2024年9月14日
労務・人事ニュース
2024年上半期、価格高騰倒産484件に達する 価格転嫁が企業存続の鍵
帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2024年7月)」(2024年8月28日)
2024年の上半期、日本国内で価格高騰が原因とされる倒産件数が484件に達し、過去最高ペースで増加しています。この状況下、企業の収益改善において最も重要な課題は、いかにしてコスト増加分を商品やサービスの価格に適切に転嫁できるかという点です。中小企業庁は、受注側である中小企業が価格交渉しやすい環境を整えるため、各発注企業ごとの価格転嫁の状況を公開し、評価の低い企業には政府として指導や助言を行う体制を整えました。これは、政府全体で価格転嫁を支援する取り組みの一環です。
しかし、企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、原材料価格やエネルギーコストの高止まり、人件費の増加などの負担が重くのしかかっています。これらのコスト上昇分をそのまま販売価格に転嫁することは理想的ですが、国内消費動向の影響を考慮すると、慎重な姿勢を取らざるを得ない企業も少なくありません。特に中小企業にとっては、価格転嫁が難航している状況が続いています。
帝国データバンクが2024年7月に実施した調査によると、自社の主要な商品やサービスにおいて、コスト上昇分を「多少なりとも価格転嫁できている」と回答した企業は78.4%に達しましたが、「全く価格転嫁できない」と回答した企業も10.9%存在しています。前回の調査(2024年2月)と比較して、価格転嫁率は44.9%と4.3ポイント上昇したものの、依然として企業が負担するコストが5割以上にのぼっていることがわかりました。
価格転嫁率が業種ごとに大きく異なる点も特徴的です。例えば、化学品卸売業では価格転嫁率が65.0%、鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売業では63.0%と、6割を超える業種も見られます。一方で、医療・福祉・保健衛生業では19.8%、娯楽サービス業では21.7%、農・林・水産業では27.3%と、2割から3割程度の業種も少なくありません。特に消費者と直結する川下業種である飲食業や小売業では、価格転嫁が難しいとされています。飲食業においては、顧客の来店率低下を恐れて値上げに踏み切れないという声も多く、消費者の節約志向が価格転嫁の障害となっています。
全体的に見て、価格転嫁は業種ごとに進展状況が異なり、格差が広がっています。また、原材料や人件費の高騰が続く中、価格転嫁の限界に直面する企業も少なくありません。政府の支援策として、価格転嫁を促進するための施策が進められているものの、原材料の安定供給や人件費の増加を補うための政策、さらには消費者の購買意欲を刺激する大規模な経済対策が必要です。
企業から寄せられたコメントにも、価格転嫁の難しさが浮き彫りになっています。例えば、漁業者側が魚価を設定できないという理由で価格転嫁が困難だとする声や、競争入札により労務費や原材料費の上昇を十分に反映できないという建設業者の声が挙げられます。また、電気機械製造業においては、政府の指導が大企業に対する価格転嫁を支援しているとしつつも、全ての企業がスムーズに転嫁を行えているわけではない現状が報告されています。
価格転嫁に関する調査結果を通じて、現在の日本経済が抱える課題が浮かび上がってきました。特に中小企業にとって、価格転嫁が企業の生死を分ける重要な要素となっており、さらなる支援策の充実が求められます。今後、企業がコスト増加分をスムーズに転嫁できる環境を整備し、消費者も受け入れやすい価格設定を進めるためには、政府と企業が一体となって取り組む必要があります。
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