材戦略を再構築する必要があります。短期的なコスト削減だけでなく、従業員のキャリアパスや働きやすい環境を提供することで、優秀な人材の確保と定着を図ることが求められています。特に、若年層や高齢者の賃金に関する動向に注目し、各企業がどのように人材を引き付け、維持していくかが、今後の競争力強化の鍵となるでしょう。
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