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2024年12月9日

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2024年度ジェトロ調査 ASEANが回復、中国市場で日系企業の苦戦が続く

ジェトロ 2024年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)(JETRO)

2024年11月28日、日本貿易振興機構(ジェトロ)は、アジア・オセアニア地域における海外進出日系企業の実態調査結果を発表しました。この調査は、地域ごとの景況感、事業拡大意欲、競争環境、サプライチェーンの再構築など、多岐にわたる分野を対象としています。2024年度の調査では、インド市場の好調な景況感と事業拡大意欲の高さが注目される一方、中国市場の低迷や競争激化の実態が浮き彫りになりました。日系企業が直面する課題や可能性について、詳細なデータとともに説明します。

まず、2024年の営業利益見通しに関する結果から見てみましょう。営業利益が黒字になると見込んでいる企業の割合は前年調査から3.4ポイント上昇し、65.8%に達しました。特にインド市場では、2008年以来の最高水準を記録し、現地需要の拡大が景況感を大幅に押し上げる要因となっています。一方でASEAN地域も全体的に改善傾向を示しており、現地市場ニーズの高まりが企業業績を後押ししていることが分かりました。しかし、中国市場では黒字割合が58.4%にとどまり、これは2013年以降で最低の水準です。中国市場では現地需要の減少と競争の激化が主な要因とされています。

続いて、事業拡大意欲に関する調査結果です。今後1~2年で事業を拡大すると回答した企業は全体の43.8%で、前年より1.7ポイント低下しました。この数値の背景には、中国やタイ市場における事業拡大意欲の後退が影響しています。中国では特に過去最低の拡大意欲となり、タイでも前年より8.1ポイント減少しました。一方で、インドは引き続き高い拡大意欲を示し、80.3%の企業が拡大を検討していることが明らかになっています。これは、インド市場の現地需要の増加や経済成長が寄与していると考えられます。

競争環境についても、重要な調査結果が得られています。過去5年間で市場での競争が激化したと回答した企業は48.6%に達し、中国市場ではその割合が6割を超えています。ASEAN地域では、中国企業が主要な競争相手として挙げられることが多く、特に電気・電子機器部品、化学・医薬品の分野で競争が激しくなっています。こうした競争環境の変化に対応するため、日系企業は現地市場での競争力を高める取り組みが求められています。

また、サプライチェーンの再構築が進展していることも本調査から明らかになりました。過去5年間で新たな調達先を開拓した製造業の企業は71.5%に上り、特にベトナムなどのASEAN諸国への生産拠点移管が目立っています。この背景には、コスト競争力の向上やチャイナリスクの回避といった要因が挙げられます。ベトナムは24.8%と最多の移管先となっており、安定した労働力供給やインフラの整備がその理由とされています。

本調査の結果は、日系企業がアフターコロナの新たな経済環境にどのように適応しているかを示しています。現地市場の需要増加に対応するための生産拠点の見直しや、競争環境の厳しさに対抗するための新たなビジネスモデルの採用が進んでいます。一方で、中国市場における需要減少や競争激化への対策は、引き続き大きな課題として残されています。

この調査は、2024年8月20日から9月18日の間にオンラインで実施され、1万3,727社を対象に行われました。そのうち5,007社が回答を寄せ、有効回答率は36.5%でした。対象地域は北東アジア、ASEAN、南西アジア、オセアニアの計20カ国・地域に及びます。本調査結果は、地域ごとの経済動向や日系企業の事業展開の現状を理解するための貴重なデータを提供しています。

ジェトロは今後も、海外進出企業の支援に向けた情報提供を続けるとともに、各地域におけるビジネス環境の変化を注視していく予定です。今回の調査結果を基に、インドやASEAN地域での成長の可能性を最大化する一方、中国市場における戦略の再構築が急務となるでしょう。企業がこの厳しい競争環境を乗り越えるためには、現地パートナーとの連携や調達網の多様化、さらには現地市場に適応した製品やサービスの提供が鍵となります。

⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ

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